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与謝野社会保障・税一体改革担当大臣
第3回社会保障改革に関する集中検討会議後記者会見要旨

平成23年2月26日(土)
15:55〜16:25
於:中央合同庁舎第4号館共用408会議室


1.発言要旨

 今日の公開ヒアリングについて、総括的なコメントを申し上げます。
 第1に、改革への取組が待ったなしであるとの切迫感は、本日の4社及び前回の経済団体、労働団体ともに、完全に共有されていると感じました。また、若い世代の安心や雇用形態の変化に適応した社会保障制度に改革していくべきとの点も共通だったと思います。さらに議論の進め方として、一刻も早く超党派で議論を進めるべき、これも共通をしていたと思います。
 大きく議論が分かれた点としては、年金関係では、次の3点が印象に残りました。
 第1点目としては、限りある税財源を充てる分野の優先順位の問題です。税財源を最低保障年金に充てるのか、医療・介護、子育てなどに充てるべきなのか、これは議論が分かれました。
 第2点目としては、どこまでの年金一元化を目指すかについても議論が分かれました。被用者全体なのか、自営業者も含めた一元化なのかです。
 第3点目としては、最低保障年金的な制度の構成やその負担のあり方についての議論がありましたが、これも分かれております。
 また、幹事委員から、異なる考え方の収れんの方向が見えていることは心強いとの見解も示されました。
 一部の社からは、時間軸や必要な前提条件の達成度に従って、多段階で実行していくとの考え方が示されました。私としても、段階的実施の考え方を組み込むことで、一見異なる選択肢の収れんを進めることができ、また実務と理想のギャップを埋めていけるのではないかと感じたわけでございます。
 そのほか、年金については、年金給付に関わる自動調整機能であるマクロ経済スライドの厳格な実施、支給開始年齢の引上げなど、年金財政の改善に係るご提案がありました。
 医療・介護については、医師不足対策、地域医療・在宅介護の充実など、共通して何らかの機能強化が必要との考え方が示されました。同時に、医療と介護の機能分担や保険免責制度の導入などの効率化案も示されており、両面の対応が必要であるとの議論が多かったと受け止めました。
 本日の新聞各社からのご提言は、いずれも制度の持続可能性、実施のための財源、政策としての実現可能性などへの配意がなされており、今後4月に向けて改革の姿を練り上げていく際に大変参考になるものであると感じました。
 また、複数の幹事委員から、「先送りを絶対にしない」、「期限を切ってやり遂げる」との政治的な決意を確認する発言がありました。
 本日の集中検討会議については以上でございます。
 次に、午前中行いました委員との「意見交換の場」についてです。この集中検討会議には、子育て、医療、介護、貧困・格差の問題に現場で取り組んでおられる委員にご参加いただいております。これらの委員の方々の知見を集中検討会議の議論に反映させることが必要ですが、一方で時間の制約もございますので、これらの委員による意見交換をしていただくために場を設け、その第1回目を今日の午前中に行った次第です。
 本日の午前は5名の委員の方と意見交換を行い、地域医療、子育て支援、多重債務問題の現状や課題について、実践に基づいた示唆に富むご議論をいただいたところでございます。
会議の内容については、今後、簡略な議事概要を公表するとともに、後日まとめて集中検討会議に議論の成果をご報告したいと思っております。
 次回の集中検討会議は、3月5日(土)に、医療、介護、年金、子育てなど各分野における有識者からのヒアリングを予定しております。これらの分野に精通し、高いご見識を持った方々のお話を聞いて、そのご意見を土台に討議を行うことで、より掘り下げた議論を提示してまいりたいと考えております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今、大臣から、大きく分かれた点として年金について3項目挙げられました。有識者、各団体からのヒアリングが、8団体一巡いたしまして、一元化の問題をどうするのかとか、税方式なのか保険料方式なのかというところでいろいろと見解がありますけれども、現時点で大臣として、改革の基本的な方向性としてどうあるべきなのか、お考えのところがありましたら、先ほどの大きく分かれた年金問題についての3項目に引きつけてご説明いただければと思います。
