はじめに


(審議の経緯)
 今日、我が国は、国際化、少子・高齢化、高度情報化の急速な進展等内外の環境が大きく変化しつつある中で、このような変化に的確に対応していくため、戦後維持されてきた様々なシステムの全般的な改革を迫られている。行政システムの在り方についても、国の機能を有効かつ適切に遂行するにふさわしい簡素にして効率的かつ透明な政府を実現するため、(1)内閣機能の強化や中央省庁の再編、(2)情報公開等を通じた国民に透明で分かりやすい行政の実現、(3)規制緩和等を通じたいわゆる事前規制型行政から事後監視型行政への転換など行政の機能、組織及び運営の抜本的な見直しが進められている。
 一方において、度重なる公務員の不祥事の発生やいわゆる天下り問題等について、国民から公務員に対する厳しい批判が寄せられており、これが行政に対する不信感にもつながっていることは否定し得ない。
 このようなことから、行政を支える公務員制度についても、新たな行政システムの下で内外の多様な課題に対し積極的かつ機動的にその役割と責任を果たしていくことができるものとしていくとともに、行政と公務員に対する国民の信頼の再構築を図ることが喫緊の課題となっている。
 公務員制度調査会は、平成9年5月に内閣総理大臣から国家公務員制度及びその運用の在り方についての全般的な見直しについて諮問を受け、これまでに延べ
 41回にわたって審議を行ってきた。この間、行政改革会議の最終報告に反映させるため、内閣機能強化、中央省庁再編等に特に関連の深い課題について集中的に検討し、平成9年11月に意見を提出した。また、昨年7月には、それまでの議論を「論点整理」として中間的に取りまとめて公表するとともに、民間企業及び各省庁からのヒアリングや地方有識者懇談会を実施した。
 なお、退職の在り方及び労使関係の在り方については、より専門的な観点から審議を行うため、それぞれ検討グループを設置し、退職の在り方については昨年
 12月に検討グループから本調査会に報告が行われた。労使関係の在り方については、引き続き専門的な観点から検討を行うこととしている。

 (答申の性格等)
 今回の答申は、中央省庁等改革等の行政改革の進展に対応するとともに、昨今の各界における公務員制度に関する議論にかんがみ、速やかな対応が求められる諸課題を中心に、改革の基本方向を取りまとめたものである。
 答申の構成は、公務員制度の基本的性格、公務員制度改革の課題等公務員制度改革の前提となる基本的考え方について総論として取りまとめた上で、各論として、採用から退職管理に至る各分野等について、基本的な改革の方向を示すとともに、できる限り多くの具体的改革方策を盛り込んだ。
 公務員の人事管理の問題点として指摘されているものの中には、法制度自体の問題のみならずその運用面の問題も多い。このため、この答申においても、制度改革と併せて運用面の改善について多くの指摘を行った。
 なお、国家公務員には様々な職種があり、多様な職務を遂行しているが、この答申では一般行政事務部門を主たる検討対象とした。
 公務員制度は、採用から退職管理に至る体系的なシステムであり、職員の生活設計とも深く関係していることから、一気に改革を行うのは困難な面があるが、それだけに改革の方向を早期に定め、それに向けて着実に総合的な改革を進めていく必要がある。
 政府においては、この答申を踏まえ、公務員制度とその運用の改革を推進することを強く期待する。


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