表紙 公務部門における障害者雇用マニュアル 令和6年1月 内閣官房内閣人事局 厚生労働省 人事院 目 次(本編) はじめに 1ページ 第1章 障害者雇用の理念と政策体系 4ページ 第1節 障害者雇用の理念【厚生労働省】 4ページ 第2節 障害者雇用促進法の体系等 6ページ 1 障害者雇用促進法の概要・体系【厚生労働省】 6ページ 2 国家公務員における差別の禁止及び合理的配慮の提供等【人事院】 10ページ 第3節 各府省における自律的なPDCAサイクルの確立や推進体制の整備【厚生労働省】 13ページ 第2章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮【厚生労働省(人事院)】 23ページ 第1節 身体障害者(肢体不自由者、視覚障害者、聴覚・言語障害者、内部障害者) 23ページ 1 肢体不自由者 23ページ 2 視覚障害者 24ページ 3 聴覚・言語障害者 25ページ 4 内部障害者 26ページ 第2節 知的障害者 29ページ 第3節 精神障害者 30ページ 第4節 発達障害者 32ページ 第5節 その他の障害者 34ページ 第3章 障害者雇用に取り組むに当たっての各ステップ【厚生労働省】 37ページ 第1節 障害者雇用に取り組むに当たっての各ステップ 37ページ 1 障害者雇用の理解促進 37ページ 2 採用に向けた計画の作成 37ページ 3 受入れ体制の整備 38ページ 4 採用活動 38ページ 5 職場への円滑な受入れと職場定着 39ページ 第4章 障害者雇用に関する理解促進 41ページ 第1節 障害のある人と共に働くための理解と配慮【厚生労働省】 41ページ 第2節 人事担当者向けメニュー 42ページ 1 障害者雇用セミナー【厚生労働省】 42ページ 2 障害者雇用キーパーソン養成講習会【内閣人事局】 42ページ 3 障害者雇用職場見学会・障害者就労支援機関見学会【厚生労働省】 42ページ 4 障害者雇用専門家派遣事業【内閣人事局】 43ページ 第3節 障害のある職員と共に働く上司・同僚向けメニュー【厚生労働省】 44ページ 1 精神・発達障害者しごとサポーター養成講座 44ページ 2 労働局、ハローワークにおける各種相談 44ページ 3 障害者雇用推進に係る相談支援事業 44ページ 第4節 職場実習の実施【厚生労働省】 45ページ 第5章 障害者雇用のための職務環境の整備 51ページ 第1節 障害のある職員の勤務条件等の整備 51ページ 1 勤務時間・休暇制度【人事院】 51ページ 2 テレワークの活用【内閣人事局】 54ページ 3 人事評価【内閣人事局】 55ページ 第2節 障害のある職員の作業環境の整備【厚生労働省】 59ページ 1 支援機器の導入 59ページ 2 施設・設備の改善 69ページ 第6章 障害のある職員の募集・採用等 73ページ 第1節 職務の選定【厚生労働省】 73ページ 1 職務選定の考え方 73ページ 2 職務選定の方法 74ページ 3 職務の集中化による再構築 76ページ 第2節 任用形態 79ページ 1 常勤職員【人事院】 79ページ 2 非常勤職員【人事院】 79ページ 3 プレ雇用【内閣人事局】 79ページ 4 ステップアップの枠組み【内閣人事局、人事院】 80ページ 5 雇用の安定確保に向けた措置【内閣人事局、人事院】 82ページ 第3節 募集・採用手続【人事院(厚生労働省)】 85ページ 1 常勤職員の採用 85ページ 2 非常勤職員の採用 87ページ 第4節 選考における合理的配慮の事例【人事院】 88ページ 第7章 障害のある職員の職場定着支援【厚生労働省】 89ページ 第1節 障害のある職員の配置・定着・職場適応 89ページ 1 障害のある職員の配置 89ページ 2 配置後の職務の調整 89ページ 3 職務の再設計 90ページ 4 集中配置と分散配置 90ページ 5 職場定着を進めるための対策 91 第2節 障害のある職員に対する職業能力開発における留意点 94ページ 第8章 障害者雇用に関する関係施設・各種支援メニュー【厚生労働省】 97ページ 第1節 ハローワークによる支援 97ページ 1 障害のある人の職業紹介 97ページ 2 障害者求人選考会 98ページ 3 職場実習のコーディネート 98ページ 4 職場定着支援 98ページ 5 雇用管理上の相談助言 99ページ 6 免職の届出 99ページ 第2節 障害者就労支援機関等との連携 100ページ 1 障害者就労支援機関 100ページ 2 障害者就業・生活支援センター 101ページ 3 地域障害者職業センター 102ページ 4 障害者職業訓練機関 103ページ 5 医療機関 103ページ p1 はじめに 〇 障害のある人の就労意欲が高まっている中で、障害のある人が希望や能力、適性を十分に生かし、障害の特性等に応じて活躍できることが普通の社会、障害のある人と共に働くことが当たり前の社会の実現に向けて、障害者雇用政策の一層の充実が必要となっています。 〇 こうした状況の中、平成30年8月、多数の国の行政機関及び地方公共団体において、長年にわたり実際には法定雇用率を達成していなかった状況が明らかになりました。 政府は、この事態を重く受け止め、同月、「公務部門における障害者雇用に関する関係閣僚会議」を開催し、その下の関係府省連絡会議において対応策の検討を行うとともに、事案の実態や原因の解明のため、弁護士や障害者政策に関する有識者等の第三者によって構成される「国の行政機関における障害者雇用に係る事案に関する検証委員会」を開催し、検証を行いました。 〇 検証委員会の報告書においては、厚生労働省側の公務部門における障害者雇用の実態に対する関心の低さや周知等の不手際と、各行政機関側の障害者雇用に対する意識の低さ、恣意的な基準解釈等という問題とが相まって、大規模な不適切計上が長年にわたって継続するに至ったものと指摘されました。 〇 同年10月、政府は、検証委員会における検証結果や、障害者代表や労使代表が参画する労働政策審議会障害者雇用分科会における議論も踏まえ、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」(関係閣僚会議決定。概要は資料編(1)参照)を策定しました。 〇 この基本方針において、今後、@再発防止に向けたチェック機能の強化等の必要な対策、A法定雇用率の速やかな達成に向けた計画的な取組、B国・地方公共団体において障害者が活躍しやすい環境整備、C障害者の多様な任用形態等の確保について、政府一体として取り組むこととされました。 〇 障害のある人の雇用や活躍の場の拡大を、民間に率先して進めていくべき国の行政機関の多くでこのような事態が発生したことについて、真摯に重く受け止め、深く反省する必要があります。 その上で、障害のある人も含めて誰もがその能力を存分に発揮できる一億総活躍社会を創り上げるためには、私たち職員一人一人が、共生社会の理念を理解し、今後この基本方針に基づき、国の行政機関における障害者雇用にしっかりと取り組んでいく必要があります。 〇 本マニュアルは、平成30年12月に人事院が策定した「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」(国家公務員の合理的配慮指針)を踏まえて、国の行政機関において障害者雇用が着実に進められるよう、障害者雇用に関する様々な基礎知識、基本方針に盛り込まれた支援策・制度等の解説・活用方法等を盛り込んだ実践的な内容となることを目指して作成しました。本マニュアルは、あくまで現時点の状況に基づいて作成したものであり、今後、各府省における取組状況や障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の動向等を踏まえ、随時更新していく予定です。 〇 人事担当者の皆様を始め、障害のある職員の職場の上司・同僚の方々におかれては、皆様の職場において、障害のある職員が、意欲と能力を発揮し、生き生きと活躍できる環境整備を進めていくために、本マニュアルを積極的に活用していただければ幸いです。 p3 凡例 本書の文中において、以下の用語について、それぞれの略称を用いたほか、適宜ほかの用語についても略称を用いているところがあります。 1 障害者基本法(昭和45年法律第84号) → 基本法 2 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号) → 促進法 3 公務部門における障害者雇用に関する基本方針 (平成30年10月23日公務部門における障害者雇用に関する関係閣僚会議決定) → 基本方針 4 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号) → 支援法 5 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 → 機構 p4 第1章 障害者雇用の理念と政策体系 第1節 障害者雇用の理念 障害者施策の基本理念である、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現(基本法第1条)のためには、職業を通じた社会参加が重要です。 このため、促進法においては、障害のある人は、経済社会を構成する労働者の一員として、職業生活においてその能力を発揮する機会を与えられるものとされ、障害者雇用施策は、こうした個人の尊厳の理念に立脚した障害者の社会的自立、すなわち職業を通じた自立を実現するという基本的理念の下で進められています(促進法第3条)。 こうした理念の下、国・地方公共団体、民間企業等の事業主は、障害のある人が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力し、また、その雇用を促進する特段の必要性から、優先雇用施策を講ずること(基本法第19条)、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理並びに職業能力の開発及び向上に関する措置を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めること(促進法第5条)等の責務を有しており、さらに、募集・採用段階及び採用後において、障害者に対する合理的配慮を講ずることも義務付けられています(促進法第36条の2及び第36条の3)。 また、国及び地方公共団体は、障害者雇用施策全体の推進を図る責務があるだけではなく、自ら率先して障害者雇用を進めていく責務があります(促進法第6条)。このため、法定雇用率が民間企業よりも高い水準で設定されるとともに、雇用の質の確保、つまり障害のある人がその能力を発揮して生き生きと活躍できる職場環境を整備し、職場定着を進めていくことについて積極的な取組が求められています。 このことは今後、民間企業ではこれまで一般的に雇用が進みにくかった重度障害者や精神障害者の雇用が国及び地方公共団体において進められることについての期待も含まれています。 障害者雇用を進めるためには、誰もが、自らの仕事と、育児・家事や介護、病気の治療、障害、体力の低下等といった事情とを共存させていくという考え方、つまりお互いの抱える事情を理解・配慮し、お互いの「できないこと」ではなく、お互いの「できること」、「得意なこと」に目を向け、職場全体でチームとして成果を創り上げていく姿勢を持つことが重要です。このことは、全ての人が自らの希望や特性に応じて働き方を選択し、安心して長く働き続けられる環境が常に整えられている状況の実現に繋がると言えます。そのような意味で、障害者雇用を進めることは、障害のある人のみならず、誰もが生き生きと働ける職場になり、ひいては全ての人が生き生きと生活できる社会を作ることだということができます。 p6  第2節 障害者雇用促進法の体系等 1 障害者雇用促進法の概要・体系 (1)障害者雇用率制度 促進法は、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、職業リハビリテーションの措置等を通じて、障害者の職業の安定を図ることを目的としています。 そのため、国・地方公共団体・特殊法人等、都道府県の教育委員会、民間企業といった事業主に対して、対象障害者の法定雇用率を定め、法定雇用率に相当する人数以上の対象障害者の雇用を義務付けています。 また、民間企業に対しては、障害者の雇用に伴う事業主間の経済的負担の調整を目的とし、障害者雇用率が法定雇用率に満たない企業からは納付金を徴収し、当該納付金を財源とし、法定雇用率を達成している企業に対して調整金を支給しています。 国や地方公共団体に対しては、障害者雇用を率先垂範する立場として、民間企業に対する法定雇用率よりも高い法定雇用率が課されています。また、促進法第40条に基づき、毎年6月1日現在の促進法上の雇用義務対象である職員の任免に関する状況を厚生労働大臣に通報する義務が課されています。 さらに、平成30年8月、国や地方公共団体の多くの機関において、対象障害者の不適切な計上及び法定雇用率の未達成が長年にわたって継続してきたことが明らかになったことを踏まえ、令和元年に促進法が改正され、以下の規定が追加されています。   ・ 国及び地方公共団体の責務として、自ら率先して障害者を雇用するように努めなければならないこととする。 ・ 厚生労働大臣は、障害者雇用対策基本方針に基づき、障害者活躍推進計画作成指針を定めるものとし、国及び地方公共団体は、同指針に即して、障害者活躍推進計画を作成し、公表しなければならないこととする。 ・ 国及び地方公共団体は、障害者雇用推進者(障害者雇用の促進等の業務を担当する者)及び障害者職業生活相談員(各障害者の職業生活に関する相談及び指導を行う者)を選任しなければならないこととする。 ・ 国及び地方公共団体は、厚生労働大臣に通報した障害者の任免状況を公表しなければならないこととする。 ・ 国及び地方公共団体は、障害者である職員を免職する場合には、公共職業安定所長に届け出なければならないこととする。 ・ 厚生労働大臣又は公共職業安定所長による国及び地方公共団体に対する報告徴収の規定を設ける。 ・ 国及び地方公共団体並びに民間の事業主は、障害者雇用率の算定対象となる障害者の確認に関する書類を保存しなければならないこととする。 ・ 障害者雇用率の算定対象となる障害者であるかどうかの確認方法を明確化するとともに、厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、国及び地方公共団体に対して、確認の適正な実施に関し、勧告をすることができることとする。 (詳細については、別途厚生労働省が定める「障害者である職員の任免に関する状況の通報に係る手引」を参照してください。)   法定雇用率については、促進法(第43条第2項)に基づき、労働者(失業者を含む。)に対する対象障害者である労働者(失業者を含む。)の割合を基準とし、少なくとも5年毎に、その割合の推移を勘案して設定することとされており、令和5年度からの法定雇用率は、国及び地方公共団体で3.0%(都道府県等の教育委員会は2.9%)、民間事業主は2.7%となっています。 (ただし、雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、例えば国及び地方公共団体では令和5年度は2.6%に据え置き、令和6年4月及び令和8年7月にそれぞれ0.2%ずつの段階的引上げを実施。)   施行時期 令和3年3月 国及び地方公共団体 2.6% 教育委員会  2.5% 民間企業 2.3% 特殊法人 2.6% 施行時期 令和6年4月 国及び地方公共団体 2.8% 教育委員会     2.7% 民間企業 2.5% 特殊法人 2.8% 施行時期 令和8年7月 国及び地方公共団体 3.0% 教育委員会     2.9% 民間企業 2.7% 特殊法人 3.0%   雇用義務のある対象障害者の人数は、以下のように計算します。    (例)常時雇用している職員が300人の場合、7人以上の対象障害者の雇用義務があります。   300人×2.6%=7.8(小数点以下切り捨て)=7人 (令和6年3月までの国の法定雇用率) 障害者雇用率制度では、雇用する障害者の数を、下記のように算定します。 <算定の方法> 身体障害者 週所定勤務時間 30時間以上 1 20時間以上30時間未満 0.5 10時間以上20時間未満 − 身体障害者 重度 週所定勤務時間 30時間以上 2 20時間以上30時間未満 1 10時間以上20時間未満 0.5(注2) 知的障害者 週所定勤務時間 30時間以上 1 20時間以上30時間未満 0.5 10時間以上20時間未満 − 知的障害者 重度 週所定勤務時間 30時間以上 2 20時間以上30時間未満 1 10時間以上20時間未満 (0.5注2) 精神障害者 週所定勤務時間 30時間以上 1 20時間以上30時間未満 0.5(注1) 10時間以上20時間未満 0.5(注2) (注1) 精神障害者である短時間勤務職員については、当分の間、1と算定します。 (注2) 令和6年4月より、重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者である特定短時間勤務職員(週の所定勤務時間が10時間以上20時間未満の職員)については0.5と算定します。 また、国の機関が法定雇用率を満たしていない場合、下記の対応となります。 @ 法定雇用率を達成していない場合、できる限り年内での達成を目指します。 A 年内での達成が困難な場合は、翌年1月から同年12月末までの障害者採用計画を作成し(促進法第38条第1項)、計画に基づいて障害者雇用に取り組みます。 B 障害者採用計画期間満了後、計画期間内に法定雇用率を達成できなければ、当該計画の終期の翌日を始期とする計画期間1年の新たな障害者採用計画を作成することとなります(促進法第38条第1項)。 C Bによる障害者採用計画を作成した場合に、厚生労働大臣が特に必要と認めるときは、任命権者に対し計画の適正実施勧告を行うことになります(促進法第39条第2項)。その場合において、適正実施勧告を行う基準は、次のとおりです。 【適正実施勧告を行う基準】 適正実施勧告は、次のいずれかに該当する場合に行う。 @ 障害者採用計画の実施率(注)が50%未満であること。 A 計画期間終期現在における実雇用率が、当該計画の始期の前年の6月1日現在における実雇用率を上回っていないこと。 (注)障害者採用計画の実施率とは、「障害者採用計画の期間中における実際の新規採用職員数に占める実際の新規採用身体障害者、知的障害者及び精神障害者の数の割合」を「当該計画における計画期間中の新規採用予定職員数に占める新規採用予定身体障害者、知的障害者又は精神障害者の数の割合」で除した割合をいう。 【法定雇用率が未達成であった場合の流れ】図表あり (2)障害のある人に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供等 平成25年6月に促進法が改正され、平成28年4月より、雇用分野における障害のある人に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供義務等が施行されました。 全ての事業主は、障害者雇用を進める上で、 @ 労働者の募集及び採用について、障害のある人に対して、障害のない 人と均等な機会を与えなければならず、また、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害のあることを理由として、障害のない人と不当な差別的取扱いをしてはならないとされています(促進法第34条、第35条)。 A 障害のある人と障害のない人との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害のある人からの申出により当該障害のある人の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならず、また、障害のある労働者について、障害のない労働者との均等な待遇の確保又は障害のある労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その雇用する障害のある労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないとされています。このような措置を「合理的配慮」といい、促進法(第36条の2、第36条の3及び第36条の4)に定められた事業主の義務となっています。 このような合理的配慮を行うことにより、これまで一般的に雇用が進みにくかった重度障害者や精神障害者についても、雇用の機会が開かれ、職場において十分に活躍してもらうことが期待できます。   2 国家公務員における差別の禁止及び合理的配慮の提供等 (1)国家公務員法等における対応 国においても、障害のある人に対して差別的な取扱いをしてはならないことはもちろん、合理的配慮が求められることも、民間の事業主と異なるものではありません。促進法において民間の事業主に課される、雇用分野における障害者に対する差別禁止及び合理的配慮の提供義務(本節1(2)参照)については、一般職国家公務員の場合、以下の規定により措置されています。 ・ 国家公務員法(昭和22年法律第120号)第27条(平等取扱いの原則)により、不合理な差別的取扱いが禁止されていること ・ 同法第33条(任免の根本基準)により、職員の任用は能力の実証に基づき行わなければならないとされていること ・ 一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成6年法律第33号)等により、職員の勤務条件が定められていること ・ 加えて、国家公務員法第71条(能率の根本基準)等により、職員の能率の発揮及び増進、職員の健康の保持増進及び安全の確保を図ることとされていること   (2)一般職国家公務員における合理的配慮指針 障害のある人に対する合理的配慮の提供に関しては、各府省における障害者雇用に関する理解の促進を図るため、基本方針において「民間事業主等向けの合理的配慮指針を踏まえ、国家公務員における合理的配慮に関する指針を、年内をめどに策定する」ことが人事院に対して要請されました。 このため、平成30年12月27日に、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」(人事院事務総局職員福祉局長・人材局長通知。以下「国家公務員の合理的配慮指針」という。)が発出されました。 同指針には、 ・ 各省各庁の長は、合理的配慮を提供すべきとされていること ・ 合理的配慮は、個々の事情を有する障害者と各省各庁の長との相互理解の中で提供されるべき性質のものであること ・ 障害者が希望する合理的配慮に係る措置が過重な負担であるとき、各省各庁の長は、当該障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で合理的配慮に係る措置を講ずること ・ 合理的配慮の提供が円滑になされるようにするという観点を踏まえ、障害者も共に働く一人の職員であるとの認識の下、各省各庁の長や同じ職場で働く者が障害の特性に関する正しい知識の取得や理解を深めることが重要であること 等の合理的配慮に関する基本的な考え方を含め、一般職国家公務員の募集・採用時、採用後の合理的配慮の手続及び内容、過重な負担の考え方、相談体制の整備が示されるとともに、障害区分及び場面別の合理的配慮の事例が示されています。各府省においては、同指針を参考に、民間の事業主と同様に合理的配慮の提供義務が課されていることを認識した上で、障害者雇用を一層推進していくことが求められています。 なお、同指針においても示しているとおり、障害のある職員が採用後における合理的配慮に関し相談をしたことを理由として、免職その他の不利益な取扱いを行うことは禁止されています。 ※国家公務員の合理的配慮指針のイメージ 図表あり P13  第3節 各府省における自律的なPDCAサイクルの確立や推進体制の整備 各府省は、促進法及び基本方針に基づき、以下に挙げるような障害者雇用の推進のための体制を整備し、組織一体として障害者雇用を進めていく必要があります。 (1)障害者活躍推進計画 各府省は、障害者が活躍しやすい職場づくりや人事管理を進める等、雇用の質を確保するための取組を確実に推進するため、厚生労働省が定めた「障害者活躍推進計画作成指針」に基づき、障害のある職員の職業生活における活躍の推進に関する取組に関する計画(障害者活躍推進計画)を作成し、公表する必要があります(促進法第7条の3)。 障害者活躍推進計画には、概ね2〜5年間の計画期間を定めた上で、各府省において達成しようとする目標(採用に関する目標、定着に関する目標、満足度、ワーク・エンゲージメントに関する目標等)並びに具体的な取組(体制整備、職務の選定・創出、環境整備・人事管理等)及びその実施時期を盛り込むこととなっています。 また、計画の作成に当たっては、障害のある職員に対して、参画を求めることが必要であり、アンケート等による障害のある職員の意見に加え、必要に応じて、障害者団体又は職員団体の意見を聴取・反映することも重要です。 さらに、計画作成後は、障害のある職員に対して参画を求めつつ、計画の推進体制を構築するとともに、計画に基づく取組の実施状況を把握・点検し、毎年少なくとも1回、実施状況を公表することが必要です。 