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国土強靱化:私のひとこと special.8

強くしなやかに支え合えるコミュニティをどうつくるか?

(国土強靱化ワークショップ(第1回))

災害時に支え合えるコミュニティを日本全国に増やしていくために、平成29年度第1回のワークショップは、地域の防災・減災活動等のリーダーを集め、地方都市での開催に向けた「災害時に強くしなやかに支え合えるコミュニティを地域につくろう!」をテーマとして平成29年8月26日東京都にて開催しました。


第1回国土強靱化ワークショップ(東京)参加者で集合写真

地域に根付くつながりをつくるには?~

株式会社studio-L代表取締役の山崎亮氏より、地域に根付くつながりをつくるためのご自身の工夫や、見落としてはならない点を中心にお話いただきました。 山崎氏は、コミュニティデザイナーとして全国各地で地域の活性化やコミュニティ活動の支援に取り組んでいらっしゃいます。お話の前には、参加者に対してお話の希望テーマを尋ねて場を和ませられるなど、会場自体が笑いに包まれる中で始まりました。
 最初のお話は、公園でのパークレンジャーについて。新たに整備される公園で、地元の市民の有志がチーム組織をつくり、心を込めて直接手入れしていく仕組みを考案されたそうです。活動する中で、市民自身が森を歩き、地域の歴史や文化を理解し、その上でどういう森や公園にしていくかを自ら考えていける機運が徐々に高まりました。その後、公園の中に道をつくる人、農園をつくる人、カフェをつくる人などが活動するようになっています。現在は10年が経過し、パークレンジャーは300人にのぼるそうです。
 公園というハードをつくることだけを目的にするのではなく、「みんなでつくり、守るコミュニティ」を育みながらつくっていくこと。時間はかかるが人々に親しまれる公園となりました。人々のつながりが長年かけて育まれ、根付いたプロジェクトの事例から、人々の活動やつながりがまちを守っていくという考えを学ぶことができました。
 続いてのお話は、台湾東部での台風被害からの復興に向けた住民どうしの話し合いについて。「これからの地域の農業をどうするか?」、「どういう農産物を育てて生計を立てていくか?」について住民どうしが真剣に話し合う様子を紹介いただきました。現地では、栽培する農産物を米にするか、果物にするか等を具体的にイメージして、「どちらの方が売れ行きは良いか?」、「どちらの方が鳥から農産物を守る手間がかかるか?」といったことなど、地域の復興の将来像が話し合われたそうです。
 山崎氏は、その話し合いを聞き、収穫量や売り上げ、生産性といった観点も大切だが、災害を受けて再び農業を始める地域の意気や、そういう地域で産まれた農産物のブランド力もあわせて考えることが大切だという視点のお話をされたそうです。
 この地域では、被災した環境という「課題」の中で、そもそもこの地域は今後どのような「生き方」をしていくのかを考え、その上でどういう農産物を生産していくかという「解決策」を話し合うプロセスが重要だという考え方を指摘されました。
 「課題を知り」、「どうしていくか」を考え、「解決策」を見いだす。山崎氏のお話は、すべての参加者にとって、それぞれの地域でのコミュニティの課題、防災・減災上の課題をどうとらえていくかについて改めて見つめ直すきっかけとなりました。

コミュニティの地域リーダーに大切なことは?~

参加者は地域で防災・減災活動等をリーダーとして実践している方々。各自の経験や山崎氏のお話を聞いて、参加者どうしの話し合いから共通して浮かびあがったのは、「つながり」。災害が起きたときに声をかけることは大切だが実際にはなかなか難しいので、普段からコミュニケーションがあればよいのではないかということ。コミュニティには色々な価値観の人々がいて、被災経験の有無だけでなく、それぞれの生き方があること。正解は一つだけではなく、それぞれが持つ多様な考え方を認め合えることが大切。参加者がそれぞれの地域で活動している具体的な防災活動のアイデアではなく、もっと根本に必要なことに参加者全員が気づきました。
 このほか、山崎氏のお話での「課題」受けて、多くの参加者が「自分ごと」に置き換えていたのが、地域での防災・減災について。「私たちの街は大地震の発生が心配されるという課題の中、どのようにコミュニティづくりを進めると良いか?」などは、話し合いにより直ちに「解決策」は出ませんが、皆が共感しました。


