デジ田 メニューブック DIGIDEN MENUBOOK デジ田 メニューブック DIGIDEN MENUBOOK

Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。

飛島スマートアイランドプロジェクト

山形県酒田市交通・物流

実施年度

Digi田甲子園 2022夏

取り組み事例キーワード

離島振興、デジタルインフラ整備、住民利便性向上

関連タグ

デジタルを活用した取組の全体概要

県内唯一の有人離島である飛島において、海底光ファイバーケーブル及び島内の光通信環境を整備し島内外の通信環境を整備した。また、既存の公共施設内に日用品販売施設を整備し、島民及び観光客向けのスマートオーダーシステムを構築するともにe-モビリティを活用した配送サービスを実施した。

実施に至る経緯・動機

  • 飛島は、人口減少及び高齢化が深刻であり、人手不足に起因する様々な生活の課題が顕在化している。一方で、新しい生き方を見出して島に暮らし始める若者も存在しており、飛島は、新たなチャレンジを行いたい若者と高齢者が住む島となっている。
  • 飛島では、サービスデザインの観点で事業を実施した。ユーザー中心の考え方から、市と島民とのワークショップを行い、生活上の課題、若い島民が行いたいチャレンジなどをすり合わせた結果、以下の課題を抽出した。
    • 飛島には、日用品を販売する商店が存在せず、島民は本土の商店に注文して定期船の発着所に受け取りに行っている。定期船の就航率が冬は30%であり、島外からの物流が滞る。観光客向けの商品も販売されておらず、滞在型の観光客が困っている。
    • 商品を定期船発着所まで受け取りに行けない島民がいる。
    • 観光客の交通手段は徒歩か自転車しかなく、島内での観光中に商店まで行くこと自体が負担である。
  • 担い手不足という制約条件の下でこれらの課題を解決するためには、デジタル技術の活用が必要。そのボトルネック解消のために通信環境整備が必要という課題意識を島民と行政が共通理解し、課題解決に取り組むこととなった。
  • 課題解決にあたり、ハード整備は基本的に酒田市が行うという基本方針の下、島内の若者が働く合同会社とびしまや島外の大手企業に本プロジェクトに参画いただき、合同会社とびしまが事業継続可能な形でのデジタル活用に留意して課題の深堀りと課題解決方法の検討を行った。
  • 島民とすり合わせた課題のためには、島内に商店を設置し、注文を受けて商品を配送する仕組みが必要となるが、配送コスト、離島のためガソリン調達が限定的、島内の道路が狭隘などの課題を確認した。
  • 以上のように島民ニーズのすり合わせ、事業に協力していただける事業者集め、課題の深堀りによって事業スキームを固めた上で事業を実施した。

解決する課題の具体的内容

  • 本土と飛島を繋ぐ海底光ファイバーケーブルを整備するとともに、島内の光回線網を整備し、高速通信環境を整備した。
  • 公共施設を一部改修し、日用品や観光客向けの商品販売を行う店舗を整備した。
  • 店舗で扱う商品及び飲食サービスをスマートフォンで島内どこからでも注文可能なスマートオーダーシステム「うみねこちゃん」を開発した。
  • 注文された商品は、小型e-モビリティを用いて配達を行った。(ガソリン調達の問題、狭隘な道路の問題から小型e-モビリティを選定)

デジタルを活用した取組による成果

  • うみねこちゃんの利用登録者数が60名、注文数52件/月という実績があった。事業者によると、通年でサービス提供しても営業黒字となる見込みで、事業継続可能な数字である。また、本事業により3名の新規雇用が創出された。
  • うみねこちゃんに対して、22名から商品や飲食メニューの充実を求める意見があった。これは、サービスの有用性や拡張可能性を示している。
  • 繁忙期に時間通りに配達できないという新たな課題が生じたことから、配送経路や時間を調査し、最適な配送手段とすることで、平均配送時間を5分程度まで短縮した。待ち時間の短縮、人件費や輸送費のコスト削減が上記の営業黒字につながった。
  • 飛島は、若者が飛島をフィールドに課題にチャレンジし、交流や移住に繋げる島となることを目指している。通信インフラ整備の結果3件の提案を受けおり、うち2件については、実証事業が実施されている。

本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点

  • 飛島に高速光通信環境を整備したことにより、医師が常駐しない飛島でも本土の医師による高精細な映像を活用した遠隔診療などが可能となった。
  • 事業者、島民団体、島外の識見を持つ企業と協議会を組織し、島民へのヒアリングや観光客へのアンケートによるニーズの拾い上げを行い、実現方法の検討においては事業の継続性を最重要視し、ランニングコストのかからないデジタル技術導入を検討することで、収益性の確保を行った。特に、うみねこちゃんは、スマホアプリ開発ではなくLINEを活用することで実現している。観光客の利用を考えた時に、スマホアプリのダウンロードよりもLINEの友だち登録の方が、ハードルが低いうえに開発コストや保守運用コストが低いためである。

成果をあげるためのポイント

素早く・安くサービス提供を行うことが重要だと考えている。最近は多くのサービスがクラウド型で提供されており、試しに使ってみるというハードルが低くなってきていると考える。酒田市の場合、デジタルサービスの多くは独自システムの作りこみではなく、SaaSのサービス使用でデジタル化を行っている。モバイルオーダーサービスの場合も大手SNS(LINE)を活用して行っており、課題を関係者で特定後、素早くサービス提供している。

デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法

関係者間の調整や事業目的の共通化に苦労した。飛島の事業の場合、島民の視点、観光客の視点など様々な課題があることから、島民ワークショップ等を重ねることで取り組むべき課題と解決策の共通認識を持つようにした。特に、サービス開発には住民からのサービス実証への協力なども必要になることから、サービス提供側の思いだけではなく、実際に使う側の課題を関係者間で共通認識を持つことで住民からの協力も得やすくなったと考える。

今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス

自治体としてDXは地域の課題解決の手段の一つだと考えている。そのため、課題解決のアイデア出しの段階ではデジタルありきでない考え方をするべきである。また、地域課題の本質をつかむためには、地元だけでない第三者の視点で課題を整理することが重要だと考える。
そのために地元以外からの知識を借りることと地元との地道な付き合いが大切である。地元との地道なつながりによって課題を整理しておくことがベースにあることで、地元以外の企業などからの協力を得ることができた時にスムーズに進めることができると考える。

連携団体
合同会社とびしま、とびしま未来協議会、東日本電信電話株式会社山形支店、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ、東北公益文科大学
問い合わせ
部署
酒田市企画部情報企画課デジタル変革戦略室
電話
0234-43-8336
メールアドレス
dx@city.sakata.lg.jp
関連サイト
https://www.city.sakata.lg.jp/shisei/dx/dx_smartisland/index.html