内閣官房ツイッター
キーワード検索


 トップページ > 各種本部・会議等の活動情報 > 国土強靱化 > 広報 > 国土強靱化:私のひとこと special.18

国土強靱化:私のひとこと special.18

防災活動に活きる私のちから
レジリエンス×発見

(国土強靱化地域自主ワークショップ(広島会場))

平成30年1月21日、広島県広島市において、「防災活動に活きる私のちから」レジリエンス×発見をテーマとして、5回目となる地域自主ワークショップを行いました。
 国土強靱化地域自主ワークショップは、平成29年8月26日に東京で行われた第1回国土強靱化ワークショップに参加された各地域の「地域リーダー」が行うものです。
 「地域リーダー」とは、地域での防災・減災活動を自主的に行い、平時から様々な組織等とコミュニケーションを取り、中心となって活動していただいている方です。
 その方々が防災、減災等のテーマについて自ら企画立案した形で、国土強靱化地域自主ワークショップを行っていただきました。


国土強靱化地域自主ワークショップ【広島会場】参加者の集合写真

地域自主ワークショップの自主的な企画づくりのプロセス

今回のワークショップでは、「防災活動に活きる私のちから」レジリエンス×発見をテーマとして、安全・安心して暮らせる地域をつくるために、自分が貢献できることは何か。参加者自身が日頃得意なことは何かについて気づいてもらい、他の参加者との話し合いを通じて、防災・減災活動にも自分が貢献できることを考え、実践していくプランを作る。また、その中でつながりを強めていくことを目指したものです。

地域自主ワークショップ【広島会場】の開催趣旨 ~防災活動に活きる私のちから~

ワークショップの冒頭では、今回のワークショップの趣旨を、地域リーダーより説明しました。防災・減災活動の必要性は理解できるが、どう進めると良いかわからない。自分ができることは何か。日頃からの防災・減災活動や災害救援で活動されている話題提供者からお話しを伺った上で、参加者どうしがインタビュー形式で話し合い、それぞれが得意なこと、できることは何かについて、強み発見ワークという形で考えていただき、気づいてもらいたい。あわせて、それを通じて人々のつながりづくりにつなげたいという趣旨が説明されました。

話題提供: 防災の活動に活きる自分の力を話題提供から伺おう!

話題提供として、社会福祉法人呉市社会福祉協議会の近藤吉輝氏から「備えあれば憂いなし~防災・減災は日常生活の延長線上に~」と題して、お話しいただきました。
 近藤氏が日頃活動する広島県呉市は、自然災害が発生してその地域に甚大な被害が発生した場合に災害復旧や救援活動に対して国が補助を行う「災害救助法」が過去に4度適用された経験がある地域です。呉市が過去に被災地となって地域外から支援を受け入れた経験や、その経験を活かして近藤氏自身が他の地域での災害で被災地を支援した経験等を踏まえ、「支援者として何ができるか」とともに「自分が被災しないためには日頃から何をすべきか」等についても、日頃から啓発しています。

お話では、まず「クロスロード」という取り組みを用いて、参加者らに考えるきっかけを与えていただきました。「クロスロード」とは、大学教授等の専門家らが近藤氏とともに開発したカード形式の話し合いのツールの一種です。参加者らはあらかじめ配布された青色と赤色のカードを1枚ずつ持っており、近藤氏が投げかけた質問に対して、参加者それぞれが「イエス」と考えれば青色を、「ノー」と考えれば赤色のカードを挙げてもらう要領で始まりました。
 最初の質問は、「あなたはボランティアです。活動をしていたら地元のおばあさんから地元銘菓の饅頭を渡され、食べて疲れを取ってほしいと。あなたは食べますか?」会場全体はしばらくの沈黙の後、近藤氏の呼びかけで参加者全員が一斉にカードを挙げました。「イエス」の青いカードを挙げる人、「ノー」の赤いカードを挙げる人は、それぞれちょうど半々くらいでした。迷いながらカードを挙げている参加者もいる中、近藤氏は「イエス、ノー、どちらも正解」と示しました。「イエス」となる理由は、例えば、せっかくの善意をいただいたのだから饅頭をいただき食べようと考えたから、「ノー」となる理由は、例えば、饅頭をいただくとボランティア活動に対して住民からお礼をもらうという誤解につながるからなど、参加者が考えるであろう様々な理由を例示しました。
 こうした質問は、参加者の知識や理解度を試す問題ではなく、参加者自身が実際にその立場になった際にどう考えるかの足下を振り返ることに意義があるのだと解説しました。この一つの質問を参加者全員で考えるだけでも、被災地での災害ボランティア活動の様々な側面を学ぶことができました。