これらを通じて、各府省は障害者の活躍の場の拡大のための取組を不断に実施し、自律的なPDCAサイクルを確立していきます。 障害者活躍推進計画の作成に当たっては、「障害者活躍推進計画作成指針」(資料編(5))、「障害者活躍推進計画の作成手引き」(資料編(6))、「障害者活躍推進計画の作成手引きに係るQA集」(資料編(7))も参照してください。 (2)障害者雇用推進者 各府省は、基本方針において選任・配置することとされていた「障害者雇用の推進に関する実務責任者」に相当するものとして、「障害者雇用推進者」を選任する必要があります(促進法第78条)。 障害者雇用推進者は、府省内の各部署の障害者雇用の取組の現状と課題を把握した上で、法定雇用率の達成と障害のある職員が活躍できる職場環境の整備を図るために必要となる取組(障害者活躍推進計画の作成を含む。)を各部署に対して促すほか、厚生労働大臣に対する障害者の任免状況の通報などの業務を担当します。   (3)障害者雇用推進チーム 「障害者雇用推進チーム」とは、法定雇用率の達成と障害のある職員が活躍できる職場環境の整備について、府省全体で積極的に取り組む体制を整えることを目的として、府省内の関係部署の責任者を構成員として設置するものです。 同チームは、府省内の法定雇用率の達成と障害のある職員が活躍できる職場環境の整備に関する方針を打ち出すとともに、各部署に対してその取組を促すことにより、府省内における障害者雇用を推進します。 同チームを設置する場合には、原則として、障害者雇用推進者(本節(2))、会計担当部署の責任者(障害者雇用に必要な環境整備のための予算確保の観点)、地方出先機関の組織・定員管理を担当する部署の責任者(地方出先機関のある府省の場合)を構成員に含むこととしてください。その他、同チームの下に実務者チームを置くか否か、チームの名称・構成員のレベル等については、各府省の実情に応じて決定してください。   (4)障害者職業生活相談員 各府省は、基本方針において選任・配置することとされていた「障害のある職員本人からの相談を受け付ける相談員」に相当するものとして、5人以上の障害のある職員が勤務している事業所において、勤務する職員から「障害者職業生活相談員」(以下本節において「相談員」という。)を選任する必要があります(促進法第79条)。 基本的には、本省においては人事課、各出先機関(地方支分部局、施設等機関)においてはそれぞれの人事担当課(総務課等)の職員の中から、相談員に係る資格を有する専門官・補佐・係長クラスの職員を選任することとしてください。 相談員に係る資格を有する者は、厚生労働省(都道府県労働局)が実施する「公務部門向け障害者職業生活相談員資格認定講習」を修了した者又は次のいずれかに該当する者をいいます。 @ 職業能力開発総合大学校の長期課程の指導員訓練(福祉工学科に係るものに限る。)を修了した者又はこれに準ずる者として厚生労働大臣が定める者 A 大学若しくは高等専門学校(旧専門学校を含む。)の卒業者又は職業能力開発総合大学校の長期課程の指導員訓練(福祉工学科に係るものを除く。)、高度養成課程の指導員養成訓練、特定専門課程若しくは特定応用課程の高度職業訓練、職業能力開発大学校若しくは職業能力開発短期大学校の専門課程の高度職業訓練若しくは職業能力開発大学校の応用課程の高度職業訓練の修了者等で、その後1年以上障害者である労働者の職業生活に関する相談及び指導の実務経験を有する者 B 高等学校等の卒業者(学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第150条に規定する者又はこれと同等以上の学力を有すると認められる者を含む。)で、その後2年以上障害者である労働者の職業生活に関する相談及び指導の実務経験を有する者 C その他の者で、3年以上障害者である労働者の職業生活に関する相談及び指導の実務経験を有する者 D @〜Cまでに掲げる者に準ずる者 相談員の役割は、 @ 次のような事項に関して、障害のある職員から相談を受け、又はこれらを指導すること(民間企業における障害者職業生活相談員の役割と同様)。 ・ 障害者の適性・能力に応じた職務の選定等に関すること。 ・ 障害者の希望に応じた研修の実施等、障害者の職業能力の向上等に関すること。 ・ 障害者の障害に応じた施設設備の改善等作業環境の整備に関すること。 ・ 労働条件や職場の人間関係等障害者の職場生活に関すること。 ・ 障害者の余暇活動に関すること。 ・ その他障害者の職場適応の向上に関すること。 A 各部署の人事担当者からの相談に応じること及びその相談について外部人材につないで助言を求めること(障害のある職員に対する日常的な相談・指導は、一義的には各部署の人事担当者が担当することとなると想定されるため)。 相談員等が障害のある職員から相談を受けたときの対応や、相談をしたことを理由とする当該職員に対する不利益取扱いの禁止等については、国家公務員の合理的配慮指針の「6 相談体制の整備等」(資料編(3))を参照してください。 なお、課室の数が多い府省においては、障害のある職員を配置した各部署の人事担当者からの相談について、各部局の人事担当課(総務課等)の人事担当者が対応し、そこで解決困難である案件については、人事課の相談員につないで助言を求めるなど、府省の実情に応じて対応するようお願いします。 また、相談員については、「公務部門の障害者職業生活相談員に係るQA集」(資料編(9))も参照してください。   (5)障害のある職員が働く部署の人事担当者からの相談に応じるための「外部人材」 障害のある職員を配置した各部署の人事担当者から、障害のある職員本人に対する適切な配慮の方法などに関する相談が出てきた場合、まず相談員(本節(4)参照)が対応して、当該人事担当者に助言を行うこととなります。こうした場合への対応として、あらかじめ障害者雇用に精通している専門家を「外部人材」として委嘱しておけば、相談員が、人事担当者からの相談を外部人材につなぐことによって、より専門的な立場からの助言を得ることが期待できます。   (6)個々の障害のある職員のサポートをする個別支援者の配置・委嘱 @ 職員の中からの選任 障害のある職員に対する職場定着支援を行うためには、職場の実態をよく理解し、障害のある職員本人の状況を把握できる職員が「個別支援者」としての業務を担うことが最も効果的です。個別支援者は職場定着支援の専門的なノウハウを有し、本人から仕事や職場環境などに関する相談を受けて、必要な助言を行う(本人から得た相談内容に基づいて職場の人事担当者に対して職場環境などについて助言することを含む。)ことが想定されます。同じ課室内で本人の近くで共に業務を遂行している上司や同僚が個別支援者としての業務を担うことが好ましいですが、各部局の人事担当課室や各府省の人事課等の内部に、職員(常勤・再任用・非常勤)をより専門性の高い個別支援者として育成して長期的に配置する方法も考えられます。 このように、職員を個別支援者として選任してその職務を果たせるようにするためには、その対象者に個別支援者としての専門的知識を身に付けさせることが重要です。 そのため、厚生労働省は、国の機関において障害のある職員をサポートする個別支援者として選任された職員に対し、採用された障害のある職員の職場適応に向けて必要な支援スキルや知識等を付与するための研修(国の機関の職員に対する障害者の職場適応支援者養成事業)を、民間企業に委託して実施しています。この研修の内容は、「職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修(以下「ジョブコーチ養成研修」という。)に準ずるものとしています。 このほか、国の機関においては、厚生労働大臣が指定した民間のジョブコーチ養成機関が実施するジョブコーチ養成研修を有償で受講することができます。   A 外部からの個別支援者の採用・委嘱 障害のある職員に対する職場定着支援を行うためには、職員が個別支援者としての業務を担うことが最も効果的ですが、その専門性のある職員が現時点でいなかったり、個別支援者としての養成に時間を要する場合においては、専門性のある外部人材について、非常勤職員として採用したり、支援を受けるごとに委嘱するなどの方法が考えられます。 外部人材として求められる資質としては、働く障害者についての知見を有し、できる限り実際の支援経験がある者を採用することが、障害のある職員の職場適応には効果的であると思われますが、支援経験を有していなくても、精神保健福祉士や社会福祉士、公認心理師などの有資格者やジョブコーチ養成研修等を受講した経験がある者などを採用することも考えられます。 このような外部人材を確保するためには、ハローワークに求人申込を行う、自機関のホームページ上で公募するなどの方法があります。 B 障害者就労支援機関※等の行う就労定着支援サービスの活用 ア 障害福祉サービスによる就労定着支援 支援法に基づく障害福祉サービスである、就労移行支援、就労継続支援(A型、B型)、生活介護、自立訓練(以下「就労移行支援等」という。)の利用を経て採用された障害のある職員については、採用から6か月間は当該サービスのフォローアップとして行われる支援を受けることができます。この支援は、就労移行支援等においては義務となっており、その他のサービスにおいては努力義務となっています。 さらに、就労移行支援等の利用を経て採用された障害のある職員については、この6か月を経過した後に、就労の継続を図るため、3年間にわたり、職場、障害福祉サービス事業者、医療機関等との連絡調整、障害のある人が雇用されることに伴い生じる日常生活又は社会生活を営む上での問題に関する相談、指導及び助言その他の必要な支援を行う就労定着支援サービスを利用することができます。 この就労定着支援は、支援法に基づく障害福祉サービスの一つであることから、他の障害福祉サービスと同様、障害のある職員本人の申請に基づいて行われるものであり、国の機関から就労定着支援事業所に直接依頼を行うことはできません。このため国の機関が障害のある職員に対してこのサービスが必要であると考える場合は、本人に対して当該サービスの情報提供を行うとともに、本人及び就労定着支援事業所とよく相談し、本人との合意の上で、本人から地方公共団体に申請を行ってもらうことが必要です。 ※ 障害者就労支援機関は、支援法に基づき地域の各種社会福祉法人等が運営しており、各地域においてこれらのサービスを行う障害者就労支援機関は、次のホームページ等で検索することができます(第8章第2節1参照)。 ・WAMネット障害福祉サービス等情報検索 https://www.wam.go.jp/sfkohyoout/COP000100E0000.do    イ 障害者就業・生活支援センターによる支援 障害者就業・生活支援センターは、障害のある人の就業及びこれに伴う生活支援(体調・服薬管理ができること、衣食住の身辺管理を自らできること又は仕事に力を出せるように規則正しい睡眠・生活を送り遅刻欠勤せずに通勤できることのための支援等)を行う、促進法に基づく指定法人であり、社会福祉法人等が運営しています。 同センターにおいては、 a)厚生労働省(都道府県労働局)の委託事業による就業支援 b)都道府県の委託事業(厚生労働省の補助事業)による生活支援 が行われているほか、 c)地方公共団体により独自に措置された担当者によって就業支援・生活支援 が行われている場合があります。 このうちa)の事業によって措置された就業支援については、求職活動中から利用者登録を行った上で、障害者就業・生活支援センターの支援を受けて就職した場合を除き、国の機関に採用された障害のある人を対象として実施することはできない点に御留意ください(対象者が雇用保険の被保険者である場合は支援の対象となります。)。 なお、国の機関に採用された障害のある人を対象とした職場定着支援を有償で実施できる場合があります。 また、障害のある人の特性によっては、職場定着を進めるために、生活支援が重要である場合がありますが、それについてはb)により同センターが国の機関に採用された障害のある人を対象として実施することは可能です。なお、この生活支援サービスは、障害者福祉サービスを実施する機関においても実施しています。   C ハローワーク等に配置される支援者による支援 現在、全国のハローワークにおいては専門の支援者(就職支援ナビゲーター(障害者支援分))が配置されており、求職者に対して担当者制を含むきめ細かな職業相談・職業紹介を実施することや、採用後に必要に応じて職場に出向き職場定着支援を実施することとしています。 また、ハローワーク又は労働局には、職場適応支援に係る専門的な知識や経験等を有する相談員(以下「職場適応支援者」という。)を配置しています。職場適応支援者は、国の機関において採用された障害のある職員が職場適応に課題を抱える場合に、職場に出向き、障害のある職員本人に対する業務遂行力やコミュニケーション能力の向上を図る支援を実施するとともに、国の機関の人事担当者などに対して職場環境の改善の助言等を行います。 D その他 その他、職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援サービスを有料で実施している民間団体があります。 また、東京都の独自事業(区市町村障害者就労支援事業)により区市町村が設置する就労支援センターで、各地域に住む障害のある人に対して、就労支援を行っています。就労支援センターの支援を受けて国の機関に採用された障害のある職員に対して、当該職員本人から支援の希望があった場合に、就労支援センターの支援体制の範囲で可能な限り就労支援を実施することができます。東京都以外でも自治体が独自に障害のある人の就労支援を実施している場合がありますので、必要に応じて各自治体にお問合せください。 なお、機構の地域障害者職業センターの障害者職業カウンセラーや職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援については、常勤、非常勤問わず国の機関に採用された障害のある職員(採用内定者を含む。)を対象として実施することはできない点に御留意ください。   (7)障害者の雇用促進を担当する職員の人事評価について 前述のとおり、各府省等の障害者雇用に係る責任体制を明確化した上で、障害者雇用推進者(本節(2))及び相談員(本節(4))はもとより、人事担当者や障害のある職員の上司、個々の障害者のサポートを行う支援者など、障害者の雇用促進を担当する職員の人事評価を行うに当たっては、その業務内容に応じて、障害者採用計画及び障害者活躍推進計画の実施、障害者からの相談への対応等の取組を適切に考慮し、評価に反映することに留意してください(詳細は資料編(16)参照)。 なお、評価に当たっては、当該職員のとるべき行動について、本マニュアルを参考としてください。 例えば、障害のある職員の上司については、能力評価の「組織統率・人材育成」、「部下の育成・活用」、「業務遂行」等の評価に当たって、当該職員の障害の種類、程度、特性等を把握して、これらを踏まえた職務の調整、指導を行うなど、障害を有する職員に対して配慮し、その能力が十分に引き出されるよう工夫していたか等の取組状況が考慮されることになります。 また、障害者雇用推進者及び相談員については、業績評価において、障害者の雇用促進に留意した目標を設定することが必要です。 (参考)厚生労働省における取組 厚生労働省においては、平成30年11月12日に「厚生労働省障害者雇用推進本部」において、「厚生労働省における障害者雇用のさらなる推進に向けた取組」を決定しました。 厚生労働省障害者雇用推進本部の体制は以下のようになっています。   厚生労働省における障害者雇用のさらなる推進に向けた体制 図表あり 厚生労働大臣を本部長とする厚生労働省障害者雇用推進本部を設置し、厚生労働副大臣、厚生労働大臣政務官を本部長代理としています。 事務次官を始めとする厚生労働省の幹部を本部員とし、さらに事務局を設置し、事務局長を官房長(促進法第78条第1項の障害者雇用推進者も官房長を選任)としています。 事務局内の幹事会は、人事課長を始めとして、省内の全局の総務課長を構成員としています。さらに、事務局内に「障害者が活躍できる職場づくり推進室」を設置し、従来の本省内部部局の人事雇用管理担当者に加え、地方支分部局・施設等機関を含めた全省的な体制を構築し、新たな選考採用の実施から採用後の育成、定着のフォローアップ等まで実務面を企画・推進することとし、これらの体制により、本省のみならず地方も含めた各部局や職場をバックアップしています。 また、各部局や職場ごとに、障害のある職員本人と、その直属の上司等に対する支援を拡充するために、「障害者雇用推進支援員(注)」(課長補佐級又は係長級)を指名し、促進法第79条第1項の障害者職業生活相談員についても、相談員の資格要件を満たす障害者雇用推進支援員等全員を選任し、相談支援を実施しています。 さらに、障害者が職場定着し活躍できる職場環境づくりのため、障害のある職員等の参画を得た検討の場を設け、部署横断的な改善方策を検討しています。 (注)部局等ごとの「障害者雇用推進支援員」が担う相談支援は、業務の一つとして位置付け、他の業務負担の軽減を行うとともに、人事評価で実績が評価されるようにしています。 p23 第2章 障害別にみた特徴と雇用上の配慮 障害のある人が職場でその能力を発揮して生き生きと活躍できるようにするためには、障害別の特徴やそれぞれに応じた雇用上の配慮事項を把握しておくことが不可欠です。以下、障害別の特徴とそれぞれに応じて想定される又は民間企業等で取られている雇用上の配慮事項について紹介します。   第1節 身体障害者(肢体不自由者、視覚障害者、聴覚・言語障害者、内部障害者) 1 肢体不自由者 障害の概要 肢体不自由には、上肢(腕や手指、肘関節など)の障害、下肢(股関節、膝関節など)の障害、体幹機能障害(座位、立位などの姿勢の保持が難しいこと)、脳病変による運動機能障害(脳性まひ)などがあり、それらのいくつかを複合している場合もあります。障害の原因は、脊髄損傷、脳血管障害、事故などによる切断・骨折や脳性まひなどです。 上肢に障害がある場合、細かい物を掴む、物を持ち上げる・運搬する、筆記、小さなボタンスイッチやタッチパネルの操作などが困難なことがあります。 下肢に障害がある場合、立っている、座っているといった同じ姿勢を保つことや立ち上がる、歩く、段差の昇降などの移動動作が困難なことがあります。 また、障害の原因によっては、痛覚・温度覚の障害(やけどをしても気付かないなど)、体温調節機能の低下(室温調整が必要)等が見られることがあります。   配慮事項例 ・ 障害以外の部位の活用、機械化、治工具や補装具の利用、作業台の高さ調   整、作業分担や作業編成の変更、工程の改善、ペア作業(相互の能力を配慮してペアを組む)などの配慮が効果的です。 ・ 下肢に障害がある場合、職場内での段差解消(エレベーターやスロープの活用など)、通路の整頓、作業座席の配置、トイレの改造などの環境整備や、通勤に関連して早出遅出勤務やテレワークを積極的に活用することなどが考えられます。 ・ 体温調節が難しい場合は、室温調整に留意すること、体温調節しやすい服装の着用を認めることなどが考えられます。   2 視覚障害者 障害の概要 視覚障害には、全盲、弱視、視野狭窄(見える範囲が限定されている)、羞明(まぶしさ、強い光を受けた際に、不快感や眼の痛みなどを生じる)、夜盲(昼間の視力には異常がないが、夜や暗い場所で見にくくなる)などがあります。また、同じ弱視や視野狭窄という状態でも、見え方には個人により違いがあります。 近年は、就労支援機器(拡大読書器、画面読み上げソフト、点字ディスプレイなど)も発達しているので、事務職での採用など、視覚障害者の職域も広がっています。 また、中途で視覚障害となっても、通勤の安全確保のための歩行訓練や、就労支援機器を活用した職業訓練を行うことにより、それまでの経験や知識、ノウハウを発揮して働くこともできます。   配慮事項例 ・ 視覚障害者が安心して歩けるように室内の配置を伝え、通路には物を置かないようにしましょう。弱視者については、階段のステップの色とエッジの色のコントラストが強いと識別がしやすくなります。 ・ 民間企業の中には、混雑時のリスクを避けるために通勤時間をずらすなどの配慮をしているところもあります。 ・ 業務遂行の際、必要であれば拡大読書器などの就労支援機器の導入も検討しましょう。機器を導入しなくても、パソコンの基本機能をうまく活用している事例(文字のポイントを上げる、画面の白黒反転機能等)もあります。 ・ 視覚障害者が業務遂行する上で、インターネット環境がスムーズに使えるかどうかが重要です。昨今、セキュリティクラウドの導入により、マウスでしか操作できないシステムが増加したことや、視覚障害を有しない人は1台のパソコンでよいが、視覚障害者は場合によってはクラウド用にもう1台パソコンを設置しなければならないこともあり、その分作業スペースが必要になることもあります。「視覚障害者の場合は画面読み上げソフトがあれば業務遂行できる」と考えられがちですが、それだけでは不十分で、システム部門とも連携して支援することが重要です。 ・ 視覚障害は情報障害であるため、周囲の状況等を単独で確認することが難しい場合が少なくありません。そのような時の支援者の存在が不可欠です。ナチュラルサポート(職員による自然な援助)も含めて、支援体制を構築することは、合理的配慮としても必要です。 ・ 周囲の状況の把握がうまくいかず、業務遂行に当たり話し掛けたり、会議などで意見を言ったりするタイミングがつかめない等、知らず知らずのうちにコミュニケーション不足に陥ってしまうことがあります。組織内の情報伝達と普段からの会話によるコミュニケーションが重要になります。 ・ 物を指し示す場合には、「ここ」、「そこ」といった指示代名詞ではなく、具体的に何がどこにあるか伝えます。その場を一時的に離れる場合には、一声掛けるようにしましょう。   3 聴覚・言語障害者 障害の概要 聴覚・言語障害は、聴感覚に何らかの障害があるために全く聞こえないか、又は聞こえにくいことを言います。また、聴力の損失が生じた年齢、障害原因の性質・程度、生まれ育った環境等によって、聞き取る力だけでなく、話す言葉の明瞭さや言語能力にも大きな違いがあります。 コミュニケーションの手段としては、手話や筆談、口話(相手の口元を見て、内容を理解する方法)などがありますが、人によってコミュニケーションの手段が異なりますし、場面によって手段を変えることが必要な場合もあります。そのため、どのような手段によればよいのかは本人の意向を確認することが重要です。   配慮事項例 ・ 会議などでは、手話や筆談、要約筆記、文字表示可能なモニターの使用、メールなどで内容を伝える、聞き取りやすいスピーカーを利用するなど、聴覚・言語障害者も参加できるよう情報保障(代替手段により情報を提供すること。)を心掛けましょう。緊急時の対応や連絡体制(職場内メール、個人の携帯メール・SNSなどの活用)を決めておきましょう。 ・ きちんと意味内容を理解しているか復唱・確認をするようにしましょう。目で見て言葉を覚えるため、特殊な読み方をする漢字などには「ふりがな」を振ったり、業務で使用する略語などは読み方や意味内容を明記したリストを作成したりしておくと役立ちます。聴覚・言語障害者の発音が聞き取れないときは、遠慮なく紙に書いてもらいましょう。 ・ 聴覚・言語障害者は、単に聞こえないだけでなく、聴覚障害を有しない人がふだん周囲から聞こえてくる雑談などから何気なく取り入れている情報(いわゆる「耳学問」)を得ることができないため、「気が利かない」等の誤解をされることがあります。また、情報が遅れる、自分の意見を言うタイミングがつかめないなど、うまくコミュニケーションが取れず疎外感を感じます。特に会議・雑談などの時に顕著になります。 円滑なコミュニケーションを図るためには該当職員に情報提供の必要の有無を確認した上で、耳から入る情報(庁内音声案内・お客様対応のやり取りの内容・同僚が何気なく話している雑談の内容)を適宜伝えるなど、個々の障害状況に応じた手段で日常的にコミュニケーションを取っていくことが望まれます。   4 内部障害者 内部障害には次の7種類の機能障害があり、いずれも生命の維持に関わる重要な機能の障害です。臓器本来の働きを補助するために通院や治療機器の装着のほか、日常生活が制限される場合があります。また、疲れやすい傾向があり、職場ではゆとりある勤務形態などの配慮が必要な場合があります。   (1)心臓機能障害 障害の概要 心臓機能障害は、不整脈、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、心筋症などにより心臓の本来の働きが障害され、このため日常生活活動が制限されている状態です。   配慮事項例 ・ 人工的電気刺激により心臓を興奮収縮させる心臓ペースメーカーを使用している場合、誤作動を防ぐため、高エネルギーの電磁波を発生する家庭電気製品、医療用機器、工業用機器の使用には注意が必要です。   (2)腎臓機能障害 障害の概要 いろいろな病気のために腎臓の働きが悪くなり、老廃物を排泄できなくなるのが腎臓機能障害です。腎機能が低下すると、人工透析療法や腎臓移植療法が必要となる場合があります。