デジ田 メニューブック DIGIDEN MENUBOOK デジ田 メニューブック DIGIDEN MENUBOOK

Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。

デジタルを活用した会話のコミュニケーション支援

群馬県安中市誰一人

実施年度

Digi田甲子園 2022夏

取り組み事例キーワード

窓口業務支援、自然にデジタルを体験、住民負担軽減

関連タグ

デジタルを活用した取組の全体概要

  • コロナ禍における窓口業務において、マスク着用やパーティション設置により声が聞き取りにくい状況の改善、さらには聴覚障害者との円滑なコミュニケーションの実現のため、音声をタブレット端末に文字表示させる仕組みを導入した。
  • 作り込みの過程で、利用者にとって最適な仕様を調査し、企業と共に試行錯誤を繰り返して実装した。

実施に至る経緯・動機

  • マスク着用やパーティション設置などの感染症対策により、窓口での市民対応の中で、難聴の傾向がある方や聴覚障害者にとって職員の声が聞き取りにくい状況が発生していた。また職員、市民双方で聞き間違いや言い直しが発生するなど、コミュニケーションに支障をきたす状況が続いていた。
  • さらに、感染症対策下の窓口業務では、マスクを外す、パーティションの隙間から会話をするなど、感染リスクの拡大につながる行動が発生していることも分かった。
  • この状況を解決するためには、会話をタブレット端末に字幕表示することが有効であると考えた。
  • デジタルの利便性が市民生活に浸透していくためには、スマートフォン講習会のような利用者の自助努力を促す取組だけでなく、「気が付いたら便利にデジタルを活用していた」という体験価値も重要である。話し言葉が文字としてタブレット端末に表示され、円滑なコミュニケーションが成立するこのデジタルツールは、まさに「人にやさしいデジタル」「誰一人取り残さないデジタル」の具体策であると考えた。

解決する課題の具体的内容

  • タブレット端末を通じた円滑なコミュニケーションを実現させるため、文字の大きさ、フォントの見やすさ、発語から文字が表示されるまでのスピード、さらには文字の表示時間と話し手の速度など様々な変数を考慮した上で、利用者にとって最適な条件を調査し、実験を行った。

デジタルを活用した取組による成果

実証実験期間中(令和3年7月1日~同9月30日)のアンケートで「役に立った」又は「時々役に立った」と評価した人の割合

全 体 54名中40名 74%
難聴者 14名中11名 79%
  • 人と人とのコミュニケーションの間にデジタルを介在させることは、一見、人間的な温もりのある関係性を希薄化するように感じられるが、介護認定の訪問調査の場面などでは、デジタルの新鮮さもあってか、かえって会話が弾み、調査の場が和んだというエピソードもあった。このようなコミュニケーションの実現は、デジタルの今後の展開に新たな視点をもたらすものと考えられる。
  • 音声認識については誤変換が全くないわけではないが、コミュニケーションを取ることは十分可能である。また、筆談のような形式的で必要最低限のやり取りではなく、雑談も交えた深い相談をすることができるため、市民に満足してもらうことができた。

本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点

  • 実証実験の期間を設け、アンケートを実施した。委託費用を抑えるため、アンケートは職員が直接、利用者から収集し、できるだけ多くの感想を聴取した。
  • 利用者からのアンケートを分析することで、会話をタブレットに表示する際の、文字の大きさなどのフォント・表示されるスピード・タブレットの位置など利用者に最適の仕様となるよう確認した。利用者からは、「筆談よりも楽で、普段よりもたくさん話ができ、楽しく会話することができた。」「手話通訳者がいない時でも、文字を見てコミュニケーションがとれて良かった。」など、仕組みの有効性を確認することができた。
  • 高齢者や障害者などデジタルに不慣れな人でも、自ら操作方法を学ぶことなく、自然にデジタルに触れ、気軽さや利便性を感じてもらえる仕組みであり、「誰一人取り残さない、人にやさしいデジタル化」を目指した取組である。

成果をあげるためのポイント

本格導入の前に、実証実験の期間を設け、アンケートを実施した。コロナ禍でマスクやパーティションの影響により、円滑なコミュニケーションに支障が生じていることは感じていたが、会話をタブレット端末に表示することにより、それが解消できるかどうか、またどのような条件ならより効果的であるかを検証するためには、体験した市民や職員から直接意見を聞くことが有効であると考えた。アンケートによって集まった意見を大切にし、悪い意見の場合には、それを解消するために、どのようなシステムを導入するのが良いのかを慎重に検討した上で本格導入に踏み切った。
また、デジタルの利便性が市民生活に浸透していくためには、「気が付いたら便利にデジタルを活用していた」という体験も重要だと考える。話し言葉が文字として画面に表示され、円滑なコミュニケーションが成立するこのデジタルツールは、まさに「人にやさしいデジタル」「誰一人取り残されないためのデジタル」の具体策であると考える。

デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法

自治体の業務にデジタルを取り入れる場合、デジタルの活用に慣れている人もいれば、不慣れな人もいる。「誰一人取り残されない」ということを前提とした場合、「完全にデジタルに移行するために丁寧に支援しながら進める」方法や、「デジタルを導入しつつアナログも残す」方法などが考えられる。取組によってどの方法が良いかは分かれるところであり、職員側(導入側)の考えだけでは、偏ったものになってしまうリスクがある。常に住民側(利用者)の目線で評価することを忘れずに、どのようなやり方が最善であるかを考えながら、デジタル化を進めていくことを心掛けている。

今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス

自治体がデジタル化を進める背景としては、一つ目として、公務員数の減少が進む中で、行政サービスの質を下げることなく、円滑に業務を遂行するという目的が挙げられる。また二つ目として、地方における少子高齢化が進む中で、デジタルを活用し、地域課題の解決と魅力の向上を図りつつ、誰もが便利で快適に暮らせる地域づくりをすることが求められている。デジタル化を進める中で「デジタル化を進めたものの職員の手間が増えている」「利用者から見ると分かりにくい」など、様々な問題が発生する。しかしながら、これらの意見を参考にすると、業務フロー全体を見直したり、デジタル化の効果を見直すきっかけとなることがある。トライアンドエラーの精神で粘り強く進めていくことが大切であると考える。

連携団体
コニカミノルタジャパン株式会社
問い合わせ
部署
安中市企画政策部政策・デジタル推進課
電話
027-382-1111(内線1022)
メールアドレス
sei-digi@city.annaka.lg.jp
関連サイト
https://www.city.annaka.lg.jp/gyousei/kikaku_keiei/hisyoseisaku/digidenkoushien-annaka.html