国家公務員 CAREER GUIDE

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非行少年に面接、心理検査を実施。
長所を伝えたときの顔は忘れられない

もともと母が美容室を営んでいたこともあり、地域の人々との関わりやつながりが多い家庭でした。不登校やいわゆる非行少年と言われるお子さんが来店して、母や私に悩みを相談したり、ただ居場所を求めて遊びに来たりすることもあって。それを見ていた高校生の頃から、漠然と「社会の役に立つ仕事がしたい」と考えていたように思います。最初に国家公務員になることを意識したのは、大学院への進学が決まったとき。心理学を学びたいからと決意したものの、学費を支払うためにはアルバイトだけでは足らず、奨学金を利用せざるを得ませんでした。大学院の修了後、多額の返済をしながら自立していけるのかと考えたとき、将来に強い不安を覚えたのです。そのため、安定した収入を得ることができる常勤の仕事に就きたいという切羽詰まった思いがありました。国家公務員にも、大学院で学んだことを活かせる心理職の仕事があると知ったのが、志すきっかけです。その後、同じ国家公務員である法務教官の採用試験に合格した先輩の話を聞く機会があり、法務技官(心理)の仕事を知りました。心理学の知識を十分に発揮できるとともに、職員が一丸となって罪を犯した人の立ち直りに取り組み、それが社会の平和にも繋がるという点が、選択の決め手になりましたね。

私が経験した中でもっとも印象に残っているのは、担当の少年に面接をしたり心理検査を実施したりして、家庭裁判所に提出する鑑別結果通知書を作成する「鑑別」作業です。少年鑑別所には、19歳以下の非行を犯した少年が入所しますが、中には12~13歳といった年の若い少年もいます。そうした少年にはできる限り配慮をしますが、基本的に面接や心理検査は他の少年と同様に1対1で実施します。彼らの多くは、それまで保護者や教師、友人など、他者の手助けを得ながら生活していたはず。ところが少年鑑別所では自分の力で法務技官(心理)の面接に応じなくてはならないのです。大変に負担のかかることだと思いますが、自分の意見をしっかりと他者に伝えたり、困難なことにも一所懸命取り組もうとしたりする場面を見るたび、少年自身の力や今後の可能性を感じます。再非行を防止するために、非行を犯した原因や問題点を伝えるのはもちろん必要ですが、これまで叱られることの多かった少年にとって、長所や強みを言葉で伝えてもらえるのはそれ以上に重要なこと。心理検査を実施した少年にはフィードバックを行うようにしていますが、そこで見つかった長所や強みを伝えたときの驚いた顔や嬉しそうな顔は、いつまでも忘れられません。
実際の業務では、少年との関わりだけでなく、事務作業などの仕事も多いため、忙しくなって視野が狭くなりがち。そんな中、自分が担当している少年が改善・更生していくための最善の策は何か、少年が改善することで周りの環境や社会にどのような影響があるか、と広い視野を持って考えるように心がけています。

井上 彩弥

INOUE Aya

法務省
東京少年鑑別所 鑑別部門考査
平成26年入省
【法務省専門職員(人間科学)採用試験】
平成28年12月1日時点

少年鑑別所での法務技官(心理)として、少年に対して面接を実施し、非行の動機や背景にある家庭環境、生育歴、交友関係などを丁寧に聞いていくと同時に、各種心理検査を用いながら非行少年の知能や性格などの資質を把握。非行に至った原因や今後の指針を明らかにする業務を担当する。その他、地域の非行や犯罪防止のため、学校などの関係機関と連携し、青少年の健全な育成にも尽力している。