透析療法と同時に食事療法、薬物療法を受けている人もいます。   配慮事項例 ・ かぜなどの感染症に罹患しやすいので、その予防を心掛ける必要があります。身体を冷気にさらさないような温暖な労働環境が望まれます。また、透析療法のため定期的な通院が必要です。   (3)呼吸器機能障害 障害の概要 人は呼吸により大気中の酸素を取り入れ、身体の各組織での化学的燃焼によって生じた炭酸ガスを体外に排出することで生命を維持しています。このガス交換の過程のどこかに障害が起こると、呼吸器の機能障害が起こります。   配慮事項例 ・ 障害の程度によりますが、呼吸の能力が低いので、職種は肉体的負担の少ない軽作業やデスクワークなどが向いています。 ・ 気管支粘膜が過敏になっていることが多いので、環境としては刺激ガスや温度(特に冷気)、乾燥に留意します。酸素療法を行っている場合は火気や室内の換気にも留意します。   (4)膀胱又は直腸の機能障害 障害の概要 膀胱や大腸の病気などが原因で、膀胱や直腸が機能低下又は喪失したことによる障害です。そのため、排泄物を体外に出す排泄口「ストマ」を造設する人もいます。   配慮事項例 ・ 病気の経過観察やストマ管理のために、定期的な通院が必要です。   (5)小腸機能障害 障害の概要 食物の消化や吸収を行う小腸機能の低下又は喪失のため、経口による栄養摂取だけでは栄養維持できない、あるいは困難な状態を小腸機能障害と言います。   配慮事項例 ・ 高熱環境の職場、肉体労働主体の職場などでは発汗量も多いことから、電解質バランスの異常や脱水状態を来しやすくなるので、避けたほうがよいでしょう。   (6)ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害 障害の概要 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、免疫機能を担う白血球を破壊しながら数年〜十数年をかけて増殖し、重篤な免疫不全の原因となります。しかし、治療法の進歩により感染者のHIVの増殖を抑えることができるようになり、服薬や通院を続けることで職業生活が可能な人が多くなっています。 なお、エイズ(AIDS・後天性免疫不全症候群)とは、HIV感染による重度の免疫不全症候群のことを言います。現在、我が国では、エイズを発症した場合でも、1〜2か月の入院後、適切な治療を行うことで職場復帰が可能な例が多くなっています。   配慮事項例 ・ 病気への誤解や偏見への心配から、職場に配慮を申し出られず、ストレスを抱えている人もいます。通常の職業生活ではHIVが他人に感染することはなく、食品の取扱い等の仕事でも制約はありません。 ・ 病気についての正しい理解に基づき、安定した職業生活を送れるような支援が求められます。職場においては、科学的に根拠のない誤解、偏見による差別が生じないように、本人とのコミュニケーション、情報管理、啓発に十分留意が必要です。   (7)肝臓機能障害 障害の概要 代謝・解毒などの役割を担う肝臓が肝炎ウイルスなどにより機能低下した状態で、肝硬変が進行して全身倦怠感や易疲労感などの症状が強く出てきた人や、肝不全で肝臓移植が必要となった人などが、肝臓機能障害として認定されます。   配慮事項例 ・ 重労働や残業などの制限が望まれます。肝臓機能障害は自覚症状が現れにくく、無理をして状態を悪化させることがあるため、本人の自己管理とともに、周囲の理解と配慮が大切です。 p29 第2節 知的障害者 障害の概要 知的な発達に遅れがあり、意思交換(言葉を理解し気持ちを表現することなど)や日常的な事柄(お金の計算など)が苦手なために援助が必要な人と言えます。 知的な遅れがあるといっても、全ての能力が遅れているわけではありません。「話し言葉は理解できるが、文章の理解や表現は苦手」という人もいますし、「言葉による指示より視覚的指示の方が理解しやすい」という人もいます。障害の程度、能力、意欲、体力などは個人差もあり、知能指数だけで職務能力を判断することは避ける必要があります。 近年は定型業務に加え、事務補助などの業務にも知的障害者の職域が広がっています。特に、訓練を受ける等によりパソコンでの作業、例えば入力作業などについて問題なく行える人もいます。   配慮事項例 ・ いろいろな人から説明や指示を受けると混乱してしまいます。指導担当者をはっきりさせることが大切です。 ・ 機械を導入して工程を単純化したり、工程を細分化したりして作業を可能にした例も多くあります。採用当初は業務量を少なくし、本人の習熟度を確認しながら徐々に増やしていくことも有効でしょう。 ・ 「それ」、「あれ」などの言い方や抽象的な表現は避け、簡潔で具体的な表現が大切です。絵や図を使ったり、注意事項などは黒板に書いたりするのもよいでしょう。やってみせて、次に、本人にやらせて理解を確かめます。 ・ 一般に文章理解、数字の操作が苦手ですが、1個できあがるたびにカウンターを押して数を数えなくてもよくする、砂時計やタイマーを使用して正しいタイミングや必要な時間の長さを測るなど、道具の利用や工夫によって解決できることもあります。   p30 第3節 精神障害者 障害の概要 精神障害は、様々な精神疾患が原因となって起こります。主な精神疾患には、統合失調症、気分障害(うつ病、そううつ病など)、てんかんなどがあります。 (1)統合失調症 統合失調症は精神疾患の中でも、社会復帰への援助に力を入れなければならないものの一つです。患者数が多く、急性期から回復しても各種の障害が後遺症として残って社会での自立した生活を困難にすることが多くあります。統合失調症から回復した人によく見られる特徴としては、「細かな指先の動作が苦手」、「複雑なことが苦手」、「臨機応変に判断することが苦手」、「新しいことに対して不安が強い」などが指摘されています。 現在では薬物療法を中心とした精神医療やリハビリテーションの進歩によって、病気から回復し、自立した職業生活を送る人も大変多くなっています。   (2)気分障害 気分障害は、生活に支障を来すほどに異常に気分が沈んだり高揚したりする状態が長く続く病気で、その代表は、うつ病(単一性障害)とそううつ病(双極性障害)です。 うつ病では、一般に身体と精神の両方に症状が現れます。身体症状として は、睡眠障害、食欲不振、性欲減退、頭痛・腰痛・肩の痛み、疲労感・倦怠感などが見られます。精神症状は、身体症状に隠れて見逃されがちですが、抑うつ状態、日内変動(特に朝方の憂うつ感がひどく、夕方になるにつれて軽くなっていく状態が続く)、集中力低下、注意力散漫、意欲低下、不安、取り越し苦労、自信の喪失などが特徴的です。 「そう」は、「うつ」とは逆に気分の高揚が特徴で、気力や活動性の昂ぶりがあります。例えば、社交性が高まり、あちこちに電話をかけたり、話が止まらなかったり、過度の馴れ馴れしさが出たりといった特異な行動が見られることがあります。うつの睡眠障害とは反対に、寝なくても平気である場合が多いのが特徴です。このそう状態とうつ状態が交互に繰り返されるのがそううつ病です。   配慮事項例 ・ 心身が疲れやすいので、短時間勤務から始め、体力の回復状況を見ながら徐々に延長すると良いでしょう。職場で日常的に関わることができ、信頼関係を築くことのできる援助担当者を決めておくことも大切です。判断・責任などの精神的プレッシャーに弱い場合には、当初は安全なストレスレベルから始めます。工夫・応用が苦手なことがあるので、作業の流れや手順を決めると良いでしょう。通院・服薬の遵守に配慮することが必要です。 ・ 必要に応じて医療機関や支援機関と連携してサポートすることも大切です。   (3)てんかん 障害の概要 てんかんは、様々な要因による慢性的な脳の疾患で、WHO国際疾病分類では「神経系及び感覚器の疾患」の一部とされていますが、厚生労働省の障害者施策においては精神障害者に対する施策の対象としています。てんかん発作は脳の神経が一時的に激しく活動することにより起こるものです。「全身けいれんを起こして倒れる」というイメージがありますが、大きく分類すると、部分発作(意識が保たれたままであったり、徐々に意識が消失したり、全身のけいれんに進展する場合がある)、全般発作(意識が最初からなくなることが多いという特徴がある)の2つに大別されます。 治療は抗てんかん薬による薬物療法が中心になります。薬物療法により大半の発作は抑制できますが、服薬中断により発作が再発することが多く、規則的に服薬を続ける必要があります。また、睡眠不足や過労、暴飲、暴食などが発作を誘発するため、これらを避ける日常生活を送ることも重要です。   配慮事項例 ・ まずはてんかん発作を起こさないような労働条件や職場環境の設定に留意が必要です。そのためには、本人を介して主治医から就労上の留意事項を聞いておくことが望まれます。通院及び服薬の時間を確保する、生活リズムを崩さないよう長時間の残業をなるべく避ける等の配慮も考えられます。 ・ 起こった発作は必ずおさまるというのがてんかん発作の特徴です。本人の発作のタイプに応じた対応方法を主治医にあらかじめ確認しておき、発作が起きたときは落ち着いて冷静に対応することを心掛けましょう。 p32 第4節 発達障害者 障害の概要 発達障害者支援法(平成16年法律第167号)において、発達障害は自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現する障害を有するものとされています。   (1)自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害  自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害は、社会的コミュニケーションの障害及び対人的相互関係における持続的障害、活動や興味の範囲の著しい制限・変化への抵抗などの問題の複合的な障害として診断されます。   ・社会的コミュニケーションの障害及び対人的相互関係における持続的障害 人への反応や関心が乏しすぎたり、逆に、大きすぎたりするなど、言葉や 表情・ジェスチャーなどの手段をうまく使えないことがあります。他者にメッセージを伝え、あるいは他者からのメッセージを読み取ることが苦手で対人関係がうまく結べないことがあります。「指示されているルールは守れるが、職場の暗黙のルールに混乱する」、「注意されると、相手が自分を敵視しているように感じてしまう」、「上司や同僚に対する接し方がうまくできない(誰にどう接して良いのか分からない)」、「指示が分からないときに、タイミング良く質問することが苦手」ということがあります。 ・活動や興味の範囲の著しい制限・変化への抵抗などの問題 活動や興味の範囲が著しく制限されていることがあります。立場を変え る、場を理解するなどがうまくできないことがあります。変化を怖れるということもあります。「複数のことを担当すると、どれを優先するのか分からなくなる」、「時間や場所などの予定が変更になると不安になる」ことがあります。   この他にも、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の過敏・鈍麻や、不器用さなどがある場合もあります。   (2)学習障害(限局性学習症/限局性学習障害) 学習障害(限局性学習症/限局性学習障害)は、一般的には、全般的な知的発達の遅れがないにもかかわらず、読み書きや計算能力などの限定的な障害やアンバランスが見られることを指します。   (3)注意欠陥多動性障害(ADHD) 注意欠陥多動性障害(ADHD)は、注意が散漫で気が散りやすい「不注意」や、じっとしていられないといった「多動」、何か思いつくとすぐに行動してしまう「衝動性」などが特徴です。 これらの障害が重複する場合もあり、いずれにせよ、一人一人違いますので、個別の対応が必要となります。   (4)吃音・チック症・発達性協調運動障害 吃音とは、なめらかに話すことが年齢や言語能力に比して不相応に困難な状態であり、音の繰り返し(例「と、と、とんぼ」)、音の引き延ばし(例「とーんぼ」)、言葉の出始めでつまるブロック(例「・・・とんぼ」)などがあります。 チックとは、突然に出現し、素早く、繰り返させる運動又は音声のことです。運動チックの例としては、目をパチパチする、顔をクシャッとしかめる、首を振るなどがよく見られます。音声チックの例としては、コンコン咳をする、鼻鳴らしなどがよく見られ、時には奇声を発することもあります。意図せず不随意的に行ってしまうことがチックの特徴で、運動チックと音声チックが1年以上にわたり続くと「トゥレット症」と診断されることもあります。 発達性協調運動障害の具体的な症状としては、運動障害がないにもかかわらず、手先が不器用、運動が苦手、よく物を落とすなどが挙げられます。手と手、目と手、足と手など複数の身体部位を協調させて行う運動が苦手です。   配慮事項例 ・ いくつかの対応方法例として、職場において確実に守るべきルールは、文章やメモにして具体的に示す(図示など)、上司や同僚に対する接し方については、それぞれの役割を明示し、モデルを示すなどの方法があります。 ・ 作業の優先順位については、メモ帳や手帳などを利用して、担当作業をリストアップする方法が有効です(分からないときは、優先順位の指示を上司に求める。)。 ・ 変化に対する不安を軽減するには、作業時間・工程をあらかじめ確定し伝える(残業や納期の変更は早めに指示する)、メモを取って復唱させるといった方法が挙げられます。 ・ 吃音等により、本人がコミュニケーションに不安を感じている場合は、時間がかかっても話を急かしたり、不快感を示したりせず、本人が話しやすいリラックスした雰囲気で対応することで、スムーズに仕事のやり取りができることがあります。 p34 第5節 その他の障害者 (1)高次脳機能障害 障害の概要 高次脳機能障害は、脳出血・脳梗塞・くも膜下出血などの脳血管障害、交通事故や転倒・転落などによる頭部外傷、その他脳腫瘍などの後遺症として発症することが多くあります。脳の全体的あるいは部分的な損傷に伴って発症します。その症状は脳損傷の程度によって様々ですが、次のような記憶、注意などの認知機能の障害が挙げられます。   ・ 記憶と学習の困難…古い記憶は残っているのに、新しいことが覚えにくい。過去の記憶の順番に混乱が生じやすい。忘れたことの自覚がなく、今までできていたことができなくなることもある。 ・ 注意力・集中力の低下…気が散りやすく、疲れやすいために、1つの行動(課題)を長く続けることが難しくなる。 ・ 失認症…視覚・聴覚の感覚には異常はないが、対象となる物が何なのか分からなくなることがある。 ・ 意欲障害…知的機能に障害はないが、自発的な行動を起こしにくい。 ・ 失行症…手足を動かすことはできるが、意図した動作や指示された動作が十分に行えない。 ・ 感情コントロールの低下…周囲に依存的になるほか、怒りっぽくなる、突然泣き出すことなどがある。 ・ 失語症…他人に意思を伝えたり、他人の伝えてきたことを理解したりするのが難しい。   職場では、「1つずつ手順を追うような確認作業は比較的できても、2つ以上の事柄に注意を向けたり、速度を求められたりするとミスが発生しやすい」、「耐久性や集中力に欠け、作業にむらがでたり、仕上がりを気にせず、丁寧な作業ができない」ということがあります。   配慮事項例 ・ 記憶に障害が見られる場合には、指示をメモに取ること、メモを確認しながら仕事をすることを習慣化すると良いでしょう。表示プレートのように目印になるものを置くなど環境側を分かりやすく調整することも有効です。 ・ 効率良く作業が進められなかったり、混乱してしまったりする場合は、手順を明確にし、フローを図示して、手順書に沿って作業を進めることが大切です。 <参考:若年性認知症について> 高次脳機能障害と似た症状が見られる疾患として認知症がありますが、特徴として進行性であることが挙げられます。特に若年性認知症(18歳以上65歳未満で発症)に関しては、40〜50歳代の働き盛りの年齢に発症することも多く、雇用が大きな課題となります。 若年性認知症の症状には、直前のことを忘れてしまう記憶障害や抑うつなどがありますが、発症と同時に就労が困難になるわけではありません。支援機関や支援制度を活用したり、症状に応じた職務内容の変更や配置転換を行ったりするなどの取組により、若年性認知症の方の雇用継続の可能性は広がります。   (2)難病 障害の概要 「難病」とは、平成27年1月施行の「難病の患者に対する医療等に関する法律(平成26年法律第50号。難病法。)」により、@発病の機構が明らかでなく、かつ、A治療方法が確立していない希少な疾病であって、B当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるものをいうと定義されており、国をあげて治療研究を進めるとともに、患者の医療費負担の軽減と、患者が治療を継続しながらも社会参加できるような総合的支援を進めることとされている疾病です。医療費助成の対象である「指定難病」と、「指定難病」の検討状況を踏まえて障害者総合支援法や障害者雇用施策の対象となる難病等が定められています。 難病対策や医療の進歩により、多くの難病について、完治はしないものの通院治療や服薬等で普通の生活ができるようになっており、多くの難病のある人たちが、治療を安定的に継続しながら、十分働ける場合が多くなっています。 多くの難病に共通する症状として、「全身的な体調の崩れやすさ」があり、全身的な疲労や倦怠感、痛み、発熱、集中力の低下等、最初は外見から分かりにくい症状として表れます。 その他、難病には、様々な症状があり、症状の経過や疾病の進行に伴って、障害が残る場合もあります。 また、症状の有無や程度は、疾病や治療の状況、個人により差がある点に留意する必要があります。   配慮事項例 ・ 個人の疾患、症状によって配慮事項は異なります。例えば、通院への配慮、勤務時間中の健康管理(休憩や服薬など)への配慮、通勤や治療のための柔軟な勤務時間の設定といったことが配慮の例となります。また、仕事上の相談に乗る上司や同僚の存在も大切です。 ・ 症状により視覚障害や肢体不自由など身体的な障害がある場合には、その障害に応じた物理的な環境整備(例えば、下肢に障害がある場合は職場内の段差の解消など。本章第1節参照)についての配慮が必要です。 p37 第3章 障害者雇用に取り組むに当たっての各ステップ   第1節 障害者雇用に取り組むに当たっての各ステップ 障害者雇用を進めるに当たっては、着実に取り組むことが重要です。1 障害者雇用の理解促進、2 採用に向けた計画の作成、3 受入れ体制の整備、4 採用活動、5 職場への円滑な受入れと職場定着、といった順番で段階的に進めていくことが考えられます。なお、それぞれのステップは、前のステップが完全に終わってから次のステップへ移行するという形ではなく、例えば、1と3など、同時並行で行うことが望ましい場合もあると思われます。いずれにせよ、上記を原則としつつ、障害者雇用が円滑に進むよう、状況に応じて柔軟に対応してください。   1 障害者雇用の理解促進 障害のある人を受け入れるに当たり、まず人事担当者が、障害別の特徴や配慮事項など、障害について基礎となる事項を理解しましょう。また、障害者雇用の促進に関する現行法制度や障害者雇用の現状を理解すると同時に、他の行政機関や民間企業等における取組について情報収集することも大切です。 そして、障害のある人を職員として受け入れ、さらに職場への定着を図るためには、人事担当者だけでなく、幹部職員の理解と同時に他の職員の理解と援助も不可欠です。このため、人事担当部局において、障害者雇用促進のための実務責任者を配置し、また、職員向けの研修や説明会を実施するなど、障害についての基礎知識や職務遂行上の配慮事項等の具体的な情報提供を行うなどによって、障害者雇用に関する職場全体の機運を醸成していきましょう。   2 採用に向けた計画の作成 どんな人を、いつまでに何人、どのような条件で採用するかの計画を立てます。例えば、常勤職員なのか非常勤職員なのか、配置部署や職務はどうするのか、就業時間等の労働条件はどうするのか等を検討し、採用予定数や採用時期を決定することで、具体的な行動に移ることができます。 特に、職務の選定は重要です。障害のある人にどのような職務を担ってもらうのか検討を進める必要があります。また、障害のある人の個々の特性をいかすような新たな職務の創出も大切です(職務の選定については、第6章第1節参照)。   3 受入れ体制の整備 障害のある人が職員として採用された後、その能力を十分に発揮し、職場に定着できるよう、あらかじめハード面とソフト面の両面における勤務環境を整備しておくことが重要です。 まずハード面については、建物や設備などの物理的な勤務環境の改善や整備が求められます。 立派な設備を新設するなどの大幅な改善をしなくても、例えば、職員が協力し合って、執務室内のレイアウトの変更により通路を拡大して、車椅子使用者や視覚障害者などが通りやすいようにするなど、工夫一つで障害を有する職員に配慮した職場にすることは可能ですので、まずは、身近な範囲内で気付いたところから行ってみましょう。 次にソフト面については、障害者雇用に関する職員の意識を高めることが大切です。人事担当部局が中心となって、配置予定部署の職員に対する研修や説明会を実施したり、障害者雇用を先進的に行っている民間企業等の職場を見学したりすることにより、職場における障害のある人との接し方や人事管理における配慮事項などについて、職員への周知を図りましょう(詳細は第4章及び第5章参照)。 重要なのは、障害のある職員を必要以上に特別視せず、障害のない職員と同様に、ごく自然に接することです。障害のある職員が、障害を乗り越えて、自らの能力を発揮できるよう支援体制を整えていくことが肝要です。   4 採用活動 人は誰でも、働くことを通じて、誰かのために役に立ちたいという思いを持っています。一方で、障害のある人は、自らの障害ゆえに、働くことに対して、障害のない人よりも不安を抱くことが多いと考えられます。 こうした不安を少しでも解消してもらうために、例えば、各府省の募集(常勤・非常勤問わず)に際しては、職務内容や待遇に加え、採用後のキャリアパス、勤務環境面で配慮している事項などについて、積極的に情報提供していくことが望ましいです。 実際の採用時においては、障害のない人との均等な機会の確保を図るため、障害の特性に配慮した合理的配慮に係る措置を講じてください。具体的には、国家公務員の合理的配慮指針に基づき、@障害のある人からの合理的配慮の申出、A合理的配慮に係る措置の内容に関する本人との話合い、B合理的配慮の確定、というステップを踏んでください(詳細は資料編(3)参照)。募集・採用に当たっては、以下のような不適切な取扱いを行わないことが必要です。 ・ 特定の障害を排除し、又は特定の障害に限定すること。 ・ 自力で通勤できることといった条件を設定すること。 ・ 介助者なしで業務遂行が可能といった条件を設定すること。 ・ 「就労支援機関に所属・登録しており、雇用期間中支援が受けられること」といった条件を設定すること。 ・ 特定の就労支援機関からのみの受入れを実施すること。 採用選考に当たっては、障害のある人一人一人の障害特性を丁寧に把握し、採用後、どこまで合理的な配慮を提供すれば良いかを検討した上で、障害のある人の能力・適性を評価することが重要です。配慮がない状態で考えるのではなく、合理的配慮を提供した上で、どのくらい活躍してもらえるのか、求める能力・適性があるのかを考えることが重要です。 本人が希望する場合には、「就労パスポート」(障害のある人が、働く上での自分の特徴や希望する配慮などを整理し、就職や職場定着に向け、支援機関や職場と必要な支援などについて話し合う際に活用できる情報共有ツール)の活用等により、就労支援機関等と障害特性等についての情報を共有し、適切な支援や配慮を講じていくことが重要です。ただし、就労パスポートの作成・活用の主体は障害のある人本人ですので、採用選考時の必須提出書類とすることは適当ではありません。また、採用の可否判断のために就労パスポートの作成・提示を必須とすることや、就労パスポートを所持していないからといって不利に取り扱うこと、就労パスポートに記載されている情報量の多寡によって不利に取り扱うことも適当ではありませんので注意しましょう。 なお、就労パスポートの情報も含め、採用選考において知り得た個人情報の取扱いには十分に注意しましょう。 採用活動は、「第6章 障害のある職員の募集・採用等」に記載の事項を踏まえ、適切に行ってください。なお、障害のある人の採用活動では、各種就労支援機関や特別支援学校を訪問して求人説明を行うことも効果的です。   5 職場への円滑な受入れと職場定着 採用後、障害のある職員が自らの能力を十分に発揮できるよう、周囲の職員が適切な配慮をしていくことは重要です。この配慮の実施に当たっては、国家公務員の合理的配慮指針に基づき、@職場において支障となっている事情の有無等の確認、A合理的配慮に係る措置の内容に関する話合い、B合理的配慮の確定、というステップを踏んだ上で、適切な配慮を実施してください(詳細は資料編(3)参照)。また、職場の上司や人事担当者は、職場の勤務環境についての要望、仕事に対する不安や悩みなどについて、日常的に、障害のある職員本人や就労支援機関等との意思疎通を十分に図り、必要な支援を行いましょう。