(答)税金も年金保険料も負担者は国民であり、どこから出てくるのかという点では全く差はないと思っております。そういう意味では、税か社会保険料かという議論よりは、国民負担率はどこまでお願いできるのかという点が重要であるということを感じた次第でございます。
 一元化については、皆さんそういう方向で議論される方が多いので、一元化の方向が可能かどうか、可能な場合はどういう手順を踏むべきかと、こういうことを考えなければならないと思っております。これは相当緻密な検討が必要であると思います。それは、異なった年金制度を統合するわけですから、うまくそういうものを結合できるか、その場合どういう技術的な問題が発生するのかと。それから、やはり社会保障と税の共通番号というものが定着することによって、年金事務も簡単になりますし、所得もより正確に分かりますし、そういう問題を含めた検討事項であると今は考えております。
(問)今の大臣のご説明の中で確認したいのですが、国民負担率を見てということですが、ヨーロッパでは大体50%ぐらいというところが多いかと思います。日本の実際の国民負担率をどう考えるかにもよりますけれども、この社会保障改革や6月の成案では、やはり一定の国民負担率というものも示してお願いすることになるのか、また、あるべき日本の受入れ可能な負担率というのはどの辺の水準なのか、お考えがありましたらお願いいたします。
(答)まだそこまで詳しく考えておりませんけれども、現に日本の国民負担率というのは、目に見えているところで今、38.8%になっていますけれども、目に見えていない、後の世代に先送りしている国民負担率が11%。ですから、日本の潜在的な国民負担率は49.8%、つまり50%に近くなっている。それで中福祉・中負担を維持しているわけです。
 これに比べまして、アメリカは先送りしている分を含めた国民負担率が39%ぐらいですが、イギリスは今負担している国民負担率で46%ぐらい、ドイツも52%、スウェーデンが59%、フランスが61%。そういうことなので、やはり世代間の公平ということも今回の社会保障改革の一つの大事なテーマであると思っております。赤字国債で先送りしている状況というのがあると、それを入れた国民負担率と実際今負担している負担率とは、11%の差があるということです。
(問)今日、最低保障年金について、日本経済新聞が基礎年金の財源を全額税にして月額6万6千円、読売新聞が5万円を保障する案を提案されたんですけれども、それについてはどのようにお感じになりましたか。
(答)最低保障というのはどういう意味なのか、実はまだはっきりしていないのではないかと思います。最低保障というのは、それだけで生活できるという意味なのか、単なる年金の中で一番低いものの額なのか、どちらの意味かはまだはっきりしていませんけれども、年金の額は最低でもこれだけですというふうに私は理解をしております。それがどの水準がいいかということはお財布との相談の話であって、このレベルがいいという、もともとの判断基準は多分ないのだろうと思っています。最低保障年金を他の国民が負担するわけですから、それとの兼ね合い、財源との兼ね合いで常に論じられるべきだと私は思っています。
 それから、年金の掛金を払っているわけですから、これだけ払ったのにこれしかもらえないのかという不公平感が残る最低保障であってもいけないと思っています。これは社会保険方式の場合の話です。
(問)年金目的のために日本経済新聞社は消費税5%前後の引き上げ、読売新聞は社会保障税として税率10%、毎日新聞も増税を提案されていましたけれども、その増税についてはどのように思われますか。
(答)いずれにしても、お金がないと、難しい言い方をすれば、財源がないと、どんな政策をつくっても紙の上のプランに終わってしまうので、やはり一定の政策を行うときには一定の財源、すなわち社会保障の場合は社会保険料か税で国民にご負担をお願いするしかないと私は思っております。
(問)今日の論点の中で、年金の支給開始年齢の引上げも含めた全体の社会保障費の抑制という点と、「自助」・「共助」という言葉で自立を促す取組、政府に頼ってばかりではいけないのではないかという点の2点もかなり意見が出ていたと思いますけれども、この2点について、4月にまとめられる案には、どこまで具体的に与謝野大臣として盛り込もうと思われているのかについて教えてください。
