Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。
実施に至る経緯・動機
嬬恋村では、令和元年時点で観光客は200万人であったがコロナの影響で80万人に落ち込んでいる。Afterコロナ・Withコロナを見据えて現状の嬬恋村の課題を下記の通り定義した。
- 観光客・関係人口情報が体系的に集約されていない
- 観光客属性別に観光に何を求めている?観光情報の入手先は?
- 嬬恋村内の人の動きは?イベントは来年も実施すべきか?
- 紙やネット上で多量の観光情報がばらばらに散在
- ネット・パンフレット、嬬恋村に来訪しなければ入手できない。
- 広い地域に観光地が点在し観光客に分かりにくい
- 337km²に観光施設が点在し、近隣町村へ観光客を逃がしてしまう。
解決する課題の具体的内容
観光に関するお問い合わせ状況から軽井沢や草津町へ観光客が逃げている事実がある。そのためビッグデータを用いて予測・予想で動かざるを得ない観光業にエビデンスを提供する。令和4年度から運用開始しており、事業者とモバイル空間統計による人流データ・プレミアパネルアンケート(3万人データ)のエビデンスを用いて夏に向けた観光施策検討会を実施している。さらにLINEのプッシュの内容やタイミング・クーポンなど観光客向けの情報発信の検討会も定期開催している。今後も事業者の新規事業のエビデンスとして活用してもらうことで、「嬬恋ブランド」を強化してファンを増加させ、観光活性を実現していく。
デジタルを活用した取組による成果
【本事業内のアウトプットの一部】
- プレミアパネルアンケート:3万人データ(2021年12月実施)
群馬(嬬恋村以外)・東京・埼玉・神奈川・千葉在住のdポイントクラブ会員※神奈川県・千葉県在住者は20、30代のみ
- モバイル空間統計:2018年~2020年の3年分データ(他都市訪問含む)
他都市訪問データ・・・嬬恋村の訪問前に訪れた都市、嬬恋村の次に訪れた都市、嬬恋村内での滞在時間(村内を6エリアに分割)を可視化
【アウトプットによる影響】
- GW前年比の観光客数の一部:100%UP(27,500人⇒55,000人)
観光予報プラットフォームのデータであるため、インターネット予約の合算である。今後、事業者に月締め後の入り込み客数データの提供を依頼する予定である。専用の入力画面を設け、FIWARE上にデータを蓄積することで、より詳細な可視化と円滑なPDCAサイクルが実現できるよう運用していく。
本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点
本取組は大きく2本の柱から構成されている。
- FIWAREに蓄積したビッグデータをBIツール上で可視化
- 観光アプリとしてLINEによる観光情報発信
【1について】
- データ利活用を目的としている。村または事業者が保持している様々なデータと横断した可視化を実現するため、ドコモの人流・アンケートもデータ連携基盤にビッグデータとして蓄積するよう設計した。単なるソリューションによる可視化は行っていない。また運営は観光協会が主体となり、事業者と月1回のBIツール作戦会議を実施している。今年度は5万人を対象とした大規模アンケートとその中でのLINE「友だち追加」による誘客を行う。
【2について】
- 新規顧客獲得を目的の一つとしている。嬬恋に何があるのか、おすすめ、グルメ、宿泊、キャンプ、日帰り温泉、アクティビティ等、カテゴリ分けされた情報を様々な角度から検索可能としている。顧客からの検索を待つのではなくLINEを通じてプッシュ通知を行い、インターネットでは取得出来ない本機能ならではのお得情報をご提供する。また1つのマスタで各HPと本機能が一括で管理されるため、同じ修正情報を二重メンテナンスする必要は無く、即時性を求められる観光に沿った設計としている。
- さらに、令和2年度に作成した防災機能とFIWAREを通じてデータ利活用している。災害時、観光客にも規制情報を発信しやすく、受信しやすいよう1つの公式アカウントで実装している。欲しい情報を観光客自身でカスタマイズでき、平時/有事で使い分けを可能としている。
成果をあげるためのポイント
- 計画段階