そして、その職員が与えられた職務と責任を果たし、生き生きと働くことができるような職場づくりを心掛けましょう。なお、採用初期に講じた配慮や整備した職場環境が維持されているか、採用後の職場環境などの変化や本人の職務遂行状況に応じて配慮の内容を見直す必要があるかなどについて話し合う際に、障害のある職員から就労パスポートの提示があった場合は、それを参照することも有効です。 また、非常勤職員として採用した場合に、週所定勤務時間 20 時間以上 30 時間未満の勤務(障害者雇用率制度上の短時間)に加え、週所定勤務時間 20 時間未満の勤務(障害者雇用率制度の算定対象外。令和6年度以降、週所定勤務時間 10 時間以上 20 時間未満の重度身体・知的、精神障害者は算定対象。)から開始し、本人の希望も踏まえつつ、常勤化を目指して段階的に勤務時間を引き上げることも重要ですので、本人の希望に反して短時間勤務に留め置かないようにしましょう。 障害の種類や程度による違い、個人差はありますが、障害のある職員は、仕事の内容や勤務環境に慣れるまでに、障害のない職員と比べて長い時間を要することがありますので、中長期的な視点に立った配慮が必要となります。 このような配慮は、障害を有する職員本人だけでなく、全ての職員にとって、働きやすい職場となることにもつながります。また、障害のある職員の勤務実績等も踏まえ、個々の職員の能力と適性に合ったキャリアアップの図り方についても検討し、他の新たな職務に従事させる、障害に配慮した適切な研修を行うなど、職域の拡大にも努めましょう(詳細は第7章参照)。 p41 第4章 障害者雇用に関する理解促進   第1節 障害のある人と共に働くための理解と配慮 障害者雇用が進み、障害のある職員がその能力を生かして活躍するためには、職場で共に働く一人一人の職員が障害者雇用について理解し、障害のある職員一人一人に対して、必要な配慮をすることが重要です。例えば、厚生労働省が実施した平成25年度障害者雇用実態調査によると、精神障害者が前の職場を離職した理由は「職場の雰囲気・人間関係」が最も多くなっているなど、障害のある職員の定着にとって、職場環境の整備は重要な課題と言えます。 障害のある職員が生き生きと働くためには、共に働く上司や同僚などの理解と配慮が必要であり、例えば体調や気持ちの変化に気付いて「どうしたの?」と声を掛けることだけでも障害のある職員にとって働きやすい職場となります。そして、そのような職場は障害のある職員のみならず、障害のない職員にとっても働きやすい職場であるでしょう。 障害と一口にいっても、その内容は様々であり、障害特性も異なります。第1章第1節で述べたように、全ての障害のある人にとって働きやすい職場は全ての人にとって働きやすく、活躍できる場であるということを念頭に、障害者雇用への理解を深めることが大切です。 また、一人一人の職員が障害者雇用について理解を深めるとともに、人事担当者、受入部署職員が障害者雇用に関して共通認識を持ち、コミュニケーションを取りながらお互いの役割を果たしつつ、受入部署以外の職員も、障害のある職員への理解・受入部署への協力を行うなど、全省的な連携を図ることも重要です。   p42 第2節 人事担当者向けメニュー 1 障害者雇用セミナー 障害者雇用の推進のためには、人事担当者、受入部署の職員等が、共に働きやすい職場環境をつくっていく上でのお互いの役割や、障害特性、配慮事項等について共通認識を持つことがポイントとなります。その中でも、人事担当者は、募集・採用段階から障害のある人との関わりを持つとともに、採用後も受入部署の職員からの相談対応、主に受入部署において指導・管理を担当する職員等との協同による課題解決等を担うことが考えられるため、人事担当者に対して障害者の働きやすい職場環境づくりや障害特性に応じた雇用管理に関する理解を深めることは重要です。 これまで、厚生労働省の主催により、主に各府省人事課及び各部局の人事担当者を対象に、障害者の採用方法や職場適応、精神障害者の雇用管理等について説明する「障害者雇用セミナー」が開催されており、今後も開催が予定されていますので、参加を希望する場合は、厚生労働省からの案内に従って申し込んでください。   2 障害者雇用キーパーソン養成講習会 障害者雇用の推進のためには、障害特性を理解した上での雇用・配置や業務のコーディネートを行う障害者雇用のキーパーソンを置くことが重要です。内閣人事局において、主に各府省人事課及び各部局の人事担当者を対象に、障害についての基礎知識のほか、業務のコーディネートや障害者をサポートする上での必要な知識等について説明する「障害者雇用キーパーソン養成講習会」を開催しています。今後も開催が予定されていますので、参加を希望する場合は、内閣人事局からの案内に従って申し込んでください。   3 障害者雇用職場見学会・障害者就労支援機関見学会 障害者雇用に関する理解を深め、障害者雇用を進めていくに当たって生ずる課題やその対応等について学ぶためには、既に障害者雇用を積極的に進めている民間企業の職場を見学することも有用です。また、これから雇用しようとする障害者や障害者雇用に当たり必要とされる配慮等の具体的イメージを持つためには、障害者の就労支援のための職業訓練等を行う就労移行支援機関や特別支援学校、障害者職業能力開発校などの障害者就労支援機関を見学することも有用です。 厚生労働省の主催により、各府省の人事担当者や障害者とともに働く上司・同僚などを対象とした障害者雇用職場見学会や障害者就労支援機関見学会の開催が予定されていますので、参加を希望する場合は厚生労働省からの案内に従って申し込んでください。   4 障害者雇用専門家派遣事業 各府省における障害者雇用の取組に対する支援の一環として、内閣人事局では、就労支援機関等と連携し、各府省からの依頼に応じて、障害者雇用に知見を有する専門家を一定期間、各府省の職場に派遣し、採用、定着、職業能力の開発及び向上等に関する助言等を行う専門家派遣事業を実施しています。派遣を希望する場合は、内閣人事局からの案内に従って申し込んでください。   p44 第3節 障害のある職員と共に働く上司・同僚向けメニュー 1 精神・発達障害者しごとサポーター養成講座 精神障害、発達障害のある職員が安定して働き続けるためには、職場において上司・同僚がその人の障害特性について理解し、共に働く上での配慮があることがポイントとなることから、精神障害、発達障害についての基礎知識や一緒に働くために必要な配慮などを学ぶことは重要です。 そこで、障害のある職員と共に働く上司・同僚となる各府省の職員を主な対象として、精神障害、発達障害に関して正しく理解いただき、職場における応援者(精神・発達障害者しごとサポーター)となっていただくことを目的とした「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」を厚生労働省において開催しており、今後も継続的に開催していく予定です。参加を希望する場合は、厚生労働省からの案内に従って申し込んでください。 また、出先機関の職員が受講を希望する場合は、出先機関の所在地を管轄する労働局又はハローワークに相談してください。ハローワーク職員が出先機関に出向く「出前講座」を開催することも可能です。 なお、同講座については、e-ラーニング版を作成し、各府省の職員が受講できるように提供しています。詳細は厚生労働省にお問合せください。 2 労働局、ハローワークにおける各種相談 障害者の職場定着のためには、働く中で生じる疑問や課題を早期に解決することが重要です。 労働局、ハローワークでは、障害者の職場の上司や支援担当の職員等が障害者からの相談に対して対応の仕方が分からない場合に、必要な情報提供や助言を行う相談窓口を設け、職場定着のための相談援助や支援等を行っています。 相談を希望する場合は、勤務する職場の所在地を管轄する労働局又はハローワークにお問合せください(具体的な相談先は資料編(11)を参照してください)。   3 障害者雇用推進に係る相談支援事業 内閣人事局では、障害者就労支援機関等と連携し、各府省の人事担当者や障害のある職員とともに働く職員、障害のある職員本人からの職場定着等についての相談に応じる「障害者雇用推進に係る相談支援事業」を実施しています。障害特性を踏まえた業務内容、配慮事項等について、電話やメール等で相談することが可能です。詳細は内閣人事局からの案内(リーフレット)をご覧ください。 p45 第4節 職場実習の実施 (1)職場実習の目的 職場実習とは、障害のある人を一定期間職場に受け入れ、公務の職場での実務を体験させることで、障害のある人と公的機関の職員の相互理解を深めることにより、公務部門での障害者雇用の推進に資するものです。 職場実習は主に以下のいずれか又は両方の目的のために行われます。 a 就労の経験がない又は少ない障害のある人に対して、官民の一般雇用への理解の向上と就職への動機付けを与えるとともに、作業適性及び能力の把握を図る。 b 障害者雇用の経験がない又は少ない職場において、障害のある人に対する理解を深め、障害者雇用に当たっての課題の発見とその改善策の検討などに取り組むことにより、障害者雇用に係るノウハウの蓄積を図る。 (2)事業主と職場実習を行う障害者の関係 職場実習を行う障害のある人は実習生としての位置付けですので、事業主との間に雇用関係はありません。したがって、職場実習中の事故に備えて傷害保険等に加入することが必要となります。   (3)職場実習の実施方法の決定 @ 職場実習生の募集方法 職場実習生の募集方法としては、大きく分けて、次の2つの場合があります。それぞれの長所・短所を勘案して、どのような方法で実施するかを決定しましょう。 また、いずれの方法においても障害のある人がハローワーク及び障害者就労支援機関(以下本節において「就労支援機関等」という。)を利用している場合には、当該就労支援機関等の支援を受けることが可能です。 a 実習生を公募・あっせんにより募集する方法(就労支援機関等によるあっせんを含む。) 公募による場合は、実習の制度設計、実習生の選定などに直接関わることができる反面、事務手続が煩雑であるなどの問題があります。一方で、ハローワークによって対象者があっせんされる場合は、実習の内容や実習生のフォロー、職員の研修等についてハローワークの相談を受けながら進めることができます。 b 職場実習業務自体を専門業者(障害のある人の就労を支援する特定非営利活動法人などが想定されます。)に請け負わせる方法 この方法は、落札業者が決定された後は事務手続等の手間が省ける反面、業者決定のために提案書の審査を行う必要があったり、状況を把握するために業者と密に連絡を取ったりすることが必要となることがあります。   A 実習期間、勤務時間、受入部署 実習生の募集方法の決定と並行して、あるいは事前に、実習期間、勤務時間、受入部署を決定することになります。 なお、ハローワークがあっせんする実習はおおむね3〜10日間となります。実習時間は1日につき3時間程度からフルタイムまで様々ですが、実習生と相談しながら決定することが大切です。 受入部署については、組織全体又は必要に応じて個別に、障害者雇用についての周知を行うなどした上で決定します。まず人事担当課等で職場実習を実施し、「成功実績」を示した上で、他部署でも実施し、障害のある人に対する理解の普及を図るという方法も考えられます。   B 職員への事前研修 職員への事前研修を実施することは、障害についての理解を深めたり、障害のある人が働くイメージをわかせたりすることができるので大変有効です。 ア 事前研修の対象 受入部署の全職員、府省内全部局の人事担当者等 イ 事前研修の内容 障害のある人に関する基礎知識(障害種類別の説明、健康への配慮など)、実習生のプロフィール(障害の種類や程度、本人の特性、配慮する点など)、就労支援機関等の支援について等 ウ 実施方法 ハローワークが主催する精神・発達障害者しごとサポーター養成講座や実習生の所属する就労支援機関等による講演・研修、障害者雇用に積極的に取り組んでいる民間企業の特例子会社等の見学等 なお、実習の実施に先立ち、同フロア職員との顔合わせ(挨拶)等を行っておくと、比較的スムーズに実習に入れます。   C 業務の選定、職務分析 受入部署においてどのような業務が存在しているのか、また、障害のある人の能力で、どの業務に対応できるのかといった点を合わせて考え、担当すべき業務を選定します。 なお、選定の方法については以下のようなパターンが考えられます。 ア あらかじめ部署内で、思い当たる業務を列挙し、就労支援機関等と相談しながら「本人ができる(又は、できる可能性がある)業務」を選定する。 イ あらかじめ部署内で、「本人ができる業務」と思われるものを選定し、実習の中で実際にできるかどうかを確認する。 いずれの場合も、障害の種類や程度、本人の特性に合わせて受入部署と就労支援機関等の入念な打合せにより選定します。 その他、係内だけでは業務の選定ができない場合は、課、部、局等に広げて選定することも有効です。   D 環境設定 職場環境については、座席(実習生、支援員等)・作業スペースの確保、パソコンのネットワークへの接続、シュレッダー等の刃物の扱い方等について設定する必要があります。これらは、障害の種類や程度、実習生本人の特性などによって変わるので、就労支援機関等と相談の上で設定するとよいでしょう。 なお、精神障害者の場合は、精神保健福祉士や臨床心理士といった専門家の支援も重要です。これらの専門家が障害のある人の不安や心配事、気分や体調の変化等について個別の相談に乗ることで、心理的サポートになります。精神面でのケアを行うことで実習を円滑に実施することができます。   (職場環境設定例) ・ 指導や管理を担当する職員(E参照)が近くに座っており、質問を気軽にできるような座席配置 ・ パソコンの作業マニュアルをカラー・イラスト入りで分かりやすく作成 ・ キーボードでよく使うキーに、番号を振ったシールを貼る ・ 刃物等を扱う作業を組み込む場合、他の者(当番制)が付き添い、一人で作業をさせないようにする E 指導や管理を担当する職員(以下「指導管理職員」という。) 指導管理職員は、障害のある人にとって、相談相手、仕事の指示者、仕事の集約者という立場となります。障害のある人にとっては、「仕事で困ったときの相談相手」となる者が身近な存在である方が相談しやすいという点から、指導管理職員を決定することには重要な意味があります。また、業務管理上も、障害のある人が行っている業務の進捗等の状況を把握しているべきであり、そもそも障害のある人によっては仕事の指示系統が複数あると混乱したり、処理しきれなくなってしまったりする場合があります。それを回避するため、「仕事の指示者」が固定されている方がよいということも指導管理職員を置くべき理由として挙げられます。指導管理職員には、比較的府省外に出ることが少ない者を充てた上で、指導管理職員の急な出張、休暇などの不在時にも対応するために、そのような条件に該当する予備人員を複数名確保するとよいでしょう。   F その他必要となる手続 ア 守秘義務の取決め 実習の実施に当たって、就労支援機関等との確認書の締結や実習者本人、支援者との秘密保持に関する誓約書を取り交わしておくとよいでしょう。 (確認書に盛り込む内容例) ・職場実習の実施に係る基本的役割等 ・実習時間、手当等の支給及び事故への対応等 ・実習中における遵守事項等 イ 保険の加入 職場実習を行う障害のある人は通常は実習生という位置付けであり、国家公務員災害補償法(昭和26年法律第191号)や国家賠償法(昭和22年法律第125号)の適用を受けないため、別途傷害保険、損害保険等に加入する必要があります。就労支援機関等で加入するのか、受入先(各府省)で加入するのかについては、就労支援機関等と調整の上、決定する必要があります。 ウ 入館手続 実習生の通勤でのストレス軽減等を考えると、入館証を発行するなどの配慮をすることが適当です。   (4)実習中の対応 @ 実習の注意点 実習は短期間のため、実習生を「お客様扱い」してしまうことになる傾向があります。受入先にとっては、今後、障害のある人を雇用する上での課題の抽出のための実習であり、実習生にとっては、今後の雇用に対する理解の向上と就職への動機付けを得るための実習であることを考慮して、その目的を実現できるような対応を心掛ける必要があります。 また、入念に準備しても、実際業務を開始してみると、予定どおりにいかないこともあります。課題を発見したら、その都度、就労支援機関等に相談するなどして業務が円滑に進むような配慮も必要です。   A 就労支援機関等の支援員等の支援 実習開始当初は支援者等が付き添って業務の指導、確認を行うことになりますが、慣れるに従い徐々に付き添いの時間を少なくしていくことになります。   B コミュニケーションの取り方 コミュニケーションの取り方については、障害の種類や程度、本人の特性にもよりますが、日常の業務において、指示系統として指導管理職員を挟むような場合が多いものの、指導管理職員以外の職員と障害のある人が接する場面(新聞や郵便の集配等)もありますので、自然と、職員と障害のある人の間のコミュニケーションが取られるようにしていくとよいでしょう。 なお、指導管理職員との間では業務日誌(日報)を作成することを定めることが適当です。実習生は、パソコンでの業務だけでなく、コピーやシュレッダー等、席を外して行う業務に関わることがあるため、指導管理職員が目の届かない業務についても必ず報告をし、それに対してコメントをすることにより、綿密な関係を構築することができます。   (5)実習実施後の手続 @ 講評 実習後に、実習に関わった職員、就労支援機関等、実習生本人の三者で実習を振り返り、課題の発見や対応策を検討することで今後の障害者雇用に生かしていくことが適当です。 (講評内容例) ・職員の意識の変化 ・雇用に向けて想定できる業務 ・実習生の就労意欲の変化 ・実習生のスキルアップ また、実習生に修了証を授与することは、一つのことをやり遂げたことを実習生本人が実感し、就労に対する意欲も高まるので、実習生の今後にもつながります。   A アンケート 実習の前後に職員に対してアンケートを実施・分析することで、職員の意識変化や雇用に当たっての課題等を検証することができます。また、前広にアンケートを実施・分析することで、実習に関わっていない職員の意識変化等も検証することができるので有効です。 (事前アンケート項目例) ・障害についての知識 ・障害に関連する用語の理解 ・想定される仕事 ・実習生に望むこと ・就労支援機関等への理解 (事後アンケート項目例) ・障害のある人に対するイメージの変化 ・実習生とのコミュニケーションの有無 ・今後の障害のある人の受入れについて ・想定される仕事(事前との違い) ・障害者雇用についての意識変化 p51 第5章 障害者雇用のための職務環境の整備 第1節 障害のある職員の勤務条件等の整備 障害のある職員が、自らの希望や障害の特性等に応じて、無理なく、かつ安定的に働くことができるよう、国家公務員の人事管理に関し、基本方針も踏まえ、以下に挙げるような措置を講じています。 1 勤務時間・休暇制度 障害のある職員の勤務時間・休暇制度については、障害のない職員と同じく、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(以下「勤務時間法」という。)及び人事院規則15―14(職員の勤務時間、休日及び休暇)により定められていますが、障害のない職員に対する各種の措置に加え、障害のある職員は、働きやすさを考慮して、早出遅出勤務の特例の設定、フレックスタイム制の柔軟化、休憩時間の弾力的な設定等が可能となっています。   (1)勤務時間・休憩時間の原則 常勤職員の勤務時間は、休憩時間を除き、1週間当たり38時間45分とされています(勤務時間法第5条)。各省各庁の長が勤務時間の割振りを行い、原則として日曜日及び土曜日を週休日(勤務時間を割り振らない日)とし、月曜日から金曜日までの5日間において1日につき7時間45分を割り振ることとされています(勤務時間法第6条第1項、第2項)。 このような原則的な勤務時間の割振りのほか、フレックスタイム制を活用することで、全体の勤務時間数は変えずに、日ごとの勤務時間数や時間帯を柔軟に割り振ることが可能です(勤務時間法第6条第3項、第4項)。また、交替制等勤務を行う職員については、一般の職員とは異なる勤務時間の割振りをすることができることとされています(勤務時間法第7条)。 休憩時間は、原則として連続する勤務時間が4時間30分を超える前に、60分(業務の運営並びに職員の健康及び福祉を考慮して必要がある場合は45分)の休憩時間を置くこととされています(勤務時間法第9条、人事院規則15―14第7条第1項、職員の勤務時間、休日及び休暇の運用について(平成6年職職―328)第6の第1項)。 なお、非常勤職員の勤務時間を定めるに当たっては、常勤職員の勤務時間に関する基準を考慮するものとされており、休憩時間については、常勤職員の例に準じて取り扱うものとされています(人事院規則15―15(非常勤職員の勤務時間及び休暇)の運用について(平成6年職職―329)第2条関係第2項、第3項)。   (2)勤務時間等の柔軟な設定 障害のある常勤職員に対しては、以下@からBのとおり、障害の特性等に応じた早出遅出勤務、障害のない職員よりも柔軟なフレックスタイム制の活用、休憩時間の弾力的な設定が可能とされています。これらの制度の対象となる職員(Aにおいて「対象職員」という。)には、促進法第37条第2項に規定する対象障害者だけでなく、同法第2条に規定する障害者であって、勤務時間の割振りについて配慮を必要とする者として健康管理医が認める職員も含まれます。   @ 早出遅出勤務 1日の勤務時間の長さを変えることなく、始業・終業時刻を繰り上げたり繰り下げたりすることができます。 <活用イメージ> 図表あり A フレックスタイム制 フレックスタイム制を活用することで、単位期間における全体の勤務時間数(単位期間が4週間の場合は155時間)は変えずに、日ごとの勤務時間数や時間帯を柔軟に割り振ることができます。対象職員については、単位期間を1〜4週間から選択することや、日曜日及び土曜日のほかに週1日を限度に週休日を追加で設けることができるなど、更に柔軟に勤務時間を設定することができます。   <活用イメージ> 図表あり   B 休憩時間の弾力的な設定 原則として1回につき60分又は45分置くこととされている休憩時間を、2つに分割したり、必要な範囲内で延長したり、45分又は30分に短縮したりすることや、15分又は30分の休憩時間を追加で置くことができます。さらに、分割と追加を組み合わせて利用することもできます。   <活用イメージ> 図表あり   (3)障害のある職員が受けるリハビリテーションについて 常勤職員の病気休暇は、療養のため勤務しないことがやむを得ないと認められる場合に、必要最小限の期間(原則、連続して90日まで)認められる休暇です。病気休暇の「療養」には、「負傷又は疾病が治った後に社会復帰のためリハビリテーションを受ける場合等が含まれるものとする」と定められています。障害のある職員が受けるリハビリテーションについては、社会復帰のためのリハビリテーションであってもそれが医療行為として行われるものであれば、病気休暇の対象となります。なお、負傷又は疾病が治る見込みがない場合であっても、医療行為として行われる限り同様です。 例えば、在職中に疾病又は事故等により、視覚障害者となった場合で、復帰のためにリハビリテーションを受ける場合などが該当します(「障害を有する職員が受けるリハビリテーションについて(通知)」(平成19年1月29日 人事院職員福祉局職員福祉課長、人事院人材局研修調整課長)。復職後の障害のある職員に対する研修については、第7章第2節参照)。   2 テレワークの活用 テレワークは、働く場所を柔軟に選択できるため、障害のある職員も含め、勤務に当たって制約を抱える職員が自分の能力を発揮できる働き方の一つです。国家公務員については、必要な者が必要な時にテレワーク勤務を本格的に活用できるよう、各府省においてハード面等計画的な環境整備を進めてきたところです。また、基本方針に基づき、障害のある職員が必要に応じてテレワーク勤務を活用できるよう、各府省において関連規定の整備を行っています。 障害のある職員がテレワーク勤務の申告を行った場合には、管理者は、各府省の内規に基づき、当該職員の障害の態様・程度や業務の内容、執務環境等を踏まえ、適当と認める場合にテレワーク勤務を命じることができます。 テレワーク勤務者に関する勤怠管理・職務専念義務については、障害の有無によって異なるものではありません。例えば、テレワーク勤務においても、職場での勤務と同様に、勤務時間中は職務に専念することが必要であり、テレワーク勤務者は職場勤務と同等の執務環境を確保する必要があります。 一方、テレワーク勤務時にやむを得ない範囲内でごく短時間の執務の中断があっても、総体として職場勤務と同等の勤務が行われていると考えられる場合には、職務専念義務が果たされていると考えられますが、職務の中断が長時間に及び、業務に支障があると認められる場合には、管理者はテレワーク勤務者に対し、年次休暇の取得等の必要な対応をするように指導する必要があります。また、管理者は、テレワーク勤務者に対して、勤務開始時・勤務終了時の連絡や業務内容の報告・相談を求めるなど、職場勤務の場合と同等の管理を行う必要があります。 