(答)多分ほとんどの国民は、自分でやっていくという自立心が高いというのが日本の国民性だと私は思っております。自分のせいでなく、高い年齢になったときに困窮の状態に陥った場合には、それは社会全体として何らかの手を差し伸べると、それが社会保障制度であって、やはり自助や共助というのは、社会を維持していくための普通の考え方であると思っております。
(問)社会保障費の抑制について、今日は、支給開始年齢の引き上げももう少し具体的に早めに結論を出したほうがいいのではないかというご意見もありましたが。
(答)社会保障費の抑制というのは、実はやってみたことがあります。骨太2006のときに、今後5年間で1兆1,000億円、年にして2,200億円。年1兆円を超える社会保障費の伸びを2,200億円だけ低くしようという試みを実際予算でやってみたら、これがまたどこに行っても評判が悪くて、社会保障制度を壊すのかといって随分叱られた経験があります。
 しかしながら、そうはいっても、恐らく今後集中検討会議で勉強することになると思いますけれども、社会保障のそれぞれの分野でどういう効率化ができるのかということは議論をしなければならないと思っておりまして、それなしではいけないとも思っております。
(問)年金の財源について、大臣はいつも、マクロで見て国民の負担であるから、保険料方式か税方式かについてあまり言及されていないのですが、今日、宮本先生からも、税方式の場合のと景気に与える影響、経済成長に与える影響などについて指摘がありました。マクロで見たら、どこから取るかは変わらないけれども、やはり切り方をどうするか、いわばケーキの切り方をどうするかというのが重要な問題だと思うのですが、それに関してどのような論点が考えられるか。今日この段階で結論は出せないと思いますが、税方式と保険料方式についてどういうお考えがありますか。
(答)例えば、マクロで見たらどうなっているかというと、GDPが恐らく480兆円、国民所得が350兆円ぐらいです。年金の給付が50兆円から55兆円と推計される。それから医療費が約34兆円。だから、それだけで90兆円近いということで、国民所得350兆円と90兆円を比べていただいても結構ですし、GDPと年金・医療費を比べていただいても結構。それに介護など福祉関係の給付がありますから、ざっと見で100兆円。これが全体の中で占める社会保障給付費。将来の世代も、誰が負担するとか、会社が出すとか、個人が出すとか、税金でどうする何とかというよりも、そういう経済の規模、国民所得の規模に対して、どのぐらいが社会保障に回せるのかという視点でものを考えないといけないのではないかと私は思っています。
(問)若年者の就労などの支援を手厚くしなければいけないという議論もこれまでありましたが、今日はあまり議論されませんでしたけれども、産経新聞の、いわば高齢者の会計の中で水平調整するような案が出されてきましたけれども、あの考え方についてはどのようにお考えになっていますか。
(答)これは最低保障年金的なものや基礎年金的なものをもらっている方でものすごい高い年金をもらっている方からちょっとはがして、年金額が小さい方に移動させる。これは高齢者間の共助という考え方ではないかと思います。「自立応援年金」という名前がついていますけれども、高齢者間での給付の移動を行うもので、よく考えられた案だと思います。
(問)片山大臣が、地方の問題を取り上げるとすぐに金を何%持っていくという話になって、くだらない議論になりがちだと発言されています。また、ある政務官は、地方主権は福祉の敵と発言されたとの指摘もありましたが、民主党は、伝統的に憲法25条の理念を非常に尊重して、国の責任を重く見る姿勢が強いと思います。大臣は、財源論ではなくて、社会保障においてどういう役割分担をしたらいいかということについて、どうお考えになっていらっしゃいますか。
(答)社会保障の中で、国の役割というのは、年金の継続性を保障するとか、年金で集めたお金をきちんと管理するとか、制度を構築するとか、それから給付を行うこと。医療については、保険制度をしっかりとつくるとか、現場では国立病院、ナショナルセンターの運営などがあります。しかし、実際は、医療・介護は地方自治体がやっておられるのが非常に多いわけで、やはり地方自治体の現場のご意見というのはきちんと聞く必要があると私は思っています。
 ただ、今日、総務大臣が言われたのは、現場の方が、医療や介護を実施しているときの制度から来るいろいろなご苦労などの話をまず聞くべきであって、最初から税源の分配の方法の話をするのは、あるべき順序ではないということをおっしゃっただけだと思っています。

(以    上)