本村が目指したものはトランスフォームであり、その手段にデジタル化がある。多くの自治体はLINE、AI、または自動化ツールを使って何かできないか等、未だにデジタル化そのものが目的となっている可能性がある。自分たちの業務・街を自分たちで見直し考え、納得した上で実行に移す事が大切である。
また、ステークホルダーとの合意形成時、伝え方一つで推進力が異なってくるため、それぞれの立場に立ち応酬話法に十分に気を遣うことが必要である。 - 導入段階
仕様を決め、財源も確保し、調達も終え契約した後、実際のシステム導入における各ベンダーとの打ち合わせが非常に重要である。自分たちの現在の業務フローからシステムを導入することで、どのように変わるのか納得した上で次工程に進まなければならいし、ベンダーの言いなりになってはならない。 - 運営段階
トランスフォームに終わりはない。上記①②はそのときの仕様であって100%のモノでない。運営していく中で"よりよいモノ"とするために仲間同士で実施検査・意見交換等を定期的に行い(見直し)、考え、納得し実行する事が大切である。
デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法
観光スマートシティに焦点を当てると、ステークホルダーが非常に多く、意見のとりまとめはもちろん、そもそも意見を伺う場の設定にもかなりの時間を要した。観光スマートシティは大きく2つの枠組みがある。1つは観光客予備軍の皆様が嬬恋村を知って頂くためのあらゆる機能である。2つめは嬬恋村観光事業者が観光客増加のために施策を練る段階でビッグデータを活用頂き売り上げUPに繋げて頂くことである。
前者では観光客の皆様のことばかり考えて要件定義をすると、機能が膨大となり運営に支障をきたしてしまう。例えば、観光情報のプッシュ通知機能、観光事業者の施設情報検索機能も運営側のメンテナンスのしやすさを重視しながら運営主体である観光協会の意見を多く取り入れ推進した。
後者は事業主体である嬬恋村役場、観光協会、商工会だけで考えていては、導入後に実際に利用する事業者様からお叱りを受けることは推測できた。しかしながら、200を超える観光事業様からひとつひとつの仕様について合意することは不可能であった。そのため嬬恋村観光事業の特性を活かし規模として大きい観光事業者様同士が意見交換をする場(パートナーズ会)に同席させて頂き、多くのご意見を取り入れた。
今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス
- 自治体に対して
デジタル化は手段であり目的ではない。単なる業務量の増加につながるデジタル化は特に原課にとっては逆効果である。本来であれば原課からのヒアリングと合意形成によって新たなDXに取り組むべきであるが、おそらく「忙しい、時間がない」と企画課だけで計画⇒調達⇒導入⇒検収となる。原課の事務・業務を"楽"させて時間を作る事も優先度として高く設定すべきだと思う。新たなDXの話し合いができる時間を作ってあげる事でより質の高い住民向けのDXにつながる。 - 企業に対して
自治体でいう庁内DXにウェイトを置くだろう。所謂原価削減である。その場合、間接部門がシステム導入をするがシステム利用する多くは直接部門の社員と想定する。
利用者の立場に立ち1つの処理が前よりも楽で早く終わるよう設計すべきだと思う。しかしそれだけでなく、間接部門の利用シーンもしっかりとイメージしながら仕様決定と選定・導入することが大切である。
双方、必ずしも仕様を考える部隊が利用する部隊ではない。利用する部隊の意見を取り入れることはもちろん大事だが、忙しく時間がとれないという課題に必ず直面するだろう。したがって、彼らの時間を作ってあげるDXを優先することと、なぜこのDXを行うのか彼らも納得するような説明をして巻き込む事が重要である。
- 連携団体
- 嬬恋村役場、嬬恋村観光協会、嬬恋村商工会、ITbook(株)、前橋工科大学、(株)ドコモCS、キャベツーリズム研究会、ホテルパートナーズ会
- 問い合わせ
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- 部署
- 群馬県 嬬恋村 未来創造課
- 電話
- 0279-96-1257
- メールアドレス
- miraisozo@vill.tsumagoi.lg.jp
- 関連LINE
- アカウント名「群馬県嬬恋村」