管理者や人事担当者は、障害のある職員が、心身ともに健康に自らの能力を存分に発揮しながら就労を継続できるよう、職員とこまめにコミュニケーションをとり、職員の状況に十分配慮を行いながら、テレワーク勤務を働き方の一つとして活用していくことが重要であり、その前提として、ICT機器の利活用により、障害のある職員も含めた職員がテレワークをしやすい環境を整備する必要があります。   3 人事評価 国家公務員の人事評価は、昇任、昇給、勤勉手当、人材育成等様々な側面で活用されるものであり、能力・実績主義に基づく人事管理を行うための基礎となる重要な役割を担っているものです。 障害のある職員の人事評価を行うに当たっての留意事項は、基本方針に基づき、内閣人事局において「障害を有する職員の人事評価について」(平成30年12月21日内閣官房内閣人事局人事政策統括官)を発出し、周知しています(詳細は資料編(15)参照)。 なお、これらの留意事項はあくまで一般的なものであり、また、当該職員が能力を発揮できるような職場環境の整備や合理的配慮の提供が、人事評価の前提であることに留意しつつ、実際の人事評価を行うに当たっては、個々の職員の事情を踏まえて適切に対応を行ってください(本マニュアルや障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト等を適宜参照することにより、障害特性の理解に努めることが望ましい。)。   (1)手続的な負荷軽減のための留意点 業績評価に係る目標設定、期首・期末の面談や自己申告の実施、評価結果の開示など、人事評価の実施に際し履行すべき手続については、「人事評価の基準、方法等に関する政令」(平成21年政令第31号)等で規定されています。 これらの規定に基づいて人事評価を行うに当たって、職員の障害の種類及び程度によっては、一部の手続が当該職員の負担となる場合も想定されます。@〜Cのそれぞれの手続における負担を軽減するため、以下のような対応が考えられます。   @ 業績評価に係る目標設定 ア 被評価者自ら目標(案)を提示することが困難である場合には、評価者から目標(案)を提示し、両者で十分に認識を共有した上で目標を設定すること。 イ 人事評価記録書に被評価者自身が目標を記入することの負担が大きい場合には、評価者が当該被評価者と認識を共有した内容について、評価者が人事評価記録書に記載すること。 ※ 採用や異動があって間もない場合など、達成水準の見込みが不明なため、期首に具体的な目標を設定することが難しい場合には、以下のような対応も考えられます。 ア 期首には職務遂行に当たっての重点事項や特に留意すべき事項等を明示するにとどめ、期中に達成水準の見込みが明らかになった段階で、具体的な目標設定を行うこと。 イ 期首には抽象度の高い目標を設定するにとどめ、期末に当期の職務遂行状況を振り返り、結果的にどのような実績を挙げたのか、振り返り型の評価を行うこと。 A 面談 ア 被評価者が職務を遂行するに当たり直面する問題を早期に解決するため、期首・期末の面談に加え、必要に応じ期中においても定期又は不定期に面談を実施し、指導・助言等を行うこと。また、必要に応じ期首に設定した目標の変更・追加を行うこと。 イ 面談の実施に際し、評価者と被評価者の意見交換等が円滑に行われるようにするため、被評価者が希望する場合又は評価者が必要と認め、被評価者が同意した場合には、就労支援機関の担当者(以下「支援機関担当者」という。)若しくは障害のある職員の勤務に当たって個別的なサポートを行う者として採用又は職員の中から選任された者(以下本節3において「支援者」という。)の同席を認めること。 B 自己申告 人事評価記録書に被評価者自身が自己申告を記入することの負担が大きい場合には、評価者、支援機関担当者又は支援者が当該被評価者との十分なコミュニケーションを通じて申告内容を聞き取り、人事評価記録書に記載すること。   C 評価結果の開示 開示に当たっては、必要に応じ健康管理医の助言等を踏まえ、評語の伝え方や指導・助言の内容について十分な配慮を行うこと。また、開示を行う際、必要に応じ、被評価者の同意を得て支援機関担当者又は支援者を同席させること。   (2)目標設定・評価に当たっての留意点 人事評価は、係長、係員などの職位ごとに定められた客観的な評価基準に照らし発揮した能力を評価する「能力評価」と、面談等の所定の手続を経て設定された目標に照らして挙げた業績を評価する「業績評価」から構成されています。「能力評価」、「業績評価」ともに、卓越して優秀、非常に優秀、優良、良好、やや不十分、不十分の6段階の評語を付与することとされています。 採用試験や選考、昇任を経て官職を占める職員は、その官職の属する職制上の段階の標準的な官職に求められる標準職務遂行能力(注)及びその官職についての適性を有すると認められた者です。障害のある職員は、当該職員が属する職制上の段階の標準的な官職に求められる標準職務遂行能力を全体としては有しているとして採用・昇任が行われるものの、その障害の種類及び程度により、標準職務遂行能力の一部の発揮が困難な場合もあることが想定されます。そのため、障害のある職員については、障害の種類や程度を考慮して職務の選定を行うことはもとより、業績評価に係る目標設定や評価に際し、引き続き必要に応じ、人事評価制度の枠内で一定の配慮を行う必要があります。 (注)職制上の段階の標準的な官職の職務を遂行する上で発揮することが求められる能力(国家公務員法第34条第1項第5号、標準職務遂行能力について(平成21年3月6日内閣総理大臣決定))   @ 業績評価 障害により、標準職務遂行能力の一部の発揮が困難な場合は、他の能力により達成可能かつ職位にふさわしい目標を設定します。当該目標を達成した場合には良好以上の評価が付される可能性もあります。 例えば、本省内部部局等の係員級の職員について、障害があることにより、標準職務遂行能力のうち「コミュニケーション」の能力を発揮することが困難である場合には、「コミュニケーション」以外の能力(「知識・技術」や「業務遂行」など)の発揮が主に期待される業務を割り振った上で、その能力・業務に主眼を置いた目標を、評価者と被評価者である当該職員とで共有した上で設定することが考えられます。そのような目標を達成し、期待どおりの成果や貢献等であった場合には、良好の評語が付与されます。   A 能力評価 障害により、特定の評価項目又は特定の評価項目のうち特定の着眼点に記載された要素について、能力の発揮が困難である場合には、当該能力(当該評価項目又は着眼点に記載された要素)に頼らずとも遂行できる業務を与えた上で、能力評価を行うに当たっては、当該能力の発揮が実際にはどれだけ期待される業務であったかも勘案しつつ、当該職員が実際に発揮した能力について、各評価項目の評価を行うことになります。 例えば、本省内部部局の係員級職員について、障害があることにより、評価項目のうち「コミュニケーション」の着眼点の一つである「情報の伝達」に関する能力の発揮が困難である場合には、「情報の伝達」が不十分でも遂行できる業務を与えた上で、能力評価を行うに当たっては、実際にどの程度の「情報の伝達」に関する能力の発揮が求められていたかや、「コミュニケーション」に係る「情報の伝達」以外の着眼点(「指示・指導の理解」、「誠実な対応」、「上司への報告」)に関する能力の発揮状況、さらに他の評価項目に関する能力の発揮状況を勘案して、全体評語を付すことになります。 その際、「情報の伝達」に関する能力を実際に発揮する機会があり、仮にその発揮状況が当該職位に求められる能力と比較して十分でなかったのであれば、「情報の伝達」については物足りないと判断せざるを得ませんが、その機会が全くなかったのであれば、「コミュニケーション」の評価に当たり、「情報の伝達」に関する能力については考慮せず、「情報の伝達」以外の着眼点に関する能力の発揮状況に基づいて「コミュニケーション」に関する評価を行うこととなります。なお、評価項目のうち「コミュニケーション」にやや不十分以下の評価が付いた場合であっても、そもそもの業務の遂行に当たり、他の評価項目に比べ、「コミュニケーション」に関する能力の発揮が求められていなかった場合には、他の評価項目の能力発揮状況によっては、全体評語が良好以上となることも想定し得るところです。 <評価項目及び行動・着眼点(例)(本省内部部局等 係員の場合)(抜粋)> コミュニケーション 上司・同僚等と円滑かつ適切なコミュニケーションをとる。 @指示・指導の理解 上司や周囲の指示・指導を正しく理解する。 A情報の伝達 情報を正確に伝達する。 B誠実な対応 相手に対し誠実な対応をする。 C上司への報告 問題が生じたときには速やかに上司に報告をする。 p59 第2節 障害のある職員の作業環境の整備 1 支援機器の導入 障害のある職員の作業環境を整備し、働きやすい職場環境をつくるために、各種支援機器を導入することが必要な場合があります。また、ソフトウェアの活用により、作業環境が大幅に改善される場合もありますが、保守、セキュリティ等の理由から、導入に当たって調整が必要となる場合もありますので、関係部局とも相談してください。 以下に障害種別ごとに想定される支援機器について記載しています。ただし、たとえ同じ障害でも、障害の程度やスキルによって必要な機器が異なることもありますので、一律に考えず、採用されている(採用される予定の)障害のある職員と相談しながら、どのような機器がどの程度必要かを適切に把握し導入してください。 機器の導入により、作業効率が良くなり生産性が大幅に上がることも期待できますので、積極的に活用しましょう。 ※ 一部の支援機器の画像を掲載していますが、最新の機種ではない場合があります。最新機種の画像は、次のホームページで確認することができます。「支援機器を探す」から検索してください。 ・就労支援機器のページ|高齢・障害・求職者雇用支援機構 https://www.kiki.jeed.go.jp/index.html (なお、「就労支援機器貸し出し」については利用できませんので御留意ください。)   (1)身体障害者について @ 視覚障害者 視覚障害者が職場で主に使用する機器には、印刷物や写真などを拡大したり背景と文字色のコントラストを高くしたりする拡大読書器、パソコン画面の情報を点字情報に変換して表示する点字ディスプレイなどがあります。ソフトウェアでは、パソコン画面の情報を音声で読み上げる画面読み上げソフト、パソコン画面の情報を拡大する画面拡大ソフト、スキャナで印刷物や写真などを読み込ませて文字情報を音声で読み上げたり、拡大読書器と同じように文字を拡大したりするなどの機能を併せ持つ活字音訳・拡大読書ソフトなどがあります。なお、読み上げソフトに対応できるよう、文字情報はテキストデータで提供することが重要です(PDFデータでは正確に内容を把握できないため)。 この他にも、様々な機器等が開発されており、障害の状態及び従事する職務に応じてこれらを選択し、組み合わせて使うことができます。 例えば、以下の支援機器やソフトウェアを活用することができます。 ・画面読み上げソフト(スクリーンリーダー): パソコンの画面情報やワープロ・表計算、PDFなどオフィスで使用されるアプリケーションソフトの画面情報を音声で読み上げるソフトウェアです。   ・画面拡大ソフト: パソコンの画面を拡大したり、色を反転させて表示したりするなどの機能を持つソフトウェアです。市販のパソコンモニタでは見えづらい場合に使用します。   ・活字音訳・拡大読書ソフト: スキャナで読み込ませた印刷物などの文字情報を画面読み上げソフトと一緒に使うことで、音声で読み上げるソフトウェアです。また、スキャナで読み込ませた印刷物や写真などを拡大読書器と同じように拡大したり、色を反転させたりする機能もあります。   ・視覚障害者向けワープロソフト: 画面読み上げソフトと一緒に使うことで、全ての操作を音声でガイドし、視覚障害者が文書作成しやすいよう配慮されたワープロソフトです。文字の拡大表示もできます。   ・視覚障害者向け宛名書き住所録ソフト: 画面読み上げソフトと一緒に使うことで、視覚障害者が、はがきや封筒の宛名書き、名簿や住所録のデータ管理を行えるよう配慮されたソフトウェアです。   ・音声メールソフト: 画面読み上げソフトと一緒に使うことで、全ての操作を音声でガイドし、メールの作成や送受信を安全かつ簡単に行えるソフトウェアです。文字を拡大表示することもできます。   ・音声ブラウザソフト: 画面読み上げソフトと一緒に使うことで、インターネットのウェブサイトを音声で読み上げるソフトウェアです。前後の見出しタグにジャンプしたりする機能を持ち、素早く自分の知りたい情報にたどり着くことができます。文字の拡大表示機能やコントラスト変更機能がついているものもあります。   ・点字読み取り・読み上げソフト: 点字プリンタで印刷された点字印刷物をスキャナで読み取り、画面読み上げソフトと一緒に使うことで、音声で読み上げることができるソフトウェアです。   ・スケジュール管理支援ソフト: 仕事のスケジュール登録や予定確認などが簡単に行え、画面読み上げソフトと一緒に使うことによって、読み上げてくれるソフトウェアです。 ・インターネット辞書検索ソフト: インターネットや電子ブック、CDなどで提供されている辞書を簡単に検索できるソフトウェアです。画面読み上げソフトと一緒に使うことによって、パソコン画面情報を読み上げることもできます。   ・インターネットニュース検索ソフト: ニュースを掲載するホームページを簡単に検索し、画面読み上げソフトと一緒に使うことによって、操作を音声でガイドしたりニュースを読み上げたりしてくれるソフトウェアです。   ・名刺管理ソフト: 名刺を小型専用スキャナで読み取り、データベース化してデータを活用できるソフトウェアです。宛名書きソフトにも対応しています。画面読み上げソフトと一緒に使うことによって、操作を音声でガイドしたり読み上げたりしてくれます。   ・自動点訳・点訳支援ソフト: テキストファイル、ワープロソフトで書かれた文章、HTMLファイルやPDFファイルのテキスト部分を自動的に点字のデータに変換し、点字を知らない人でも日本語や英語の点訳ができるソフトウェアです。   ・点字ディスプレイ: パソコン画面の情報を点字情報に変換して表示する機器です。画面読み上げソフトと一緒に使うことによって、文書の読み書きができます。スケジュール帳機能なども内蔵しており、単体でも利用することができます。   ・点図ディスプレイ: パソコンの画面情報を点図の形でリアルタイムに表示する機器です。文書のレイアウトや図表など点字や音声の情報だけでは難しかった図形情報がピンディスプレイに表示されるので、触ることで情報を得ることができます。 ・卓上型カラー拡大読書器: 印刷物や写真などをカメラで読み取り、拡大したり、背景と文字色のコントラストを高くしたりする機能を持つ、据え置き型の文字拡大装置です。一般的に「拡大読書器」と言われるものは、このタイプです。オートフォーカスでのピント調整機能、白黒反転機能、ネガポジ反転機能の付属が主流です。さらに、ライン機能やマスク機能等、より便利な機能を有している機種もあります。 支援機器の写真あり ・携帯型カラー拡大読書器: 印刷物や写真などをカメラで読み取り、拡大したり、背景と文字色のコントラストを高くしたりする機能を持つ、持ち運びに便利な携帯型の文字拡大装置です。モニタと一体型で、バッテリ式で約2時間程度の使用が可能です。市販のテレビに接続できる機種もあります。出張や会議の多い人、複数の場所で仕事をする場合に便利です。 支援機器の写真あり   ・パソコン接続型カラー拡大読書器: パソコンモニタに接続して、パソコンモニタ上で印刷物や写真などを拡大したり、背景と文字色のコントラストを高くして写し出したりする文字拡大装置です。パソコンモニタと拡大読書器画面を切替えて写し出すだけでなく、分割して両方に写し出す機能をもつ機種もあります。省スペースなので作業スペースが限られている場合などに便利です。   支援機器の写真あり ・音声・拡大読書器: スキャナで読み取った印刷物の文字情報を音声で読み上げることができる機器です。モニタと接続することで拡大読書器としても使えます。会議での配布物や本、冊子なども読み上げることができるので、視覚障害のある職員との情報共有に便利です。 ・録音再生機: 会議や講義の内容を録音したり、DAISY(デイジー)(注)図書などのCD・SDカードを再生したりできる機器です。キーを使って聞きたい項目へ移動できるなど、便利な検索機能もあります。CD1枚に最大約90時間も録音することができたり、録音した音声ファイルを編集できたりするものもあります。 (注)DAISY(デイジー)とは、国際標準規格のデジタル図書録音システムで、「Digital Accessible Information SYstem」の略称です。DAISY図書には、頭出しに必要な目次の検索情報が記録されているので、目的の部分を検索して快適に聞くことができます。一般図書だけでなく、専門図書、教科書、洋書もあります。   ・受付業務支援ソフト: 視覚障害者の電話受付業務を支援するソフトウェアです。画面読み上げソフトと一緒に使うことによってパソコンの画面情報を読み上げることができます。見積り、注文、伝言などの様々な受付業務に対応しており、エクセル等を利用して、社内でデータ共有もできます。   ・音声データ作成ソフト: 読み上げソフトと一緒に使うことによって、テキストファイルや点字ファイルを音声データに変換できるソフトウェアです。読み上げの音声(SAPI)を選ぶことができます。変換した音声データは音楽プレイヤーに転送できるため、デスクを離れても、報告書などの内容を音声で確認することができます。 A 聴覚・言語障害者 聴覚・言語障害者が職場で使用する機器として、主にコミュニケーションを支援する機器があります。例えば、電話でのコミュニケーションを支援する電話関連機器、テレコイル対応の補聴器などに音声を磁気誘導によって伝達する磁気ループシステム、会議室などで音声を拡大して聴き取りを支援する会議用拡聴器、筆談をサポートする筆談支援機器、声を文字にしてパソコンの画面に表示する音声認識ソフトウェア、パソコン上の文書ファイルを音声として読み上げる文章音声化コミュニケーション支援ソフトなどが挙げられます。 また、離れた場所でも、業務上の連絡事項や緊急時の連絡などを、光信号やバイブレーションなどで知らせるための屋内信号装置、電子メールの着信を光でお知らせしてくれるメール着信通知装置もあります。 伝音性難聴(中耳の鼓膜や耳小骨などの伝音器官の損傷による難聴)の場合は、音声を拡大する機器を使用したり骨伝導など別の経路で伝えたりすることで原音のとおりに聴き取ることができる場合が多いです。一方、感音性難聴(内耳から聴神経に至る感音器官の損傷による難聴)の場合は、音を大きくしても聴こえなかったり、ひずみが出て原音のとおりには聴こえなかったりするため、電話関連機器や会議用拡聴器が適合しないことが多く、その場合は筆談支援機器や電子データ(メールなど)でのやり取りなど視覚経路のコミュニケーション手段を併用することが不可欠です。 なお、支援機器の活用だけでなく、聴覚障害者の座席を固定する場合は職員の動きや電光掲示板(窓口の案内版)が見やすい視覚的に全体が見回せる席、補聴器を装用し聞こえる席(右耳が聞きやすいため左端の座席を希望するなど)にするなど位置の配慮が必要です。 ・電話関連機器: 電話の受話音量の増幅により、相手の声を聞き取りやすくするための機器です。受話器に取り付けるタイプや電話機本体に接続するタイプ、受話器ごと交換するタイプなどがあります。また、骨伝導によるものは携帯電話用の機種もあります。   ・磁気ループシステム: テレコイル対応の補聴器などに音声を磁気誘導によって伝達し、増幅して聴くことができます。周囲の雑音を抑え、高音質を保つことができます。   ・屋内信号装置: 離れた場所にいても、業務上の連絡事項や緊急時の連絡などの必要情報を送信機から無線を使って発信し、光信号又はバイブレーション機能を持つ受信機に知らせることができる機器です。同じ内容のメッセージを一斉に同時送信したり、一人一人別々に送信したりすることもできます。 ・筆談支援機器: 繰り返し使用できる筆談ボードです。磁気式のものや暗い場所で発光するもの、ホワイトボード式のもの、電子式のものがあります。筆談による意思疎通だけでなく、メモや簡単な連絡事項を書いてメッセージボードとして使用したり、周囲とのコミュニケーションに活用したりできます。 支援機器の写真あり  ・音声認識ソフト: マイクで話すことにより、音声による文字入力やアプリケーションの操作ができるソフトウェアです。会議や朝礼、作業指示の際など、筆談や手話を使わなくても必要な事項を伝えることができます。   ・モバイルメッセンジャー: 主にモバイル端末を活用して、リアルタイムに文字や動画でのやり取りが可能なサービスやアプリの総称です。この中には、LINEやSkypeのほか、UDトーク(音声を文字化するアプリケーション)などが含まれます。個人の使用であれば、無料で活用することができ、携帯アプリのため、個人の携帯電話に導入することで業務以外の会話などにも活用できます。 ・電話リレーサービス 聴覚障害者と聴者を、電話リレーサービスセンターにいる通訳オペレーターが“手話や文字”と“音声”を通訳することにより、電話で即時双方向につなぐサービスです。利用に当たっては、事前に利用者登録を行うことが必要です。   ・文章音声化コミュニケーション支援ソフト: パソコン上の様々な文章を音声で読み上げるソフトウェアです。あらかじめ文字・文書を登録しておけば、会話にスムーズに加わることができるなど、発語に障害のある職員のコミュニケーションをサポートします。   B 上肢障害者 上肢障害者が職場で使用する機器として、主にパソコン操作を支援する機器があります。例えば、声でパソコンに指示して操作や入力作業が行える音声認識ソフト、市販のキーボードとマウスの代わりとしてキーボード操作とマウス操作の両方が行えるキーボード・マウス補助具、キーボード操作を支援するキーボード補助具、マウス操作を支援するマウス補助具などがあります。 他にも、市販のキーボードの上に、穴のあいた透明のアクリルカバーのキーガードをかぶせて操作したり、パソコン画面上にキーボードを表示して入力などができたりするスクリーンキーボード、パソコンを使いやすくするための肢体不自由者向けパソコン周辺機器などもあります。 また、受話器を使用しなくても電話の発信・受信ができるハンズフリー電話器、書類などをすべらないように確実に固定するデスクシートなどがあります。 例えば、以下の支援機器やソフトウェアを活用することができます。   ・音声認識ソフト: 声でパソコンに指示して、様々なアプリケーションソフトの操作や音声による文章入力ができるソフトウェアです。キーボード入力に時間がかかる場合でも、効率的に作業を進めることができます。   ・キーボード補助具: 市販のキーボードが使いにくい場合に、キーを大きくしたり、50音配列にして文字を探しやすくしたり、入力しやすいように文字配列を自由に変更したりすることのできるキーボード補助具です。また、使う人の状態に合わせて、入力時間を長く設定したり、一定の時間以上キーを押し続けないと入力できないよう設定したりできるものや、足で入力できるよう十分な強度で設計されているものもあります。 支援機器の写真あり   ・マウス補助具: 市販のマウスが使いづらい場合にマウス機能を代替する補助具です。マウスをしっかり握らなくてもわずかな力でマウスを目的の場所まで動かすことができるタイプ、ジョイスティックタイプやトラックボールタイプ、スイッチを押すことでマウス操作ができるタイプのものがあります。ボタン一つでマウスポインタの移動や左右クリックの通常操作のほか、ダブルクリックやドラッグなどの操作ができる機能を持つものもあります。 ・肢体不自由者向けパソコン周辺機器: パソコンを楽な姿勢で操作できるよう傾斜をつけた台などのパソコン周辺機器があります。 支援機器の写真あり ・ハンズフリー電話器: 離れた場所から発信・受信ができるスピーカーホンです。受話器の上げ下げをしなくても、ボタン一つで操作できます。マイク付きヘッドセット、エアスイッチなどを用いて操作できます。   ・デスクシート: 書類などを片手でも確実に固定することができるゴム製のシートです。   C 下肢障害者 下肢障害者が職場で使用する機器として、オフィス用三次元電動車椅子があります。就労支援機器よりも通勤や職場内の設備への配慮が主となりますが、机の高さの調節や上下昇降する電動車椅子を使用することで、疲労感が軽減され、作業効率が高まります。   ・オフィス用三次元電動車椅子: オフィス内の狭い場所でもその場で360度回転できる機能や人が立っている位置まで上下昇降する機能を持つ電動車椅子です。車椅子使用者にとっては、上下昇降することで高い位置にあるものを人にお願いしなくても自分で取り出せるようになるなど、自分でできる範囲が広がります。 ・机: 上下昇降する作業机です。電動で上下昇降するものもあります。作業する人に合わせて高さを調節できるので、疲労感が軽減され、作業能率も向上します。 