Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。
実施に至る経緯・動機
「手書き日報をどうにか無くせないか。」という相談を受けてシステム開発に着工し始めた。手書き日報をスマホで置き換えただけでは、手書き日報の負担は変わらない。可能な限り自動化かつ簡単でできるようにするにはどうしたら良いかと考えた時に、車両の行動履歴を自動収集する事が重要と気が付き、車両と圃場の管理システムを開発する事となった。
解決する課題の具体的内容
- 人口減少や離農により農地の集約化・規模拡大は進んでいる為、個人ではなく集団で営農する事が増え、今後さらなる増加が見込まれる。集団で農作業をするのに、一番重要な事は「情報共有」である。殆どの場所で、無線によるアナログ的な情報共有を行っている。
- 例えば、20台の車両が同時に動いている場合、現場担当者は状況把握および指示伝達するのに片方に電話を持って、もう片方は無線で指示を出す。これを常に行う事で、情報共有を行う。さらに現場が見えない為、何かあるたびに運転して現地を確認する必要がある。農作業は、事故・故障・天気などあり、常に現場は慌ただしく変化するので、無線だけで現場を想像し、情報把握するのはとても大変な事である。
- レポサクは、専用のGPS端末を車両に設置するだけで、データを自動的にサーバーに送信し、リアルタイムに作業の進捗状況を共有できる。運転者は端末を操作する必要はない為、高齢者や外部委託者の人でも無理なく、かんたんにシステムを導入する事ができる。
- リアルタイムに進捗状況がわかるので、状況把握の為の無線連絡が無くなり、作業に集中する事ができる。また、今までは特定の人しか把握できなかった進捗状況を全員が常に把握する事が可能となり、皆で作業計画を考える事ができるようになる。
- 情報共有するメリットは大きくあるが、それだけではなく、データ化された情報は自動的に蓄積される為、生産履歴としても活用できる。行動を元に日報データも作られる為、手書き日報ではできなかった作業動線の確認や検証が可能となるなど、具体的な情報を元に改善行動をする事ができるので、将来的には生産性の向上に繋がる。
デジタルを活用した取組による成果
- 2019年スマート農業実証プロジェク「TMR センター利用型良質自給飼料生産利用による高泌乳牛のスマート牛群管理体系の実証」にて、レポサクが導入され、作業効率10%アップ、サイレージの廃棄量5%ダウンという結果を残している。
- 2022年4月現在、全国に38社導入中。北海道のTMRセンター20社、コントラクター10社、その地方に8社レポサクが導入され現場で活用されている。
- 2022年4月現在、約5万ヘクタールの圃場がレポサクに登録されている。
本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点
- 農業のデジタル化において、一番難しいのは現場の協力を得て、全てのデータを取得する事である。一部のデータが欠けてしまうと、全体の流れがわからなくなるので、作業者全員の協力は必要不可欠である。
- パソコンやスマホはよくわからない、新しい事は面倒でしたくない、途中から手伝いにくる人など、様々な方が現場に携わって農作業が行われている。
- このような状況で、「誰でも、かんたんに」という点がとても重要で最も考えなければいけない点である。少しでも面倒・難しい、と感じてしまうと、現場の人の協力を得られるのは難しい。もしできたとしても続かない。
- レポサクは、データ取得後の処理や表現が、現場で使える事はもちろん考えているが、「現場の人が無理せず簡単に使い続けられる」という点を重点に開発を行い、現場に受け入れられる事が一番工夫した点である。
成果をあげるためのポイント
当町内で本事例の取り組みを進めている法人とは移住・起業時から関係があり、ステークホルダーとなり得る団体や事業者への橋渡し、紹介や話題提供などにより露出の機会を設けているほか、活用した場合の見込まれる成果を客観的指標で示すことで、説得力のあるPRを展開しているところである。
スタートアップ時のみの関係ではなく継続したリレーションを構築することで進捗や課題を共有し、移住者ならではのいわゆる「よそもの」の視点で地域を観察し、地域では課題と感じられていない要因の顕在化と客観的指標に基づく解決手法のマッチングが肝要と考える。
デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法
当町の事例の場合は熱意を持った方が起業とセットで移住したことに端を発しており、起業に対する支援施策と地域おこし協力隊制度のPRがうまく機能した結果であるため、課題を解決するために行政が一から構築した事例ではなく、苦労した点は特にない。
しかしながら、受動的であっても、拾う情報の量や精度の確保のほか、自身の地域の弱みや強みを日頃から把握しておくためのアンテナを高く広範囲に張っておかなければ、せっかくの良い人材を取りこぼすことにもなり得るため、他部署、関係団体や地域住民との対話や心配りを常にしておかなければならないと考える。
今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス
全国的な少子化、高齢化に伴い、どの地域においても人口減少対策の優先度が高い状況であるが、まずは、地域特有の事情の把握、どのような人材がいるかの把握によって弱みと強みを可視化し、そこをスタートラインとして、動かさないゴールを設定したロードマップを構築しできるだけ多くの関係者と共有することが肝要と考える。
何が不足しているのか(必要なのか)を把握したうえで、デジ田メニューブックにあるような事例などを参考にすることで、効果的な先進事例の導入がされるものと考える。
- 連携団体
- エゾウィン株式会社
- 問い合わせ
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- 部署
- 北海道標津町企画政策課
- 電話
- 0153-85-7240
- メールアドレス
- kikaku@town.shibetsu.lg.jp