新しい資本主義実現会議(第2回)後の
山際新しい資本主義実現担当大臣記者会見要旨
(新しい資本主義実現会議部分・抜粋)


令和3年11月8日(月)18:50~19:20
於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室

※下記の冒頭発言及び質疑応答は新しい資本主義実現会議に関する部分のみ。

1.冒頭発言

  本日、第2回新しい資本主義実現会議を開催いたしまして、「新しい資本主義」の起動に向けて、緊急提言を取りまとめました。
 主な内容を御説明いたします。第一回会合で委員からいただいたご意見を踏まえて、新しい資本主義の基本的考え方をとりまとめました。DX、デジタルトランスフォーメーションですね、人的投資、スタートアップ、中小企業の生産性向上、気候変動対応、ダイバーシティとインクルージョン、将来不安の解消、等々のご意見ありまして、まずは成長が大事、少子高齢化への対応などの意見、大分多くの意見がございました。この、グローバルに、持続可能性や「人」を重視し、新たな投資や成長につなげる、「新しい資本主義」の構築を目指す動きが進んでいる中で、我が国がこの動きを先導すると、このような形でございます。
 そのため、岸田内閣が最優先で取り組むべき項目を含めて、「緊急提言」として取りまとめました。真っ先に取り組む課題について、今回の経済対策において実行に移すことで、早速、新しい資本主義を起動してまいります。
 具体的には、まず、成長戦略です。
 第1に、科学技術立国の推進といたしまして、10兆円の大学ファンドを本年度中に実現する。蓄電池の国内生産を支援し、自動車の電動化を推進するなど、クリーンエネルギーの実装を進めます。
 第2に、イノベーションの担い手であるスタートアップの徹底支援。大企業がスタートアップのイノベーションを応援する税制を拡充いたします。スタートアップがより資金調達を行いやすくするよう、株式公開価格の設定プロセスを見直すなど、新たな上場制度をつくってまいります。
 第3に、「デジタル田園都市国家構想」の起動。テレワーク、ドローン宅配、自動配送など、デジタルの地方からの実装を推進してまいります。自動配送サービスを早期に実現するための関連法案を次期通常国会に提出いたします。
 第4に、経済安全保障の推進です。経済安全保障推進のための法案を策定いたします。人工知能・量子などの分野で、研究開発を複数年度にわたって支援する基金を設け、先端的な重要技術を育ててまいります。先端半導体の国際共同開発と半導体工場の国内設備投資を支援してまいります。
 次に、分配戦略です。
 第1に、民間部門における分配強化に向けた支援。まず、春闘に向けた賃上げのあり方について、月内にこの会議を開催し、方向性を議論してまいります。
 労働分配率の向上に向けて、従業員一人一人の給与を引き上げた企業に対して、賃上げ促進税制の控除率を大胆に引き上げ、支援を強化してまいります。賃上げに向けて、人への投資を抜本的に強化するための3年間の施策パッケージを設け、予算を大胆に投入してまいります。職業訓練や能力開発、正社員化や処遇改善への支援を拡充してまいります。
 フリーランスの方々が安心して働ける環境を整備するため、事業者がフリーランスと契約する際の契約の明確化など、フリーランス保護のための新法を制定いたします。
 中小企業の事業再構築、生産性向上への助成を拡充いたします。採算性回復が望める事業者の債務整理のため、全ての貸し手の同意がなければ債務軽減ができない制度を見直して、私的整理円滑化のための法制度をつくってまいります。  第2に、公的部門における分配機能の強化をいたします。看護、介護、保育などの現場で働いている方々の収入を増やすため、公的価格の見直しを行ってまいります。公的価格評価検討委員会で検討を進めるとともに、経済対策等において、必要な措置を行い、前倒しで引き上げを実施してまいります。
 最後に、総理からは、本日まとめた緊急提言について、関係省庁と一体となって、その実現に取り組んでいただきたい。明日以降、全世代型社会保障構築会議、デジタル田園都市国家構想実現会議、デジタル臨時行政調査会の3つを立ち上げ、岸田政権の主要政策の具体化を進める。新しい資本主義実現会議では、これらの3つの会議での検討結果を統合し、来春にグランドデザインとその具体化の方策をとりまとめ、世界に向けて発信していただきたい。有識者の皆様におかれては、引き続き活発な御議論をよろしくお願いしたい、とのお話がございました。