支援機器の写真あり   (2)知的障害者について 知的障害者が職場で使用する機器として、1日の作業スケジュールを自己管理できるよう支援するための作業スケジュール管理支援機器、残り時間を視覚的に分かりやすくするタイマーがあります。   ・作業スケジュール管理支援機器: 次の行動が理解できる絵や写真や文字などを貼り付けたカードをワンタッチでセットし、カードに組み込んだ120分以内のタイマー機能を組み合わせて使うことにより、知的障害者が自分自身で作業の見通しを立て、1日の行動ができるようにすることを支援する機器です。   ・タイマー: 誰が見ても分かりやすい60分タイマーで、残り時間が円盤で表示されています。円盤部分が時間の経過とともに減っていき、時計を理解することが難しい方も、目で見て残り時間が分かります。 支援機器の写真あり   (3)精神障害者について 精神障害者については、特別な支援機器を必要とする場合はほぼありません。業務の優先順位や作業手順を分かりやすく示したマニュアル等を示すことで、安心して業務に取り組むことができる場合があるため、本人と相談しながら、必要に応じて作業手順書の作成等を行いましょう。 (4)発達障害者について 発達障害者についても、業務指示やスケジュールを明確にし、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うことで、安心して業務に取り組むことができる場合があります。また、感覚過敏がある場合、サングラスの着用や耳栓の使用などにより、緩和することができますので、本人と相談しながら導入を検討してみてください。   ・ついたて: 視覚的な刺激を軽減する器具です。ついたてを用いると、周囲の人の視線や動きなどが気にならず、作業に集中できる環境を作ることができます。   ・イヤーマフ: 騒音の発生する作業環境で用いるヘッドフォン型の防音器具ですが、聴覚過敏への対処のためにも活用できます。一般的な量販店で見かけることは少ないですが、インターネットやカタログショッピングで手に入れることができます。   ・ノイズキャンセリングヘッドフォン: 一般的なヘッドフォンと異なり、機械の動作音や電車内の環境音のような定常的な周波の音を機械的に打ち消す機能があり、聴覚過敏への対処にも活用できます。家電量販店やインターネットの販売サイトで数千円から数万円の価格のものが数種類販売されています。   ・タイマー: 知的障害者の場合は、時計を理解することが難しいためタイマーを活用していますが、発達障害者の場合は時間の感覚をつかむことが難しい場合があるため活用します。 キッチンタイマーや携帯電話、腕時計などのタイマー機能を使うことで、時間の経過や指定した時間までの残り時間を知ることができます。また、時間の経過や残量の感覚を持つことが難しい方の場合は、時間の経過や残り時間を量として視覚的に示してくれる製品が役立ちます。また、タイマーを使うことで、「この時間までは頑張ろう」と注意力の維持につながる場合もあります。   ・リマインダー: 覚えておきたいことや予定をあらかじめ登録しておくことで、予定の時間が近づいた際に音・光・文章や電子メールなどでそれらを通知してくれる機能を使って、予定忘れや物忘れへ対処することが可能です。   2 施設・設備の改善 施設・設備の改善は、障害の程度の重い肢体不自由者、車椅子使用者、視覚障害者などの障害のある職員が能力を発揮できる環境を作るために有効です。 職場の設備に関して配慮すべき点は、障害の種類によって、また個々人の障害の状態や体格などによっても異なるため、一概に述べるのは難しい面はありますが、最低限改善すべき点としては、以下のようなものが挙げられます。   ・ 外部から建物の中に入るまでに、段差などの障壁がないこと。 ・ 建物の中で、就労のために必要な部屋(職員食堂等の厚生施設を含む。)には全て出入りでき、かつ、通路などにも障壁がないこと。 ・ トイレが障害のある職員にも使用できるものであること。 なお、施設・設備の改善を実施する場合には、具体的にどのような改善を行ったらよいのか、あらかじめその職場にいる障害のある職員の意見を聴くようにしましょう。また、費用がかかることもありますので、関係部局とも相談しながら進めましょう。 直ちに改善できない場合には、例えば、障害のある職員が段差のある所を移動する際に、他の職員が付き添って補助をする等の対応も検討しましょう。 また、大幅な改善をしなくても、例えば、職員が協力し合って、車椅子使用者や視覚障害のある職員などが通りやすいようにしたり、パソコンのプリンタの位置を車椅子使用者にも使いやすい高さにしたりするなど、少しの工夫で障害のある職員に配慮した職場にすることは可能です。さらに、コピー機やシュレッダー等に、利用手順や注意事項について、写真や絵などを使い視覚的に分かりやすい形で掲示するなどの工夫が、知的障害のある職員にとっては助けとなることもあります。 これらの事項については、合理的配慮として求められる可能性もあります。実際の合理的配慮の提供は本人と相談の上となりますが、厚生労働省作成の民間企業及び公的機関の合理的配慮事例集には、以下のような合理的配慮の事例が掲載されていますので、参考にしてください。また、人事院作成の国の行政機関における障害者である職員等への合理的配慮の事例集(資料編(4))も併せて参考にしてください。 (参考)施設・設備等に関する障害別の合理的配慮事例 身体障害 視覚障害 ・職場内の机等の配置・危険箇所を事前に確認する。 ・移動の支障となるものを通路に置かない、机の配置や打合せ場所を工夫する等により職場内での移動の負担を軽減する。 ・動線に点字ブロックを設置し、点字ブロックがない箇所は職員がフォローする。 ・異動先は公共交通機関を利用して通勤可能な部署としている。 聴覚障害 ・危険箇所や危険の発生等を視覚で確認できるようにする。 ・会議の際、口話ができる方であれば、話者の口元がわかる席に配置する。 肢体不自由 ・移動の支障となるものを通路に置かない、机の配置や打合せ場所を工夫する等により職場内での移動の負担を軽減する。 ・机の高さを調節すること等作業を可能にする工夫を行う。 ・スロープ、手すり等を設置する。 ・車椅子でも出入りしやすくするため、一階の入口近くのロッカーを使用している。 ・車椅子に着座しても取り出せる棚に使用する書類等を保管する。 ・本来職員の駐車場は庁舎から離れたスペースにあるが、来庁者用の障害者用駐車場スペースへ通勤用車の駐車を認めた。 ・自動車通勤をしている下肢に障害がある職員に、建物から一番近い駐車場を確保し、移動の負担を軽減する。 内部障害 ・心臓ペースメーカーを装着しているため、作業場所は常に電子機器から離れた所としている。 ・社員の使用が禁止されているエレベーターの使用を特別に許可している。 ・水分摂取量に制限があるため、夏は室内作業に特化させている。 ・体温調整が難しいため、扇風機やスポットクーラーを作業場に設置している。 ・温度・湿度が高くなると発作が誘発されるため、1年を通じて作業室の温度を20度に設定した上で、季節に応じて扇風機、加湿器、除湿器等を利用している。 ・透析が行える専用スペースを確保し、勤務時間中に行えるようにしている。 知的障害 ・作業手順や使用する器具、就業場所等について、図や写真等を活用した業務マニュアルを作成している。 ・数の扱いが苦手なため、計量に際して許容できる誤差の範囲を予め計量器のそばに掲示したり、規定の個数や量以上に入らないケースを使用したりしている。 ・清掃場所を色別に分けた上で、使用する道具も清掃場所と同じ色に分けている。 ・ホワイトボードを活用して、その日の業務内容、担当者、進捗状況などが一目で分かるようにしている。 精神障害 ・業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する等の対応を行う。 ・必要に応じて休憩できるよう別室に休憩所を設置する。 発達障害 ・業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行う。 ・人の声や音が苦痛との申出があったため、机から離れた作業スペースでの作業を認め、また、異動に際しては、比較的少人数で人の出入りの少ない職場に配属した。 ・大勢がいる空間で過ごすことが苦手なため、昼食時は一人でゆっくり休めるように、会議室等の利用を認めている。 難病 ・職務上、立ち仕事が多いが、空いている時間など可能な限り椅子に座って休んでもらう。 ・難病(進行性筋ジストロフィー)により電話を取ることが困難なため、電話をイヤホンマイク付き携帯電話に変更した。 ・難病(網膜色素変性症)により視野狭窄があるため、足下に物を置かないこと、床の色分け、声かけ等の配慮を行っている。 高次脳機能障害 ・仕事内容をメモにする、一つずつ業務指示を行う、写真や図を多用して作業手順を示す等の対応を行う。 ※出典:「合理的配慮指針事例集 第四版」(令和4年 厚生労働省)、「公的機関における障害者への合理的配慮事例集 第六版(地方公共団体等)」(令和4年 厚生労働省) p73 第6章 障害のある職員の募集・採用等   第1節 職務の選定 障害のある職員の従事する業務については、障害特性のみならず、その方のスキルや希望など、一人一人の状況に応じて決めることが大切です。 まず、「障害のある人に向いている仕事」、「障害のある人に向いていない仕事」というものはないと考えた方が良いでしょう。各障害の特性により不向きな仕事もありますが、障害の種類や程度だけで決めるのではなく、一人一人の障害状況に加え、スキルの習得状況、本人の希望・意欲などから総合して決めていくことが良いでしょう。 個々の障害特性を考慮することは重要ですが、障害状況は一人一人異なります。一人一人に応じた合理的配慮を実施することで、その能力を生かして十分に活躍できたり、職場環境の改善や支援機器の導入、適切な教育訓練により、障害特性上、不向きだと言われていた職種に従事できたりする障害のある人も数多くいます。   1 職務選定の考え方 職務を選定する際には、まず、障害の種類・程度や特性は個人ごとに様々であり、それぞれに応じた適切な合理的配慮を行えば高い能力を発揮して活躍することができるという前提を踏まえることが大切です。 障害のある職員だから職務遂行上の制約が大きいだろうという先入観・固定観念のもとで、単純・単調・軽易な仕事を割り当てるという発想は適当ではありません。単純・単調・軽易な仕事を誤りなく粘り強く処理することが得意であるという特性をもつ障害のある人もおり、そのような障害のある人にとってはそのような仕事に適性があると言えますが、一方で、そのような仕事を続けると、飽きがきてやりがいを持てなくなる場合もあります。 また障害者雇用は、様々な障害のある人がその障害の特性に応じて能力を発揮し、共生していける社会を作り出すことが目的であるため、福祉的な観点からではなく、組織にとって、また周囲の職員にとって、障害のある職員の仕事内容が一定の役割を果たし、やってもらって助かった、ありがたいと評価されるような仕事をしてもらうことが重要です。 障害のある人であって、高い職務遂行力を持つ方も多くいます。また高い潜在的な能力を持ちながら、通常ではそれを発揮できないものの、一定の合理的配慮を講じれば、十分に活躍できる方もいます。さらには、障害のある人だからこそできる能力もあります。 このため、障害のある職員のための職務の選定に当たっては、障害のある職員の個々の能力・適性・特性を十分に把握し、何ができるのかを丁寧に把握することがまず第一歩になります。その際、周囲の職員側からどんな合理的配慮を行えば本人の能力を引き出し活躍することができるかという視点を持つ必要があり、個別に障害のある職員との間でコミュニケーションを図ることによって、本人に従事してもらう職務とそれに必要な合理的配慮を検討していくことが重要です。 障害のある職員が担当する業務を選定するに当たっては、このようなことを基本的視点として持ちつつ、例えば次のような考え方によって行うことが考えられます。 @ 既に現在障害のある職員が従事していて、職場定着率や職務満足度が高い職務を洗い出す。 A 現在処理しきれていない業務の中で、想定する障害のある職員(労働市場の状況から採用可能性のある障害のある職員をイメージするという方法もある。)に担当してもらえると組織として成果の上がる業務を探す。 B 想定する障害のある職員が能力を発揮できる業務を選定できるよう、業務全体の処理方法を再構築する。 C 想定する障害のある職員が能力を発揮できる業務を、既存の業務の中から選定し(複数種類でもよい。)、1つの業務としてまとめる。   2 職務選定の方法 実際の職務を選定する方法は、いくつかあります。まずは、これらの方法を参考に、職務を選定してみましょう。   (1)類似の職場・職務における事例を参考にする まず、障害のある職員を配置する職場に似た職場等において既に実施されている職務内容を参考にする方法があります。 公務部門に共通して創出できそうな作業としては、以下の業務が想定されますが、それぞれの職場や想定する障害のある職員の特性に合わせて検討していく必要があります。   @ 政策立案業務 事業の創設・改善、研究会等の運営、法令改正等に関する障害のある人の立場からの参画 A 広報関係業務 ホームページの更新・公開、広報関係資料の作成等 B 情報公開・個人情報保護関係業務 情報公開請求書の受付・受理、審査業務の進捗管理、担当部署への回付、担当部署の判断に基づくマスキング業務等 C 審査関係処理業務 各種申請書・届出書等の受付・受理、申請処理台帳への登録、申請書・届出書等の確認項目に関する形式審査、申請者等への審査結果の回付等 D 議事録作成業務 審議会や研究会等の議事録作成等 E 庶務関係業務(個別的指示を受けずに処理する業務) 出勤簿管理、旅費・謝金等の支払い業務、出張手配、配車の管理、スケジュール管理、共済関係事務等 F 庶務関係補助業務(個別的指示を受けて処理する業務) 各種資料のコピー、ファイリング、文書管理・書類整理、会議会場設営 G 資料作成業務等 会議資料等の大量コピー・編纂、軽印刷、宛名ラベル印刷、資料のスキャニング等 H 入力・集計業務 業務統計等の定型的なデータのシステム・パソコンへの入力業務、集計業務 I 軽作業 郵便物集配、書類の仕分け・配布、資料コピー、個人情報等のシュレッダー作業、清掃等   (2)各部署に対してアンケート調査を実施する 職務の集め方として、アンケート調査を実施する方法があります。職員全員に対してアンケート調査を行ってみると、職員の多くが本来業務とは別に実施している定型的な業務があることが分かり、障害のある職員の新たな職務を創出することができるかもしれません。 <職員に対するアンケートの例>  職員の皆様が行っている業務の中で、専門的知識や技術を必要としない業務の状況について、アンケート調査を行うこととしましたので、ご協力をお願いします。  作業名  内容・手順  難易度 難・普・易  頻度  時間帯  時間  (3)現在の担当職員からヒアリングする 職務を選定するには、現在の職務を洗い出し、内容を再確認してみることが有効です。現在の担当職員からヒアリング等を行い、職務の再確認を行ってみましょう。 例えば、下記のような整理票を作成し、職務の内容や要求されるスキルなどを整理することも有効です。 <職務選定にかかる整理票>  作業名 段ボール解体  作業内容(工程等) 発砲スチロールと分別する  要件1(身体負担) やや大  要件2(理解・判断) 不要  要件3(コミュニケーション) 不要  要件4(資格・スキル) 不要  時間頻度 随時  施設設備  適否 適  作業名 数値入力  作業内容(工程等) エクセルに入力  要件1(身体負担) 小  要件2(理解・判断) 必要  要件3(コミュニケーション) 必要  要件4(資格・スキル) PC操作  時間頻度 随時  施設設備  適否 否  3 職務の集中化による再構築 障害のある職員が従事する職務を選定する方法として、職員が行っている定型的な職務を集めて新たな職務として再構築する方法があります。 どの府省でも、コピー・シュレッダー業務、府省内郵便物の仕分け、資料のセット・封入など、作業方法が決まっている業務があります。これらの業務は、複数の職員に分散して組み込まれていると考えられますが、これらを集約し、新たな職務として再構築することで、障害のある職員の業務を創出することができます。 庁舎内に、各部署からの依頼によってこれらの業務を集中して処理をする作業室を設置し、それを特定の部署の管理下において、全体を指導管理する職員のもとで職務を管理していく方法です。 職務内容自体は、単純業務に近いので、長い期間従事すると飽きがきたり誤りが増えたりするという面があることを踏まえる必要があり、別途人事ローテーション、職業能力開発、キャリアアップの工夫などの検討も必要ですが、公的部門の中で業務処理能力が未開発である障害のある職員にとっては働きやすい職場であること、職場側も合理的配慮や様々な支援も講じやすい面があること、業務を依頼する側の職員にとっても助かり、業務全体としてもスケールメリットによる効率化を図れるという面があることなどから、一部の府省や地方公共団体で取組が始まっている例があります。     <<民間企業における職務の選定事例>>   【金融機関】 ○庫内営業で仕事を受注 障害者雇用担当者は、配属部署である総務人事部を中心に、本部の各部署、関連会社の業務の中から、業務を切り出していきました。まず各部署の業務の中から精神障害者ができそうな業務を全て提示してもらったり、時には担当者がヒアリングして聞き出したりしながら、業務内容をまとめていきました。それらを吟味し、切り出したい仕事を選出することから始めました。 切り出した仕事について、仕事のサイクル(日次・月次・半次・年次・随時・単発など)、仕事の内容、作業時間・期間を確認しました。それを一覧表にして月ごとにまとめてみると、時期によって“隙間”ができる部分がありました。そこで、さらに各部署を訪れたり、所属長である総務人事部長に依頼し、部長会議で仕事の切り出しを各所属長へ要請したりするなどして、隙間を埋める仕事を探しました。 また、職員が誰でも見られる掲示板に、仕事の切り出しの呼びかけを行いました。切り出し状況をチェックして、まだ出ていない部門には自ら足を運び、その部門の人と一緒に切り出しができないか考えました。このようにして出てきたのが、会員の新規加入に関わるパソコンの照会作業、インターネットバンキング契約書への書類セットなど、切り出された業務は約240にものぼりました。   【建設会社】 ○アセスメント※して仕事を割り振り この会社では、精神障害者をアセスメントして、それぞれの得意なこと、得意でないことを把握して、その労働能力に見合った業務を、社内の仕事から切り出していくという方法を取りました。 支援者(注:臨床心理士、企業在籍型ジョブコーチ)は、社内に最初、「定型的判断で、精神障害者が処理できそうな程度の、比較的納期が緩い仕事を出してほしい」という要望を出しましたが、他の従業員たちは、精神障害者がどんな仕事をどの程度できるのかが具体的にイメージできなかったようです。そこで、支援者は、「たまっている仕事、簡単そうな仕事、何でもいいから出してください」と、仕事内容よりも「そのうちにやらねばならないが後回しになっている仕事」を頼みました。そして、その仕事の一部をまずやらせてもらいながら、精神障害者にできる仕事のイメージをすり合わせていきました。 「エクセル表に決まったデータを入力する」という仕事が来たら、入力済みデータを納品するときに、「そもそもこのエクセル表自体を作れます」と伝えます。すると今度は、元データを持ってきて「この部分をこのような表にデータ化してほしい」というオーダーが来ます。そして、それを納品するときに、「この部分の集計やこうした資料も作れます」、「この程度のローデータがあれば、後は判断して入力できます」というように、さらに出来る仕事を具体的に示していきました。 ※アセスメント:精神障害者個々の基本的な状態や能力、業務遂行上の能力や適性などを見極めること。また、業務や作業の特性を分析評価すること。   ○核となる日常業務とその他の仕事を組み合わせ 仕事について、支援者は、それぞれの得手不得手、能力や適性を考えて業務分担をしています。それぞれに核となる日常業務の担当があり、その都度、請け負う仕事も個々の状況に合わせて分担しています。現在、本社人事部には4名の精神障害者がいますが、それぞれのアセスメントの結果から、各人が担当する業務を指示され、責任を持ってやるのが基本です。 核となっている日常業務は、「全社の休日・休暇・欠勤届けの受付・管理」、「健康管理情報のデータ化」、「採用業務補助」、「パンフレット類の発送・在庫管理」、「各種資料作成」などです。核以外の仕事、つまり切り出し対象となっているのは、不定期に単発で請け負う業務や急を要する仕事などです。 会社の障害者雇用の責任者は、「切り出しの際は、核となる業務と不定期の仕事のバランスが重要」と言います。担当者に負担をかけ過ぎずに仕事として充実させるために、担当する業務の質や量、組み合わせが重要になるからです。核となる業務とそうでない仕事の組み合わせもアセスメントから導かれています。 (出典:「精神障害者とともに働く〜厚生労働省モデル事業参加企業の取り組み〜」平成24年3月 厚生労働省) p79 第2節 任用形態 1 常勤職員 常勤職員は、常時勤務を要し、かつ相当の期間任用される職員を就けるべき官職に任用される職員です。常勤職員を採用する方法には、人事院が行う国家公務員採用試験の最終合格者の中から任命権者が採用する方法のほか、任命権者が選考を実施して採用する方法があります。   2 非常勤職員 非常勤職員の種類としては、期間業務職員やその他の非常勤職員があります。   (1)期間業務職員 期間業務職員は、相当の期間任用される職員を就けるべき官職以外の官職である非常勤官職であって、一会計年度内に限って臨時的に置かれるもの(1週間当たりの勤務時間が常勤職員の勤務時間の4分の3を超えるものに限り、定年前再任用短時間勤務、暫定再任用短時間勤務及び任期付短時間勤務の官職を除く。)に就けるために任用される職員です(人事院規則8―12(職員の任免)第4条第13号、人事院規則8―12の運用について(平成21年3月18日人企―532)第4条関係第2項)。   (2)その他の非常勤職員 期間業務職員以外の非常勤職員(以下「短時間非常勤職員」という。)としては、いわゆるパートタイマーや審議会の非常勤の委員等があります。   上記(1)、(2)の非常勤職員の採用の方法は、常勤職員と異なる内容が特例的に定められており、競争試験又は選考ではなく、人事院規則8―12第46条に規定される公募及び能力実証の方法によります(本章第3節2参照)。   3 プレ雇用 プレ雇用は、常勤職員としての採用が内定した障害のある人について、採用後に円滑に勤務を開始できるようにするため、本人の希望に応じ、常勤職員としての採用前に、非常勤職員として勤務できるものです。 プレ雇用に当たっては、以下の事項に留意してください(詳細は資料編(12)参照)。 プレ雇用は、本人の希望に基づき実施するものであることから、常勤職員としての採用が内定した段階で本人の希望を確認してください。 各府省においては、常勤職員としての採用が内定した日から採用日までの日数が限られている場合等プレ雇用の実施が実質的に困難な場合を除き、本人の希望がある場合には、プレ雇用を実施してください。   本人からプレ雇用の希望があった場合においては、「非常勤職員採用予定者に対する勤務条件等の説明について」(平成28年12月14日人事管理運営協議会幹事会申合せ)を踏まえ、勤務条件等の内容を適切かつ明確に説明し、その中で本人の希望も確認の上、決定してください(注1)(注2)。なお、勤務時間については、必ずしもフルタイムとはせず、本人の希望を考慮してください。 (注1)プレ雇用の任期は、常勤職員としての採用が内定した日から採用前日までの間で、本人の希望も確認しつつ、各任命権者の判断において設定することとなります。そのため、設定によっては、常勤職員としての採用が内定した日から一定期間経過した後にプレ雇用を開始する場合や、プレ雇用の任期終了日から常勤職員としての採用日まで間が一定期間空くような場合もあり得ると考えます。 (注2)プレ雇用はあくまで非常勤職員として勤務するものですので、給与や諸手当については非常勤職員と同様に取り扱ってください。 プレ雇用の任期中の業務内容は、採用を予定している常勤官職の職務と類似のものとし、勤務場所については、採用後に業務を実施する場所と同一であることが望ましいため、可能な限りそのように配慮するよう努めてください。 プレ雇用の実施中には、本人との面談等の機会を適時に持つように努める等、本人と十分にコミュニケーションを取る中で、勤務の状況や、円滑に業務を遂行するための希望等を把握し、それに対し配慮するよう努めてください。 常勤職員としての採用が内定した日から採用日までの日数が限られている場合等、プレ雇用の実施が困難な場合においても、本人の希望があれば、職場見学や職場実習を実施する等、可能な限り採用後に常勤職員として円滑に業務を開始できるような取組を行うよう努めてください。 プレ雇用は、国家公務員法第59条に規定する条件付任用とはその趣旨を異にするものであることに十分に留意し、プレ雇用任期中の勤務実績によって常勤職員への採用の内定を取り消す等、不利益な取扱いを行わないでください。   