コミュニティづくりについて考える

今回のワークショップの参加者は、今後、各自の地域において地域リーダーとして、防災・減災に関するワークショップを企画・実践していただくため、地域のコミュニティに必要なことは何か、また、そのコミュニティをつくるために参加者が地域リーダーとしてどのような活動をしていけば良いのかについてディスカッションしました。
 参加者は、先ほどの話し合いを受けて、自分の地域のコミュニティの現在の状況を改めて振り返り、今後の方向性の知恵を出し合いました。まずもって「防災」というものを忘れてはいけないという基本を確認した後、「過去に災害を経験した当時の失敗をふりかえることよりも、その時の工夫や成功をふりかえる『自慢合戦』が将来につながる」、「郷土を愛し、地域を知る必要がある。『地縁』に加えて『知縁』が必要ではないか」、「地域内のつながりで途切れがちなこどもの居場所が必要だ」といった、様々な意味の気づきにつながりました。
 その後、グラフィックレコーディングにより可視化された「気づき」をもとに、今後地域に帰ってから行うワークショップ具体的な中身を話し合いました。「知識を学ぶ」、「非常食の体験」、「まち歩き」、「グッズづくり」といったアイデアが次々出されました。
 可視化することでさらに具体的な活動が浮かびだしてきました。「災害時の食事となると、日頃の『乾物を使った料理』や、よくやる『手抜き料理』が防災上役に立つ!」、「防災グッズは『100円ショップ』の商品でも役に立つ!」、「こうした展示・紹介は『学園祭』に持ち込めば学生世代にも受ける!」。会場は納得と笑いに包まれました。
 参加者のアイデアのひとつひとつには、自分の地域でこうしたワークショップを行うのだという意気込みがあふれていきました。


ファシリテーションを学ぶ

今回のワークショップは、参加者の話し合いをグラフィックレコーディングで可視化しました。話し合いの結果だけでなく、プロセスも「見える化」する。そうすることで、参加者がその時に気づいたことや考えたことを、最後に皆で共有し、振り返りもできる「工夫」を仕掛けています。
 コミュニティづくりを進めるために、そもそも「工夫」にはどのようなものがあるのか、どのような場面で使うのか。皆がそれぞれ当事者となって話し合いに参加してもらい、行動へ結びつけるにはどのように導くのか。こうしたファシリテーションのノウハウを学びました。
 まず、ファシリテーションとは何か。今回進行したプロのファシリテーターから、「場をつくる」、「話し合いの仕掛けをつくる」、「話し合いの舵を取る」、「合意を取る」など、ファシリテーションの役割についてお話をいただきました。
 ワークショップを進める上での「工夫」については、まずは「話しやすい環境をつくること」。ゆったりとした空間で、お互いの顔が見え、メモが取れるように紙やペンがあることなどです。
 2点目は、「グラウンドルールを設定すること」。この場でどういう話し合いをしたいかの前提を共有することで、参加者皆が同じ方向を向いて話し合うことができます。
 3点目は、「チェックイン・チェックアウト」。乗客が同じ乗り物に乗り込み降りていくように、参加者が同じ意識をもってワークショップに臨めるよう、「なぜ参加したのか」の問いかけや、「参加した成果」を振り返る場を設けます。
 その他の工夫には、「聞く時間と話す時間を交互にすること」。参加者がある話題を聞くなど情報が入ってきたところで、すぐに話す時間を設けて吐き出してもらう。吐き出したら、次の話題を吹き込む。このリズムにより、参加者の話し合いはスムーズになります。
 さらには、「大切な問いを投げかけること」。今回のワークショップでも、「コミュニティの地域リーダーとして大切なことは?」、「何ができる?」といった問いかけを行うことで、場づくり、話し合いの方向性を持たせることができます。ただし、問いかけの言葉一つを変えると話し合いの方向性が変わるので慎重に臨まねばならないこと。
 最後にファシリテーターが強調したのは、「活動を可視化しよう」。グラフィックレコーダーによるだけでなく、付箋紙を貼り出したり、お互いのノートを共有したりすることで、終わった後も議論が深まります。

地域での活動計画づくり~参加者による自主ワークショップ~

参加者は今後、自らが企画・実践する「地域自主ワークショップ」に向けて、それぞれの構想を話し合いました。
 テーブル上の模造紙にアイデアを書き出し整理しようとするグループ。まずは隣同士の小グループで話し合い、最後に皆でアイデアをまとめ上げていくグループなど、参加者の自主性で話し合いが進んでいきました。
 「様々な人々のネットワークを構築したい」、「地域固有の災害特性の理解を広めたい」、「地域リーダーそれぞれがつながることが大切」、「過去の被災経験を共有し伝えていきたい」、「世代間が交流し、情報通信技術を使ってみたい」といった、ワークショップの「テーマ」がグループごとにまとまっていきました。
 「テーマ」をもとに、どういう「内容」とすればよいのか?「災害経験者からインパクトある話題提供」、「災害時の初動行動を参加者全員で模擬実践する」など、具体的な進行を話し合っていきました。
 さらに、「県内の○○市だと、集客が見込めるから、私たちが一緒にワークショップを進行しよう」といった運営関係も含めて、グループごとに「活動計画」がまとまりました。
 災害時に強くしなやかなに支え合えるコミュニティを地域につくるため、どのようなコミュニティが必要か、どのようなワークショップを行う必要があるのか。参加者それぞれが新たな気づきを発見し、行動のきっかけとなる時間となりました。

#つながり #コミュニティ

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