2.質疑応答

質問)
 今大臣から御紹介ありました緊急提言についてなのですが、もちろん緊急提言に盛り込まれている以上、どの項目も重要であると思うのですが、これまで大臣、岸田総理大臣と中身についてやりとりされている中で、どういったところが今回ポイント、重きを置いたところとお考えでしょうか。

回答)
 はい、総理から、緊急提言を取りまとめるにあたっては、もちろんこの後発表させて頂きます経済対策、そこに盛り込まなくてはいけない予算措置になりますよね。それ以外に、規制改革をはじめとするような、行政改革や規制改革などあるような、ルールをどう変えていくかという話、あるいは、税制のことに関してもきちんと言及するようにと、更には、今回の補正予算に関連するものだけではなくて、少し足の長い、来年の当初予算、これに盛り込んでいくものについてまで、それくらいのものを全体として入れるようにとの指示がございました。その中でも特に、持続可能性、あるいは人的資本にウエイトを置く、このようなご指示を頂いたところです。もちろん、今御説明申し上げましたように、成長戦略と分配戦略、この2本の柱で構成されておりますので、その成長戦略の中には、これまで総理がたびたびおっしゃっていたように、科学技術立国だとか、スタートアップ、あるいはデジタル田園都市構想、分配戦略については、賃上げや人的資本強化を中心とした民間部門の分配強化と、そして合わせて公的部門の分配強化、このようなことは盛り込まれています。

質問)
 中身の政策は、過去に様々な経済対策で出ているもので、ずっと懸案だということになるでしょうが、ここに実効性をどう持たせていくのか、ということについてお考えがあれば、一つそれを伺いたいと。
 もう一つは、少し個別の話なのですが、政府調達の、要するに賃上げした企業の政府調達で優遇するという話なのですけれど、これはたとえば入札とか、そういったときに色をつけるとか、具体的にどんなものを考えていらっしゃるか教えていただければ。

回答)
 後者の方からちょっとお答えしますと、色を付けるという表現が適切かどうかは別にして、賃上げを行った企業、行っている企業が優遇されるような調達の方式というものを考える、また、もう一つそれにプラスして、そもそも、公共事業を行う際に、人件費をどのように積算するかということ、当然やっているわけですけど、そもそも積算するときの人件費の単価を上げる、というこの2つくらいは既に議論に入っております。具体的な制度設計はまだなのですが、おっしゃるように、合わせ技できちんと優遇されるようにしていこうというアイデアです。きちんと政策にまで落とし込んで、実現できるようにいたします。
 それで前者の方の質問に関してのお答えは、今までやってきた成長戦略やあるいは様々な施策というものが十分であったかどうかということは、その評価は広く国民の皆様方にしていただく事ですから、それに対しての言及は避けますけども、しかし、我々岸田政権としては、今コロナ禍で相当痛んだ日本経済に対してやるべき事っていうものとして経済対策をこれから練っていくわけです。練っていくというか、練ったものの一部が今日この緊急提言の中に盛り込まれているわけですから、今やらなくてはいけないことということをきちんと皆様方に御説明申し上げた上で、それが実際に行われていることかということを、多くの国民の皆さんにご評価頂く、そういうことなのかなと思っております。

質問)
 今日緊急提言出たと思うのですけども、年末の予算編成、税制改正に向けて、年内どれくらいのスケジュールで、次回以降の会議のテーマだとか、今お考えになっているもの、取り組むべきものはどういったものがあるかということを伺いたいと思います。