4 ステップアップの枠組み ステップアップの枠組みは、非常勤職員として勤務した後、選考を経て常勤職員となることを可能とするものです。 原則として、非常勤職員として勤務する人が選考を経て常勤職員となるためには、各府省において、人事院規則8―12に基づき広く募集を行うことや筆記試験等の能力実証をすること等が必要です。 しかしながら、障害のある職員が非常勤職員としての勤務を経て常勤職員としての勤務を希望する場合(注1)には、それまで培われた職務能力や勤務環境への適応の状況を考慮した任用となるよう、選考において非常勤職員としての勤務実績等を着実に反映できること等に配慮し、ステップアップの枠組みとして、以下の方法を用いて公募及び能力実証を実施することができます(詳細は資料編(13)参照)。 (注1)ステップアップの枠組みは、非常勤職員として勤務した後、引き続いて常勤職員として勤務することを想定しているものですので、かつて非常勤職員として勤務したことがあり、現在は非常勤職員として勤務していない人は基本的にステップアップの枠組みの対象とはなりません。 (1)公募の手続について 人事院規則8―12第22条では、常勤官職の選考に当たっては、できる限り広く募集を行うこととされていますが、現に非常勤職員として一定期間(注2)勤務する障害のある職員を対象とした常勤官職への任用に係る公募を、各府省内に限って実施できます(注3)。この場合、各府省における募集の範囲については、採用予定の常勤官職の業務や公正な任用の確保等を勘案したものとするよう留意してください。 また、募集の告知においては、募集の対象となる人に対し十分な情報提供がなされるよう留意してください。 (注2)「一定期間」について、対象障害者の能力実証等を適切に行う観点から、半年程度以上の期間を目安として想定していますが、期間については各任命権者において適切に判断されるべきものと考えます。また、任命権者を異にする複数の部署で勤務する場合、複数の所属における勤務期間を通じて「一定期間」と扱っても基本的には差し支えないものと考えますが、ステップアップの枠組みによる任用を実施する際、改めて人事院に御相談ください。 (注3)基本的には、公募の公正性を確保するため、非常勤職員として勤務する障害のある職員に対してなるべく幅広く公募を行う必要があると考えます。本府省のみや、特定の地方支分部局に限って公募を実施することは、採用予定の常勤官職の業務や公正な任用の確保等を勘案したものであれば可能ですが、具体的な方法については、ステップアップの枠組みによる任用を実施する際、改めて人事院に御相談ください。 (2)能力実証の方法について 能力実証の方法として人事院規則8―12第21条第1号には、「筆記試験」、「論文試験」、「作文試験」のほか、「これらに代わる適当な方法」が定められていますが、基本方針4.(1)において、「各府省は、個々の障害のある職員がその障害の内容及び程度に応じて能力を発揮できる具体的な職域・職種・業務を把握し、その用意を行う」とされていることも踏まえ、採用予定の常勤官職の業務等によっては、「これらに代わる適当な方法」として、官職に必要とされる技能の確認を行うことも可能です。 また、人事院規則8―12第21条第2号に定める「過去の経歴の有効性についての経歴評定」の実施の際には、非常勤職員としての勤務実績を適切に考慮してください。 なお、上記(1)、(2)の方法を用いてステップアップの枠組みによる任用を行うに当たっては、その公正性を確認する観点から人事院と事前相談を行うようにしてください。   5 雇用の安定確保に向けた措置 障害のある非常勤職員の雇用の安定確保等のため、障害のある人を非常勤職員として任用する際には、以下の点に留意してください(詳細は資料編(14)参照)。なお、既に非常勤職員として任用されている障害のある職員や、採用された後に障害を有することになった非常勤職員等の任用についても同様です。 障害のある非常勤職員の職務の内容、任期、勤務日数及び勤務時間については、当該非常勤職員の希望、体調等を踏まえるとともに、必要に応じ相談員、就労支援機関、主治医等の意見も聴いた上で、その障害の特性等に応じた勤務ができるよう適切かつ柔軟に設定・変更してください。例えば、フルタイム勤務以外の非常勤職員の場合は、本人の希望や体調等を踏まえて、週のうち勤務しない日を設けたり、始業・終業の時間を日によって変えたりするなどの運用が可能です。 なお、勤務条件の変更により、職務内容、任期、勤務時間等が大きく変わり官職の同一性が維持されていると整理するのが困難である場合には、人事異動通知書の交付を行い、勤務条件の決定に当たり通常必要となるプロセスを踏む必要があります。こうした場合に該当しなかったとしても、勤務条件を変更した場合には、非常勤職員本人と認識を合わせておく観点からは、人事院規則15―15(非常勤職員の勤務時間及び休暇)の運用について(平成6年7月27日職職―329)第2条関係第1項に基づき勤務時間の内容を非常勤職員本人に通知する必要があるほか、勤務条件の決定に当たり通常必要となるプロセスを踏むことが望ましいと考えられます。 障害のある人を非常勤職員として任用する場合についても、人事院規則8―12及びこれに関連する通知が適用されますが、併せて、以下の@からCまでの取扱いに沿って運用してください。   @ 障害のある職員を公募により期間業務職員として採用した場合に、当該職員がその任期満了後も引き続き期間業務職員として勤務することを希望するときは、原則として当該職員を連続2回公募によらず採用するよう努めてください。 A 期間業務職員として任用されている障害のある職員が引き続き勤務することを希望して期間業務職員の公募に応募した場合に、当該職員の能力の実証のために経歴評定を行うときは、期間業務職員としての従前の勤務実績を適切に考慮してください。 その能力の実証の結果、当該職員を期間業務職員として改めて採用した場合に、当該職員がその任期満了後も引き続き期間業務職員として勤務することを希望するときは、上記@と同様に、原則として当該職員を連続2回公募によらず採用するよう努めてください。 B 障害のある職員を短時間非常勤職員として採用した場合に、当該職員がその任期満了後も引き続き短時間非常勤職員として勤務することを希望するときは、原則として当該職員の任期を連続2回更新するよう努めてください。 なお、2回更新した後の任期が満了した後も任命権者が引き続き短時間非常勤職員として勤務させる必要があると認める場合には、改めて当該職員の任期を更新して差し支えありません。そこで改めて当該職員の任期を更新した場合、当該職員がその更新された任期の満了後も引き続き短時間非常勤職員として勤務することを希望するときは、原則として当該職員の任期を更に連続2回更新するよう努めてください。 C 短時間非常勤職員として任用されている障害のある職員が引き続き勤務することを希望して短時間非常勤職員の公募に応募した場合に、当該職員の能力の実証のために経歴評定を行うときは、短時間非常勤職員としての従前の勤務実績を適切に考慮してください。 その能力の実証の結果、当該職員を短時間非常勤職員として改めて採用した場合に、当該職員がその任期満了後も引き続き短時間非常勤職員として勤務することを希望するときは、上記Bと同様に、原則として当該職員の任期を連続2回更新するよう努めてください。 短時間非常勤職員として採用された障害のある職員が、一定の勤務経験を得た後、期間業務職員として勤務することを希望した場合には、その障害の特性等を考慮し、必要に応じて相談員、就労支援機関、主治医等の意見も聴いた上で、期間業務職員として任用することが適当かどうか判断してください。適当と判断した場合は、当該職員をその能力及び適性に照らし適当な期間業務職員の官職へ転任等させるよう努めてください(期間業務職員から短時間非常勤職員への転任等についても同様)。 転任等させる場合、人事院規則8―12第47条第3項に基づき、第46条第1項の規定に準じて、必要な能力の実証を行う必要がありますが、一方で、同条第2項が準用されていないため、公募を経る必要はありません。 障害のある非常勤職員に対しては、常勤官職に係る競争試験や選考等に関し、その出願の日程・手続、試験の日程・場所その他当該非常勤職員が競争試験や選考の機会を円滑に享受するために必要と考えられる事項について、書面、メール、その他障害の特性等に応じその障害のある職員が知覚可能な方法により、情報提供に努めてください。   p85 第3節 募集・採用手続 障害のある職員を採用するに当たっての募集・採用手続は、任用形態(常勤職員・非常勤職員)や能力実証の方法(採用試験・選考)により異なります。その概要は以下のとおりです。 なお、いずれの募集・採用手続を採るかにかかわらず、任命権者は、募集及び採用を行うに当たっては、国家公務員の合理的配慮指針に基づき、@障害のある人からの合理的配慮の申出、A合理的配慮に係る措置の内容に関する障害のある人との話合い、B合理的配慮の確定、というステップを経た上で、適切な配慮を行う必要があります(詳細は資料編(3)参照)。なお、配慮を求めたことによって不利に取り扱うことがないよう、注意してください。また、採用後に障害者手帳等の返納や失効があった場合でも、それを理由とした免職を行うことはできません。   1 常勤職員の採用 (1)競争試験による採用 任命権者が、人事院が告知を行って実施する競争試験である国家公務員採用試験(以下「採用試験」という。)の最終合格者が掲載された採用候補者名簿に記載された者の中から、面接を行い、その結果を考慮して採用を行います(国家公務員法第56条)。こちらの採用試験では、障害のある人も障害のない人と同じ試験を受験し競争することとなりますが、採用試験の実施に当たっては、障害のある人からの申出をもとに、過重な負担となる場合は除き、障害のある人の意向を尊重して、個々の障害の特性に配慮した受験上の配慮(いわゆる募集及び採用時における合理的配慮)を行っています。 なお、採用試験の受験を希望する障害のある人を個別の選考への応募に誘導するようなことは適切ではありませんので、注意してください。 採用試験としては、現在、総合職試験(大卒程度試験)、一般職試験(大卒程度試験)、一般職試験(高卒程度試験)などが行われており、各採用試験は、標準職務遂行能力及び官職についての適性(以下「能力及び適性」という。)を有するかどうかを相対的に判定することを目的として、採用試験ごとにあらかじめ定められた基礎能力試験、専門試験(多肢選択式)、専門試験(記述式)、人物試験等の試験種目により行われています(人事院規則8―18(採用試験)第2条、第6条)。   (2)選考による採用 任命権者が、能力及び適性を有するかどうかを判定することを目的とする選考を実施して採用を行います(国家公務員法第57条、人事院規則8―12第19条〜第22条)。なお、採用に当たっては、一人一人の障害特性等を適切に踏まえた柔軟な配慮を行うことを考えに入れ、場合によっては、配置予定の職域、職種、業務などについて柔軟な対応を行うことも含めて判断を行う必要があります。 任命権者が選考を実施して採用を行うに当たり、募集に際しては、インターネットの利用、ハローワークへの求人の申込み等による告知を行い、できる限り広く募集を行う必要があります(人事院規則8―12第22条第1項)が、法定雇用率を達成しようとする範囲内で、法定雇用率の対象となる障害のある人を採用しようとする場合には、その対象を限定することも可能です。   選考に当たっては、以下の事項にも留意する必要があります(「障害者の採用に係る募集及び採用の方法等に関する基本的な考え方等について」(平成30年12月21日人事院事務総局人材局企画課長通知。以下「募集・採用通知」という。))。 ・ 能力及び適性に関係のない事項を応募資格とすることは適切ではないこと(適切ではない例:募集の対象を特定の障害種別の人や面接時に就労支援機関の職員の同席が可能である人に限定するなど) ・ 能力や適性を有しているかどうかについては、採用後において提供できる配慮の内容を個別に検討の上、判断するものであること(適切ではない例:募集の対象を介助者なしで業務遂行が可能である人や採用後に就労支援機関の支援が受けられる人に限定するなど) また、選考による採用に際しては、個々の障害のある人がその障害の内容及び程度に応じて能力を発揮できる具体的な職域、職種、業務等を把握し、その用意をした上で、筆記試験、作文試験、人物試験、実施試験、経歴評定等の中から、任命権者が、人事院が定める基準に基づき、それらに応じた適切な種目を選択して行うこととなります(人事院規則8―12第21条)。能力実証等に資すると認められる資格、免許等がある場合には、これを評価することができ、過去の採用試験に合格したことがある人については、試験の種類、区分、試験種目等を踏まえ、能力実証等に資すると認められる場合には、これを評価することができます(募集・採用通知)。 なお、各府省が係員の官職に個別に行う選考により採用しようとする場合において、庁舎の監視その他の庁務等を職務の内容とする官職等以外の官職に採用しようとするときは、原則として、あらかじめ人事院の承認を得ることとされています(人事院規則8―12第18条第1項)。   2 非常勤職員の採用 非常勤職員の募集・採用手続については、常勤職員と異なる以下のような内容が定められており、これら内容については、基本的には(注)採用される人が障害のある人か障害のない人かにかかわらず同じものとなります。 非常勤職員の採用に当たっては、インターネットの利用やハローワークへの求人の申込み等による告知を行い、できる限り広く募集を行う必要があります。ただし、例外的に、類似官職に就いていた期間業務職員を特定の場合に再採用するとき等は、公募を行わないこともできます(人事院規則8―12第46条第2項、人事院規則8―12の運用について第46条関係第3項)。 また、非常勤職員の採用の際の能力実証は、基本的には適宜の方法によることができるとされていますが、期間業務職員については、面接は必ず行うこととされています(人事院規則8―12第46条第1項)。   (注)採用される人が障害のある人である場合の取扱いとして、次のようなものがあります。 ・非常勤職員の募集については、常勤職員の募集と同様に、法定雇用率を達成しようとする範囲内で、対象障害者を採用しようとする場合には、募集の対象を対象障害者に限定することは可能とされています(募集・採用通知1)。 ・非常勤職員の採用に当たっては、面接等において就労支援機関の職員等の同席を認めることは差し支えないこと等について、留意する必要があります(募集・採用通知2(2))。 ・期間業務職員として採用された障害のある職員の再採用については、特定の場合に採用の努力義務があります(本章第2節5参照)。 p88 第4節 選考における合理的配慮の事例 任命権者は、選考を含む募集及び採用を行うに当たっては、国家公務員の合理的配慮指針に基づく措置を行う必要があり(本章第3節参照)、当該指針の別表には、その事例が掲げられています。なお、配慮の具体例として、障害者選考試験を実施した際には次のような受験上の配慮が行われました。 障害区分 視覚障害 事例 ・募集内容について、音声読上げソフトに対応したテキスト形式で提供 ・点字試験の実施(点字試験の補助として、音声読上げソフトに対応したテキスト形式で提供) ・拡大文字による試験の実施 ・電子ファイルの試験問題集による試験の実施 ・試験時間の延長 ・ルーペ、拡大読書器、電気スタンド等の使用を許可 ・付添人の来場許可及び控室の用意 障害区分 聴覚障害 事例 ・試験官の発言事項を書面で伝達(希望に応じ手話でも伝達) ・筆談等により面接を実施 ・補聴器の使用を許可 ・試験会場に手話通訳士を配置 ・付添人の来場許可及び控室の用意 障害区分 肢体不自由 事例 ・パソコンを利用した試験の実施(文書作成ソフトを用いた解答) ・車椅子に対応した会場及び試験室で実施 ・マークシート答案を丸付け答案等に変更して試験を実施 ・自動車を利用しての来場を許可(駐車場の確保) ・付添人の来場許可及び控室の用意 障害区分 精神障害 事例 ・試験実施時間中の服薬の許可 ・面接で就労支援機関の職員等の同席を許可 ・付添人の来場許可及び控室の用意 障害区分 知的障害 事例 ・面接に就労支援機関の職員等の同席を許可 ・付添人の来場許可及び控室の用意 障害区分 発達障害 事例 ・(読字障害の場合)試験時間の延長 ・(書字障害の場合)パソコンを利用した試験の実施(文書作成ソフトを用いた解答) ・試験実施時間中の服薬の許可 ・面接に就労試験機関の職員等の同席を許可 ・付添人の来場許可及び控室の用意 これらのほか、厚生労働省作成の「公的機関における障害者への合理的配慮事例集」も参考になりますので、参照してください。 p89 第7章 障害のある職員の職場定着支援 第1節 障害のある職員の配置・定着・職場適応 1 障害のある職員の配置 障害のある職員の配置は、採用された職員の能力の活用を図るための前提措置、つまり雇用管理の出発点です。したがって、障害のある職員が職務を遂行するに当たり、必要とするスキルと本人の作業能力とのマッチングを図ることが重要です。 配置には、採用時の配置と配置後の調整の二段階がありますが、採用時の配置はおおよそ次のような観点で進めます。 @ 障害の状態は変化することも考えられることから、職務との適合性についてはその人の能力開発の観点からも吟味を行う。 A 適合性の判断の重要な要素である体力や職業能力は、将来のその人の能力伸張を見込んで予測しておく。 B 適合性はその人を取り巻く環境や条件の変化によって可変的であることを理解し、引き続きその検討を怠らない。 C 職務に対する興味や仕事のやりがいとの間には、ある種の相関関係が考えられるので、職務との適合性についてはその人の興味や性格の吟味を怠らない。 D 適合性の確保を目指す職務配置はあくまでも予測性に基づくものであるので、配置後の調整としての転任、昇任等についてその検討を怠らない。 2 配置後の職務の調整 障害のある職員の個性、体力、職業能力等が担当職務に適合する場合には、当然ながらその職員はその実力を遺憾なく発揮し、仕事に満足感・充足感が湧き、やりがいもあるでしょう。しかしながら、障害のある職員の配置が適切でない場合、例えば「仕事が合わない」、「仕事のスキルが足りない」とか「仕事が苦痛である」など、様々な離職の要因を作り出す結果となります。したがって、配置後しばらく経っても、当該職員が期待どおりの成果を上げられなかったり、また、職務の内容や方法が大きく変わって適合しなくなったりした場合には、職務の適正化を図るため、次のような方法で配置後の調整をする必要があります。 @ 本人の能力と職務が適合していない要因を把握する。 A 本人の能力に合わせて職務の内容を改善するための職務の再設計を行う。 B 本人の作業を容易にするための支援機器の導入や職場環境の改善を行う。 C 本人の能力を向上させるための支援を行う。 D 本人の能力に向くと考えられる職務への転任を行う。 職場内で障害のない職員と同等又はそれ以上に実績を上げている障害のある職員もいるでしょう。適切な人事評価(第5章第1節3参照)ののち、職場内で現在の職位より高い職位へ昇任がなされると、本人の自己実現を果たすとともに、職場適応をした良い事例となることでしょう。 また、各府省は職務の選定や職場適応等についてノウハウの蓄積ができ、その職員の転任、昇任によって、就いていた官職が空席となるため、新たに別の障害のある職員を採用することが可能になります。   3 職務の再設計 職務の再設計は「障害のある職員に仕事を適合させる」という視点に立って職務を見直し、改善していこうとするものです。一般に職場の作業環境や業務の手順は、障害のない職員が働くことを前提として作られています。こうした中で様々な障害特性がある障害のある職員をそのまま配置した場合、ミスマッチが起こる可能性があります。 職務の再設計は、こうした状況に対応して作業自体の見直しを行い、障害のある職員の職業能力に合わせてその改善を図っていく手法です。例えば、障害特性により、職務内容の一部について実行が困難な場合、その職務は別の職員が担当し、代わりにその職員の職務のうち、できることを担うなど職務の分担を変えることも一つです。また、例えば紙資料でのやり取りをしていた場合、電子化された資料でのやり取りに変え、音声読み上げ機能のある支援機器を活用することで、視覚障害のある職員がその職務に従事できるように職場環境を変えることも想定されます。   4 集中配置と分散配置 障害のある職員を配置する際、ある職務を選定して集め、複数名の障害のある職員を集中的に配置するケースと、本人の能力・適性に応じて複数の部署にそれぞれ分散して配置するケースがあります。 どちらの方法によるかは各府省の考え方によりますが、一般に後者のほうが広く行われており、日常のコミュニケーションを通じて障害のある職員と障害のない職員の相互理解を深めるのに役立つと同時に、障害のため困難な作業を周囲の人がカバーするなど、組合せによる職業能力の有効発揮が図られています。 集中配置は、設備改善のための投資を効率的に実施できること、また障害のある職員に対する雇用管理のノウハウを効率的に蓄積できるなどのメリットがあります。ただし、障害のある職員を特別な扱い、あるいは差別的な扱いをすることにならないような配慮が必要です。障害のない職員も障害のある職員もお互いが理解し合い、教え合って自立し、成長していくことが大切です。  <集中配置の参考事例:大阪府のハートフルオフィス> 大阪府では、知的障害のある人、精神障害のある人を非常勤職員として雇用し、その業務経験をいかして、一般企業等への就職につなげる「大阪府ハートフルオフィス推進事業」を行っています。 大阪府庁の大手前庁舎と咲洲庁舎に設置した2か所のオフィスで、約30名程度の知的障害のある職員が働いています。 このハートフルオフィスでは、指導員の業務指示のもと、文書の三つ折りや封入、宛名ラベルの印刷、ファイリング、資料の印刷やセットなど、庁内各課から集約した事務作業を行っています。 また、庁舎内の郵便の集配や、他の課に出向いてスキャン業務やシュレッダー、倉庫の整理や会場設営なども行っています。 ハートフルオフィスの詳しい内容は以下のホームページを参照してください。 http://www.pref.osaka.lg.jp/keikakusuishin/syuuroushien/heartfuloffice.html 5 職場定着を進めるための対策 障害のある職員の職場適応のためには、職場環境やサポート体制の整備が重要です。(本章では、職場定着を進めるための方策について記載しており、サポート体制の整備については、第1章第3節参照)。 障害のある職員の配置や転任又は昇任によって職場にうまく適応しているかどうかをみるには、職場側と働いている職員側の双方からみることが重要です。職場において「職場適応が良い」と判断した職員でも、本人からみて労働環境に不満を持っていたり、人間関係に悩んでいたりする場合が案外多いものです。 良い職場適応とは、各府省にとってもその職員が十分に能力を発揮し、活躍している状態であり、働いている職員にとっても職場生活が満足できる状態を言います。したがって、職場適応を高めるためには募集、採用、配置などのほか、人間関係、安全・衛生管理、その他人事管理全般にわたって障害のある職員の個性や特性を把握して、これらに配慮した対応を積極的に進めていくことが望まれます。 障害のある職員の職場適応を巡る問題は様々ですが、職場としてはまず、一人一人の障害のある職員が何を考え、何を望んでいるか、職場生活においてどんな問題に直面しているか、といった問題点を把握するところから対策が生まれてきます。人事担当者等が日頃から率先して障害のある職員の課題等の把握に努めたり、障害のある職員が相談できる先の窓口を明確化し、必要に応じて相談窓口が職場の上司、同僚、部下等と調整したりすることも重要です。 また、障害のある職員の職場適応に課題がある場合、早期の段階からハローワーク又は労働局に配置された職場適応支援者による支援の活用も検討し、必要に応じて労働局(職業安定部職業対策課)に相談してください(職場適応支援者については、第1章第3節参照)。   次の表は職場定着を進めるための具体的な対策のポイントです。 ポイント @ 人間関係の改善 人事管理面の配慮 a)職場単位で、障害特性等の事前啓発 b)上司との定期的情報交換による、問題解決の具体的方策の検討 c)個人同士やグループでの定期的な話合いによる、仕事を通じた人間関係の深化 d)仕事以外の場面での話合いや懇談の促進 ポイント A 職場の安全管理 人事管理面の配慮 a)公務災害の除去 b)安全管理責任体制の確立 c)作業環境と施設設備の改善による作業の安全化 d)安全教育の徹底 e)非常事態の対策 ポイント B 健康管理 人事管理面の配慮 a)障害特性や医学的な制約に即した健康管理の方法 b)休憩や早退、年次休暇等の取りやすい雰囲気づくり ポイント C 勤務時間管理 人事管理面の配慮 a)健康を保ち本来の能力が発揮できるような配慮 b)障害特性に応じた勤務時間などの制限 ポイント D 教育訓練 人事管理面の配慮 a)教育訓練は長期的な人材育成の企画を立てて推進する b)障害のない職員と同一の研修内容を受講できるようにする c)伝達と理解を促進する方法に配慮する d)ノウハウを府省全体で蓄積して共有し、水平的な活用をする e)障害のある職員の特性に応じて個別的なOJTを行う  <参考例>民間企業における事例 1 障害のある職員を支援する人の配置 職場定着を左右する大きな要因の一つとしては「人間関係」があります。