2 行政の総合性、個人の適性・志向を重視した能力開発


【基本的考え方】

(能力開発の必要性)
 行政課題が複雑高度化する中、これに対応する能力を培うため、職員に対する能力開発を充実することが求められる。能力開発については、行政能力向上を基本とし、各職員の能力・適性・志向を踏まえた施策を進めることが必要である。
 能力開発の手段としては、業務遂行を通じた訓練(OJT=オン・ザ・ジョブ・トレーニング)に加え、研修、人事配置、人事交流等を組み合わせた計画的、能率的な能力開発を行っていくことが必要である。
 また、その効果的な遂行のためには政府全体として能力開発に計画的に取り組むことが求められる。

(能力開発の基本方向)
 能力開発に当たっては、どのような人材の育成を目的とするかに応じて、以下のような基本方向で取り組む必要がある。
 すべての職員に対して、全体の奉仕者として、公正・中立にその職務を遂行する日本国公務員としての意識を涵養するため、公務員倫理を始めとする基本的な心構えの徹底を図る。
 特にジェネラリストとしての育成を目指す職員に対しては、総合性の向上に向け、国際経験の付与を始め、社会、行政全般にわたる幅広い視野を涵養する。
 特にスペシャリストとしての育成を目指す職員に対しては、専門性の向上に向け、体系的かつ社会経済の変化や関連技術の進展に対応した専門知識・技術を付与する。

(能力開発における自主性の重視等)
 職員の意欲を高め、能力開発を効果的に行っていくため、職員自身の自主性に配慮し、職員が主体的に取り組めるよう、自己啓発の努力を支援する仕組みを整備していくべきである。
 また、職員の能力開発を積極的に行っていくためには、人事管理に当たる幹部職員等の意識改革を図っていくことが重要である。

(効率的・効果的な研修の実施)
 研修については、任命権者、人事院及び内閣総理大臣の役割分担を明確にした上で、任命権者の行う研修の実態に留意しつつ、三者間の密接な連携の下に、効率的・効果的な実施を図る必要がある。  

【具体的改革方策】

(計画的・総合的な育成システムの構築)
 各省庁において、将来の人事管理を見据え、研修、人事配置、省庁間人事交流、官民交流等を効果的に組み合わせた計画的・総合的な育成システムを構築すべきである。その際、研修の成果を検証し、それを適正に評価する仕組みを設けるべきである。
 併せて総合的・計画的な能力開発を行うため、各省庁における能力開発を担当するセクションの充実・強化を図るべきである。

(幹部職員等の計画的育成)
 行政の総合性の確保の観点から、幹部職員及び課長に準ずる幹部要員の育成を計画的、一体的に推進することとし、内閣総理大臣は、幹部職員に対し、内閣の重点政策等に関する必要な研修を行うべきである。
 その際、任命権者及び人事院の行う研修と重複しないよう、役割分担を明確にし、効率的・効果的な実施を図るべきである。

(自主的な能力開発の支援)
 職員個人の自主的な能力開発を積極的に支援する観点から、(1)自ら希望して、大学院等へ進学したり、民間の研究機関等で研究することなど、自己啓発を目的とする長期の休業等の制度の創設、(2)資格取得等に関する費用補助制度等の充実を図るべきである。
 また、これらによる能力向上の成果を人事管理面に的確に反映していくことが必要である。

(研修に係る方策)
 民間委託や民間研修への参加等が可能な研修については、研修内容等に応じて、アウトソーシングを積極的に推進すべきである。
 任命権者、人事院、内閣総理大臣の連絡を密にし、研修に関するノウハウを相互に提供するとともに、各省庁の実施する研修への相互参加を拡大すべきである。
 国際交渉の増大等により、国際性のある人材を確保・育成する必要性が増していることから、行政官長期在外研究員の増員を図るとともに、政府間取決めを行うことなどによって、我が国政府の職員に外国政府機関等において研修を受けさせる仕組みの整備等についても検討すべきである。

(長期研修を受ける者の定員上の取扱い等)
 各省庁において、職員が日常業務に支障なく長期の研修に専念できるよう、人事異動の時期と合うように研修期間を設定するなど人事管理上の配慮をするとともに、長期の研修を受ける者の定員について、制度・運用面での適切な措置を検討すべきである。


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