回答)
 この新しい資本主義実現会議においては、先ほど冒頭の発言でも申し上げましたように、賃上げに関しても話というのはこれ今日総理からもう、総理のご発言の中でありましたので、当然次はやらなくてはいけないこととして出ていることと思っておりますが、一方で、新しい資本主義そのものが、全体像としてどういうものをイメージしているのかということは、相当これは有識者の皆様方も交えて骨太の議論をした上で、そのコンセプトそのものもお示しをしていかなければいけないと思うのです。ですから、当然、次はこの緊急提言は、経済対策はどうしても必要だというところからやりましたけれども、本来新しい資本主義実現会議でやらなくてはいけないこととして、その大きなグランドデザインを描いていくための大きな議論というものを、これから年内も含めてやらせていただければと思っております。もちろん、ビジョンだけではなくて、具体的な施策というものがそれに紐付いてきますので、それは後に回すと言うことではなくて、同時に議論する中で、出てくるものだというふうに認識しておりますので、そのような議論の仕方になるのではないか、と思います。

質問)
 大臣就任改めておめでとうございます。本題ですけども、今般、外国ファンドによる企業買収などにより、日本国民の財産でもあるものづくりの技術をはじめとして、ヒト・モノ・カネが海外に流出して、日本経済衰退の一因となっております。先ごろテレビ業界の外国人株主による株式保有比率問題などがありましたが、特定の業種・参入については規制があり、保護されている場合もありますが、このままでは日本は外国の投資ファンドの草刈り場となって、長年磨きあげた技術や育て上げた人材、そして企業資産も流出・散逸してしまいます。これも新自由主義の弊害だと思われます。先月15日の大臣会見の中でも、山際大臣は岸田総理の言葉を引用されまして、「会社を形作っている要素は株主やマーケットだけではない。様々なステークホルダーが居る中で、その全体を見て企業のプラスになるような、ひいては社会としてプラスになるような在り方が新しい資本主義」だとおっしゃっております。そのステークホルダーの中に、外資の影響も含まれるのでしょうか。ヒト・モノ・カネ、技術の流出・散逸についての防止策はお考えでしょうか。また、経済活動が政治とは無関係に独立してあるわけではなく、改憲に当たっての国民投票に関してテレビCMの規制もない、メディアが外国からの影響を受けぬ為の外資規制も守らず信用できない、これらの問題を国会で審議する時間も取らず、新しい資本主義を喧伝することは岸田内閣の閣僚としていかがお考えでしょうか。お考えをお伺いできればと思います。

回答)
 基本的には、外資に対する規制というのは、我が国は外為法を中心に、既に法制度があるわけです。それだけで十分かと、そういう問題意識を岸田内閣としてしっかり持っているので、今までの内閣にはなかった、経済安全保障担当大臣というまさに新しいポストを作られて、そこに小林大臣が就任をされたということです。ですから今ご質問頂いたような問題意識は、もちろん共有させていただいておりますし、また、現行制度の中で、しっかり守れる部分は守り、守れない部分が仮にあるのだとすれば、穴を埋めていくための法律というものを次期通常国会に出していくのだと、これも明言をしておりますので、そこで準備をしていくということになるのだろうと思うのです。後ほどの質問でありました、メディアに関しましても、当然日本で何かやろうとするときには、今あるルールの中で規制がかからないわけでありませんが、まだそれでは不十分だというご意見であるならば、その不十分だということを、今私伺いましたし、もちろん同じ問題意識を我々持っていますから、如何にして適正なものにしていけるかということは、この経済安全保障の枠の中で考えるべきものというふうに思っております。

質問)
 よろしくお願いします。緊急提言案の中のちょっと細かいことなのですが13ページ目の前半にある、四半期開示を見直すことを検討する、という文言がありますけども、これスケジュール感も含めた実現性はどれぐらいあるのかというのをちょっと知りたいところなのですが、改めて大臣のお考えをお聞かせください。

回答)
 はい、もちろん議論の俎上には上げます。しっかりと。これはまさに短期的な投資が、投資と呼べるのか投機と呼べるのかという話にもなりますし、あるいはマルチステークホルダーの方を向こうといったときに、どうしても四半期ごとの話になりますと、短期の株の上がり下がり、あるいはその業績が良いか悪いかということを判断して投資が行われるということがあって、それに関して問題はなしとせず、という議論があるというのはおっしゃるとおりです。ですからこれ、新しい資本主義の会議の中でちゃんと議論させて頂きますが、それに対しての提言を、他のものに先駆けてやるということではなくて、全体で議論をして行く中で、来年の春に向けてグランドデザインというものをしっかりと示すということにしてございますので、来年の春あたりを目指して議論というものが他のものと並行的に進んでいくものというふうに認識して頂ければ良いと思います。