スムーズな人間関係を形成するには配置先に障害のある職員の生活指導や作業指導をする特定の人を決め、配置することが重要です。また、職場環境改善の一つとして職場における支援者の配置が有効な場合があります(第1章第3節参照)。 また、事業所によっては、自社従業員を職場適応援助者(ジョブコーチ)として障害のある職員の働く職場に配置したり、ノウハウの豊富な高齢者、退職者を活用したり、ブラザー・シスター制というような先輩社員である障害のある職員を活用して成功しているケース、あるいは障害のある職員とパートタイム勤務者との組合せで効果を上げているケースもあります。 2 家族との連携 障害のある人を雇用している職場においては、家族との連携も職場定着の重要なカギです。例えば、心配のあまり家族の中に「仕事がつらかったら辞めてもよい」といった認識があると、本人の自立や向上意欲にブレーキがかかりかねませんので、職場と本人・家族との間で考え方のすり合わせを行う必要があります。また、集中力が途切れがちになった理由が職場では思い当たらず、家族と連絡を取り合ったところ、「友人と休みが合わず、寂しさから、夜遅くまで友人とメールのやり取りをしているようだ」というように生活面に課題があることが分かり、支援機関の余暇活動支援(例:在職者の交流会)を利用し、モチベーションを再び高めた事例もあります。このように、障害のある人の職場定着を進めていく過程では、家族や必要に応じて支援機関との連携が重要な場合があります。 障害のある人を採用した民間企業の中には、年に1〜2回、家族と事業所の人事・労務担当者、配置先の管理職等が懇談会を開催したり、家族との連絡帳のやり取りなど、いろいろな工夫と努力をしたりして、大きな効果を上げているところがあります。 p94 第2節 障害のある職員に対する職業能力開発における留意点 障害のある職員の職業能力開発のためには、第一に、職場が必要とする又は期待する知識・能力・態度を障害のある職員自身が身に付けること、第二に、障害のある職員を取り巻く人的・物的環境、広くは職場全体を、障害のある職員とともに働くことが真に当たり前の環境にすることが必要です。この2つの課題が解決できたとき、障害のある職員が職場で十分に能力を発揮し、障害のある職員を含め全職員が一体となって、目標の達成に向かう土台が構築できたことになります。 ここでは、障害のある職員自身に対する職業能力開発を中心に記載していますが、障害のある職員と障害のない職員が、共に働くことが当たり前の風土・意識を作り上げていくための活動がなければ、いくら障害のある職員の職業能力開発を実施しても十分に機能しない点に留意してください。 職業能力開発は、職場の要請・期待(「こうあって欲しい」、「こういう行動が取れなければならない」など)と障害のある職員本人の行動や能力との間に差がある又は現状をそのまま放置しておくと差が生ずるおそれがある場合に必要となります。職場の要請・期待と障害のある職員本人の能力やスキルとの間の差を「ギャップ」と呼ぶこととします。 障害のない職員についても言えることですが、一般的に、個人の能力やスキルが職場の要請・期待を満たしている状態が、その職場や仕事が本人に適した、かつ安定した職場となる基本です。 そして、これは障害のある職員の場合も同じです。障害のある職員に適した仕事があり、安定した職場とするためには、職場の要請・期待と個人の能力やスキルにギャップがないように職場も本人も周囲の職員も、それぞれの立場で皆が努力することが必要となります。 職場の要請・期待と障害のある職員の能力やスキルにギャップがある場合、職業能力開発をする必要があります。その方法としては、知識を付与する研修を、又は技能が必要な場合は技能の訓練を行います。また、設備の改善なども障害のある職員本人の能力を拡大するために有効です(第5章第2節参照)。 また、職場の要請・期待を、障害のある職員の実態に合わせて近付けていく努力も必要です。障害特性が原因で、職務に必要な能力の付与が難しい職員については、その能力の向上に限界があるということを理解しておく必要があります。このような場合は、その職員の今の障害の状態でできる職務や就労形態を付与したり、設備を改善したりするなど、周りの環境を変容させてギャップを埋めていきます。 また、職業訓練による職業能力開発は、障害のある職員の職域を広げ、キャリア形成を行っていく上で重要な役割を果たします。職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第1条において、職業訓練の目的は、「職業に必要な労働者の能力を開発し、及び向上させること」とされており、障害のある職員に対しても基本的な考え方は同じです。職務遂行における基本的な知識、能力、態度を習得すること、さらには、様々な状況の変化によるニーズの変化に応じた能力・スキルを身に付けていくことが大切であるのは、障害のない職員と何ら変わりません。     なお、促進法第5条においても、事業主の責務として、障害者の雇用に関し、「適正な雇用管理並びに職業能力の開発及び向上に関する措置を行うことによりその雇用の安定を図るように努めなければならない」とされているところです。 こうした基本的な考え方に加えて、障害特性を考慮した障害のある職員特有の職業訓練については、特性を考慮した働きやすい環境を整備すること、さらには働く中で生きがい・やりがいを持てるように支援していくことが求められます。そして個々の障害特性を乗り越えて仕事力を身に付ける職業訓練は、個人の職業的自立を保証する土台として必要なことです。 職業訓練は、通常、OJTとOFF-JTの2つがありますが、障害のない職員と同じく、障害のある職員にも、OJT、OFF-JTの2つの機会が十分に与えられ、連携し工夫されたものが望ましいです。 職場で行われるOJTの目的は、現在担っている業務を正しく、時間内にきちんと遂行する能力を身に付けることです。障害のある職員に限らずですが、障害のある職員の中には原理、原則を実際の作業行動に応用することが苦手であったり、同様の作業であっても作業環境が変わると戸惑ってしまったりする職員もいます。 こうした職員に対しては、とりわけOJTによる指導が重要です。また、OJTは管理監督者一人一人あるいは職場の上司・同僚などと障害のある職員とが、職場での日常の接触そのものを通じて行われるものですが、そのこと自体に大きな意義があり、職場内での共生を確実にするための良い方法と言えます。 OJTによる指導の際は、その職員に合わせた指導法を採用することが重要です。障害特性や個人によりますが、一般的には業務の依頼や指導をする職員は複数名ではなく一人か二人に絞った方が良いでしょう。二人の場合には、主担当を一人決め、もう一人は主担当者が不在の時の代わりとなります。こうすることで、障害のある職員の業務量をコントロールでき、また、障害のある職員が困ったときに誰に聞けば良いか分からない事態を避けることができ、スムーズに業務を実施できます。OJTとして、分からないときに誰かに尋ねて解決するというやり方を身に着けてもらうのも、長く安定的に働いてもらうためには重要なことです。 なお、負傷又は疾病のため障害を有することとなった職員が、病気休暇の期間の満了により再び勤務することとなった場合又は病気休暇から復職した場合には、当該職員に対し、職務の遂行に必要な訓練(点字訓練、パソコン操作の訓練等)を実施することが想定されます。こうした訓練が、当該職員の現在就いている官職又は将来就くことが予想される官職における@職務の遂行に必要な知識、技能等の修得のため、又はAその他その遂行に必要な当該職員の能力、資質等の向上のために実施されるものである場合は、国家公務員法第70条の5の「研修」に該当します。 OFF-JTについては、必要となるスキルについては、障害のない職員が受ける研修を、障害のある職員も同じように受講できるようにしましょう。障害特性ゆえに必要な訓練がある場合は、実施について本人と相談しながら決めましょう。    <障害のある職員の指導方法例> 1 言葉で示す方法 言葉で「……してください」という指導の方法です。最も多くとられる方法です。ただし、指導者の話し言葉があいまいであったり、抽象的であったり、周囲に雑音があったり、また、その指示に従わなかったときに起こしがちな怒った顔や声の調子などはマイナスの影響を強く与えてしまいます。「こんなこともできないのか」という見方や考え方は、指導の過程では指導者の頭の中から取り除くことが必要です。 2 ジェスチャーで示す方法 「ここを押す」、「あちらを向く」など指導者が手で指示したり、身体全体で指示したりすることです。その際、あいまいなジェスチャーを避ける、速すぎない、一度に多くのことを同時に示さないなどを心掛けることが肝要です。 3 見本を示す方法 望まれる行動の全部又は一部を実際にやってみせることです。そして障害のある職員がそれに倣って行動することです。中には、障害のある職員が指導者、周囲の同僚、仲間の行動を自分から模倣することが往々にしてありますので、その様子を見て必要な指導を行うことも効果的な場合があります。 4 要点を強調する方法 教える要点を際立たせるための工夫です。重要なことを大きく書いてみせる、声を大きくする、絵ときをするなど注意を引きつけるよう配慮することです。 p97 第8章 障害者雇用に関する関係施設・各種支援メニュー 第1節 ハローワークによる支援 厚生労働省の地方支分部局であるハローワークでは、障害者雇用の促進について職業紹介を始めとする各種相談支援を行っています。   1 障害のある人の職業紹介 ハローワークには、障害のある人専門の職業相談窓口があり、就職を希望する障害のある人が多く求職登録をし、専門の職員が職業相談・紹介を行っています。 ハローワークを利用して人材を募集する場合は、通常、ハローワークに出向き求人担当の窓口において求人の内容を求人票に記載して提出することにより求人申込みを行いますが、障害のある人の求人の場合は、障害のある人専門の職業相談窓口で直接求人申込みに係る相談を受け付けることが一般的です。これは、障害のある人の採用は、求人者が提示する求人条件に適合する求職者の紹介を受けて採用していくという流れではなく、ハローワークから求人者に対して、現在の求職登録者の状況を踏まえて紹介の可能性を的確に伝え、求職者の特性や配慮すべき事項について御理解をいただき、それに合わせて求人条件や受入体制について相談し調整をいただくことが必要な場合が多いためです。 この中で、具体的な労働条件(求人条件)や障害のある人に対して講ずることができる合理的配慮の内容などについて相談をするとともに、求人票への記載内容が、障害のある人が職場で働くイメージを持ちやすく、応募可能性が高まるようなものとなるよう相談をしていきます。 障害のある人の就職支援においては、通常、ハローワークだけでなく各種の専門機関との連携が必要となります。本人がこれまで通学や利用していた特別支援学校、福祉施設、障害者就労支援機関、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センター(機構が全国52か所に設置している障害者雇用支援の専門機関)、障害者職業訓練機関や、医療機関(主治医など)、保健福祉機関などの各種機関(本章第2節参照)との連携が図られますし、これまでこれらを利用していなかった障害のある人については、ハローワークから支援を要請することもあります。 また、ハローワークでは、障害者就労支援機関や障害者職業訓練機関を利用しながら就職活動をしている障害のある人(多くの場合ハローワークにも求職登録をしています。)の採用を促進するため、それらの機関に対して障害のある人の求人情報を提供するとともに、求人者とそれらの機関との接触の便宜を図っています。 また、特別支援学校の卒業生の採用については、通常、新年度当初採用となり、その前年度において、特別支援学校の先生・保護者・ハローワークと求人者の間の密接な連携の下で、定められた時期に求人票提出・職場見学会・採用面接・内定等の一連の就職・採用手続を進めていきますので、ハローワークに事前に御相談ください。 さらにハローワークでは、障害のある人ごとに、これらの地域の支援関係者からなる就労支援のためのチームを設置し、チーム構成員が障害者支援におけるそれぞれに強みを発揮して、支援対象者の就職に向けた支援(チーム支援)を行うこともあります。   2 障害者求人選考会 ハローワーク(又は労働局)においては、障害のある人の就職・採用(マッチング)が積極的に進むよう、複数の求人者と障害のある人が会する求人選考会を開催することがあります。広い会議場等で数多くの参加者を募って行う場合や、ハローワークの会議室等で少ない人数でじっくり行うこともあります。障害のある人の参加者が多い場合は、当日は求人者からの職場や仕事の内容の説明を中心に行い、採用面接は登録された希望者と後日行うという場合もありますが、その場で採用に向けた具体的な採用面接に入る場合もあります。またこの会合の名称も、求人説明会、合同選考会など様々です。   3 職場実習のコーディネート ハローワークでは、障害のある人に対して一般雇用への理解の向上と就職への動機付けを与え、作業適正及び能力の把握を図るとともに、事業所における障害のある人に対する理解の向上や障害者雇用に係るノウハウの蓄積を目的として、職場実習の実施をコーディネートしています(第4章第4節参照)。   4 職場定着支援 障害のある人は、就職・採用の後、職場にうまくなじめず早期に離職してしまうことのないよう、円滑な職場定着を図り、その能力を発揮して生き生きと活躍できるように支援をしていくことが重要です。 このため、ハローワークでは、障害のある人の就職・採用の後、専門の担当者が、一定期間、定期的に本人の職場を訪問し、本人との間で仕事の仕方や職場環境について相談をし、的確な助言をする職場定着支援を行います。その相談の内容によって、職場側の職場環境の改善などが必要な場合は、職場の人事担当者との相談を行うこともあります。 この職場定着支援は、ハローワークが紹介した障害のある人のうち職場定着に懸念がある人に対するフォローアップサービスとして行うことが原則ですが、ハローワークの紹介した障害のある人以外であっても、障害者就労支援機関による就労定着支援を受けることができない場合などであって、受け入れる職場において本人の職場定着に懸念がある場合は、ハローワークの支援体制の範囲で可能な限りは実施することができ、またそれが困難な場合でも、職場定着支援を実施している障害者就労支援機関につなぐこともできますのでハローワークに御相談ください(第1章第3節(6)B参照)。   5 雇用管理上の相談助言 ハローワークでは、障害のある人の募集・採用、職務の選定、受入体制の整備、職場定着支援等の障害のある人の雇用管理に関する総合的な相談助言を行っています。専門性の高い事案については、各種関係機関につないでより詳しい助言を受けられるように支援を行います。 6 免職の届出 国及び地方公共団体の任命権者は、障害のある職員を免職する場合(職員の責めに帰すべき理由により免職する場合を除く。)には、速やかに、免職する職員の氏名、性別、年齢、住所、当該職員が従事していた職種、免職の年月日及び理由を公共職業安定所長に届け出なければならないこととされています。 障害者は、就職するに当たって各種のハンディキャップを有し、再就職に比較的長い期間を必要とすることから、事業主都合により離職することが明らかになったときは、ハローワークも含めて再就職に向けて速やかに対応する必要があるため、事業主に届出を義務づけることとしたものです。 なお、「職員の責めに帰すべき理由により免職する場合」とは、定員の減少やポストの廃止によるものを除いた分限免職及び懲戒免職が該当します。このため、定員の減少やポストの廃止による事業主都合の免職の場合には、届出義務が発生します。   p100 第2節 障害者就労支援機関等との連携 1 障害者就労支援機関 障害のある人の職場適応や定着に当たって重要な役割を果たすのが障害者就労支援機関ですが、就職前から就職後にわたって、支援機関と連携することは重要です。 主な連携先支援機関としては以下の機関があり、社会福祉法人、営利法人、特定非営利活動法人等が運営をしています。それぞれの支援機関によって特色がありますので、実際に地域の支援機関と連絡、相談を行うことが重要です(第1章第3節(6)参照)。 なお、各地域においてこれらのサービスを行う障害者就労支援機関は、次のホームページ等で検索することができます。 ・WAMネット障害福祉サービス等情報検索 https://www.wam.go.jp/sfkohyoout/COP000100E0000.do   (1)就労移行支援事業所: 一般就労への移行に向けて、事業所内での生産活動等を通じた就労に必要な訓練、適性に合った職場開拓、就労後の職場定着のための支援等を実施しています。令和5年5月現在、全国に2,934事業所あります。 一般就労を希望してその準備段階にある障害のある人が利用しており、採用後も職場定着支援を行う義務がありますので、その採用や採用後の定着支援について連携を図ることが期待できます(第1章第3節(6)Bア参照)。   (2)就労継続支援A型事業所: 通所により、雇用契約に基づく就労の機会を提供するとともに、一般就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を実施しています。また、能力が高まり一般就労を希望する者についての、一般就労への移行に向けての支援も実施しています。令和5年5月現在、全国に4,448事業所あります。 利用者の採用について連携を図ることが期待できます。また、採用後の定着支援についても、事業所における努力義務となっています(第1章第3節(6)Bア参照)。   (3)就労継続支援B型事業所: 通所により、就労や生産活動の機会を提供(雇用契約は結ばない。)するとともに、一般就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を実施しています。また、能力が高まり一般就労を希望する者について、一般就労への移行に向けて支援を実施しています。令和5年5月現在、全国に16,400事業所あります。 利用者の採用について連携を図ることが期待できます。また、採用後の定着支援についても、事業所における努力義務となっています(第1章第3節(6)Bア参照)。   (4)就労定着支援事業所: 就労定着支援事業とは、平成30年4月より開始された事業です。通常、就労移行支援事業所や、就労継続支援A型・B型事業所などの利用を経て新たに働き始めた障害のある人については、採用から6か月間はそれらの事業所による支援が行われますが(就労継続支援A型事業所・B型事業所は努力義務)、この6か月を経過した後に、就労の継続を図るため、職場、障害福祉サービス事業者、医療機関等との連絡調整、障害のある人が雇用されることに伴い生じる日常生活又は社会生活を営む上での問題に関する相談、指導及び助言その他の必要な支援を行うのが就労定着支援事業所です。令和5年5月現在、全国に1,548事業所あります。 この就労定着支援事業所は、就労移行支援事業所を運営している法人が一体的に運営していることが多いです。また、支援期間は、3年間です。 就労定着支援事業所による定着支援は、支援法に基づく障害福祉サービスの一つであることから、他の障害福祉サービスと同様、障害のある人本人の申請に基づいて行われるものであり、事業主から就労定着支援事業所に直接依頼を行うことはできませんので、事業主側がこのサービスが必要であると考える場合は、本人に対して情報提供を行うとともに、本人及び就労定着支援事業所とよく相談し、本人との合意の上で、本人から地方公共団体に申請を行ってもらうことが必要です(第1章第3節(6)Bア参照)。   2 障害者就業・生活支援センター 障害者就業・生活支援センターは、就職や職場への定着に当たって就業面における支援とあわせ、生活面における支援を必要とする障害者に対して、身近な地域で、雇用、保健福祉、教育等の関係機関との連携の拠点として連絡調整等を積極的に行いながら、就業及びこれに伴う日常生活、社会生活上の相談・支援を一体的に行う施設で、都道府県知事が指定する一般社団法人若しくは一般財団法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人(NPO)等が運営しています。  障害者就業・生活支援センターの主な事業内容は、次のとおりです。 (1) 障害者からの相談に応じ、その就業及びこれに伴う日常生活上の問題について、必要な指導及び助言その他の援助を行うこと (2) 地域障害者職業センター又は事業主等により行われる職業準備訓練及び職場実習のあっせんを行うこと (3) 就職後の障害者に対する必要な助言、事業主に対して障害者の就職後の雇用管理に係る助言等を行うこと (4) ハローワーク、地域障害者職業センター、社会福祉施設、保健医療施設、特別支援学校、当事者団体等の関係機関との連携・連絡調整を行うこと なお、障害者就業・生活支援センターにおいては、 a)厚生労働省(都道府県労働局)の委託事業による就業支援 b)都道府県の委託事業(厚生労働省の補助事業)による生活支援 が行われているほか、 c)地方公共団体により独自に措置された担当者による就業支援・生活支援 が行われている場合があります。 このうちa)の事業によって措置された就業支援については、求職活動中から利用者登録を行った上で、障害者就業・生活支援センターの支援を受けて就職した場合を除き、国の機関に採用された障害のある人を対象として実施することはできませんが(対象者が雇用保険の被保険者である場合は支援の対象となります。)、国の機関に採用された障害のある人を対象とした職場定着支援を有料で実施できる場合があります(第1章第3節(6)Bイ参照)。   3 地域障害者職業センター 地域障害者職業センターは、ハローワーク等の地域の就労支援機関との密接な連携の下、障害のある人に対する専門的な職業リハビリテーションを提供する施設として、全国47都道府県(ほか支所5か所)に設置されています。 障害のある人一人一人のニーズに応じて、職業評価、職業指導、職業準備訓練及び職場適応援助(ジョブコーチの派遣)等の各種の職業リハビリテーションを実施するとともに、事業主に対して、雇用管理に関する専門的な助言やその他の支援を実施しています。 雇用保険財源により運営されているため、公的機関はジョブコーチの派遣などの地域障害者職業センターの支援を直接受けることはできませんが、ハローワークと密接に連携している機関であるため、ハローワーク等を通じて支援ノウハウや、就労支援機器等の情報提供などは受けることができます。 4 障害者職業訓練機関 障害者職業訓練機関としては、障害者職業能力開発校があります。これは、一般の職業能力開発校において職業訓練を受けることが困難な障害者に対して、その能力に適応した職業訓練を行うことにより、就職又は雇用継続に必要な知識・技能を習得し、障害者の就職の促進又は雇用継続を図ることを目的としています。 障害者職業能力開発校には、国が設置し、都道府県が運営しているところ、国が設置し、機構が運営しているところ、府県が設置・運営しているところがあります。 加えて、障害者が居住する身近な地域で障害者の態様や企業のニーズに対応した訓練機会を提供するため、企業、社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関等、多様な委託訓練先を活用した障害者委託訓練を実施しているところです。 これらの障害者訓練を修了した障害のある人の採用を希望する場合には、ハローワークに求人を提出し、ハローワークから障害者職業能力開発校等に求人票を提供してもらうか、直接募集の求人について、障害者職業能力開発校等に情報提供を行うと良いでしょう。   5 医療機関 精神障害者や身体障害者は、就労と平行して通院をしている場合があり、特に精神障害者の場合は、治療や薬の処方等のために通院していることが考えられます。現在の障害の状況や、気を付けた方が良いことなどの情報は雇用管理の上で重要であり、医療機関とも連携体制を取ることが重要です。 本人が定期的に受診している医療サービスは、外部の医療機関の場合もあれば、職場の産業医や健康管理医などである場合(その両方である場合)もあります。本人が外部の医療機関を利用している場合は、主治医と職場の健康管理医等の連携も重要です。いずれの場合も、本人の職場での勤務状況や障害の状況などに関する情報提供を行い、本人の能力を発揮させ円滑に職場定着できるようにするために、どのような配慮が必要なのか等、職場の実態に即した具体的な助言を受けることもできると考えられます。 ただし、医療情報は、機微な個人情報であるため、問い合わせの際には障害のある人本人の了解を得ることが必要です。また、医療機関によっては本人以外からの問い合わせを受け付けない場合もあるので、その際は、医療機関から得たい情報を書面にまとめ、本人から主治医等に渡してもらう方法が考えられます。