No.17 クナシリ・メナシの戦い

概要

 1789年(寛政元年)、クナシリ島とメナシ地方のアイヌが蜂起し、クナシリ、キイタップ、アッケシ場所などを請け負っていた飛騨屋の関係者や松前藩の役人などを殺害する事件が発生した。飛騨屋はアイヌに鮭鱒をとらせ〆粕を生産する事業を展開していたが、飛騨屋による酷使や虐待を含め労働条件に強い不満があったことが蜂起の原因とされる(直接的な原因は、クナシリ島の惣長人が和人に毒殺されたと考えられたことにある)。首謀者37名は処刑され、飛騨屋による場所の請負は1790年(寛政2年)取りやめとなった。その後、松前藩が奥蝦夷地を直轄することとされたが、実質的には阿部屋村山伝兵衛に請け負わせ、労働条件は緩和されたがアイヌの使役は継続された。江戸幕府は、蜂起の背景にロシアがいる可能性を危惧したが、そのような事実はなかった。しかし、1792年(寛政4年)のラクスマンの来航、1796(寛政8年)のブロートンの来航があり、また、アイヌの待遇が劣悪であることについて対外安全保障の観点から懸念をいただき、江戸幕府は蝦夷地への直接的な関与を強めていくことになる。

関連する企画展パネル

「知られざる北方四島 -歴史・文化・自然―」「幕府の北方四島の警備強化と開発」

関連する文書

文書名 所蔵機関(請求番号など)(注) 概要
『蝦夷拾遺』 国立公文書館
(178-0232)
天明の蝦夷地調査の成果について佐藤玄六郎が記した書。写本の一つが国立公文書館の内閣文庫に保管されており、画像データが同公文書館のデジタルアーカイブに掲載されている。
『蝦夷国風俗人情之沙汰』 東京国立博物館
(QA-598)
江戸幕府による天明期の蝦夷地調査に参加した最上徳内が、アイヌの風俗や生活などのほか、松前藩の政策、北方地域の地理や沿革などを記した書。国書データベースに北海道大学附属図書館が所蔵するもの(請求番号:旧記192)のデジタル画像がある。『日本庶民生活史料集成 第4巻』に翻刻が掲載されている。
『蝦夷草紙』 国立公文書館
(178-0209)
最上徳内が1790年(寛政2年)に執筆した蝦夷地方の地誌。画像データが同公文書館のデジタルアーカイブに掲載されている。
『蝦夷地一件』 京都大学文学研究科
([1-2]日本史:つ9/12
[3-5]: 日本史:つ9/13)
1784年(天明4年)から1790年(寛政2年)までの、江戸幕府における蝦夷地に関する公文書を集成したもの。デジタル画像データは、京都大学貴重資料デジタルアーカイブで公開されている。北海道庁が編さんした『新北海道史』第7巻 (史料 1)に翻刻が掲載されている(国立国会図書館デジタルコレクションにデジタル画像あり)。
  • 複数の機関が所蔵している場合、複数の版が存在する場合は、主なもの、アクセスしやすいものを紹介しています。