質問)
 よろしくお願いします。緊急提言を出すに当たって、2回という短い期間だったと思うのですが、大臣として委員の意見はこれ十分反映されたものというふうにお考えでしょうか。

回答)
 確かに今日新しい資本主義実現会議2回目ですから、緊急提言の中身について有識者の皆様方全部すりあわせをしたのかというとそういう訳ではありません。しかし、当然我々が緊急提言として出そう、とするものに関しては有識者の皆様方に全部その中身を見て頂いた上で、ご意見も丁寧に伺って、それを反映させたものとして今日、案としてお出ししたものをご了承頂いたということですから、そこの意識には齟齬はないようにやらしていただいたということです。

質問)
 クリーンエネルギー技術の開発実装ですね、直接はエネ庁の話なのかもしれないですけどクリーンエネルギー戦略の策定を岸田内閣掲げておりますけども、どういったものを想定しておられるのか、山際大臣ご自身の考えを聞かせてください。

回答)
 もちろん、カーボンニュートラルを実現していくために、エネルギー基本計画をエネ庁中心に経済産業省で作ったものを政府全体でオーソライズしましたね。ですからこれが元になっていることは間違いないです。実際にカーボンニュートラルを2050年までに実現しようとしたときに、その道筋というものはそう平坦なものではないということは皆さん御指摘のとおりですから、当然、その基本計画に従ってそれをブレイクダウンさせて、一つ一つのプランにしていかなければいけないわけです。それをもって、クリーンエネルギー戦略、プランという話になるのだと思って、そのように私は認識しております。ですから当然、我々もそのことを意識した上で、新しい資本主義を実現していこうとするならば、エネルギーがどのような形になっているかというのは今後非常に重要なファクターですので、それも踏まえた上で、新しい資本主義全体としてはどのようなものにしていくかという議論が進むものと、そういうふうに思っております。

質問)
 すみません。先ほどの電気新聞の方の質問とちょっと関係するところなのですが、クリーンエネルギー戦略というのがなぜエネルギー基本計画と別に作る必要があるのか、ちょっとよくわからないことがあって、といいますのが必ずしもエネルギー基本計画ではあまり重視されていないように思われる核融合とか、こういったことが入っていて、しかもこれが緊急提言といわれるような緊急に何かやらなければいけないことなのか、ちょっとすっきり理解できないですが、なぜこういったことが書かれているか、核融合などが緊急提言に入っているのでしょうか。

回答)
 個別具体のものに関して、こういう理由だからということはこの場で御説明はしませんが、先ほどの質問に対して申し上げましたように、エネルギー基本計画というものはある意味大方針をきちんと示したものと、そう御理解頂けますでしょうか。しかし方針を示したからといって世の中はそうなるわけではないので、それからブレイクダウンをさせて、様々なプランを実行していかなければならないわけで、それのことをクリーンエネルギー戦略と呼んでいると。それを策定しなければいけない。現実にカーボンニュートラルを実現させていくための確かなプランを皆さんにお示しする必要があるという問題意識ですね。エネルギー基本計画はその大方針を示していますから、具体的にじゃあ再生可能エネルギーをどれぐらい増やしていくためにいったい何をすればいいのか、あるいはその核融合も含めてですけども、原子力の様々な利用に関して何をすれば良いのか、ということが具体的にまだ全部決まっているわけではないので、それをお示ししていくということは必要だということだと認識して頂ければと思うのです。その上で、私の理解では、2030年にCO2をあれだけ削減させるというのは、46%削減させると言っているわけですから、今すぐやらなければいけないことっていっぱいありますよね。ですから、これも緊急性の高いものだというふうに私自身は認識しております。

質問)
 核融合などは緊急性が高いと?

回答)
 ですから、今申し上げましたように、全ての技術というものは一日にして成りませんから、今本当に一生懸命取り組んだからといって明日結果が出るものではない、とするならば、いつやるのですかといったら、緊急性のあるものとして今始めなくてはいけない、そういう理解で私はいます。



(以上)