次の質問は、「あなたは食糧担当の行政職員です。災害発生から数時間が経過し、避難所には3,000人が避難しているとの情報が入ってきましたが、現時点で確保できている食糧は2,000食限り。配りますか?」参加者が持っている「イエス」の青いカード、「ノー」の赤いカードを挙げる人が半々に分かれました。もちろんどちらも正解。近藤氏は、それぞれの理由として、行政としての公平性の原則や効率性の原則といったジレンマがあることや、近藤氏が別機会の研修会で同じ質問を投げかけた際に、10年前と最近では参加者の解答の傾向もずいぶん変わってきたことなどを解説しました。
 被災した現場で起こっている様々な状況に対して、災害ボランティアの立場からできること、行政の立場からできること等を参加者に考えてもらうことにより、災害ボランティアの特徴は、行政がやりたくてもできないことを民間として肩代わりできることを近藤氏は強調しました。
 「クロスロード」で近藤氏が参加者に投げかけた質問は、経験的な事実に即して用意したものであり、「実話」としての力があることや、参加者に対して「自らの問題」として積極的に考えさせた上で「イエス」でも「ノー」でも正解といったように、多様な価値観や対応を認識させ、意思決定に必要なことは何かを考えさせる力があること、意思決定に向けた参加者どうしの話し合いで、災害時の対応に備えた事前の合意形成が可能です。参加者は、「クロスロード」を通じて、災害時の様々な状況や人々の役割など多くの気づきを得ました。
 次に近藤氏が話したのは、災害ボランティア全般について。一言で「災害ボランティア」と言っても、発災からの時間経過に応じて活躍する内容は大きく異なり、時々刻々変化していきます。初期の段階では、被災した人々に対して避難所で世話することや、被災した家屋の片付け作業する活動がイメージできますが、時間が経過すると、仮設住宅や復興のまちづくりを支援するボランティアが登場します。
 そして、「災害ボランティアセンター」には2つの役割があり、一つは「被災して支援を求める人」と「ボランティアとして活動したい人」をつなぎ、支援の仕組みをつくるという役割。もう一つは、支援の隙間を埋めていくという役割。平成13年に呉市が被災した芸予地震の際、行政が断水した地域へ給水車を派遣し、行政としては精一杯の努力を行ったのですが、被災した自宅から給水車が停まっているところまで水を汲みに行けない家庭は多くいました。その際、水が入ったポリタンクを家庭へ届けるボランティアが必要で、災害ボランティアセンターが実際に組織したのだそうです。
 ここで大切なのは、私たちが助ける側に立った際、見ず知らずの人が「困った、助けて」と声をかけて来たとき、実際に助けることができる人は多いのだそうです。しかし、近藤氏のこれまでの災害支援活動の経験によると、助けを求めることができる人は少なく、「助けてほしい」と声を上げられないという実態があります。つまり、支援する側は被災した側に立って行動することが重要です。津波で泥だらけになったタンスは「災害ゴミ」にしか見えなくても、家族の思い出が詰まった大切なものなのです。「泥を見ないで人を見る」ことが大切なのです。被災地での活動は、ボランティアをする側にとっては、「泥をかき出す」や「がれきを片付ける」という視点になりがちですが、被災者の側からみると「心配してくれる人がいる」ということに救われたという気持ちが多い実態があります。これは災害時に限らず、日々の生活にも通じており、災害時の対応は普段の生活の延長線上にあります。  最後に、近藤氏は様々な写真を示しながら、実際に災害が発生したら、老若男女を問わず活躍の場があり、過去の災害の際に小学生も活躍していることを話しました。災害ボランティアは、泥のかき出しやがれきの撤去、避難所での炊き出しだけでなく、看板を作る、子どもの遊び相手、ペットの世話、専門知識や資格を用いた医療や看護、翻訳、そして何より被災者の話し相手といった相手にそっと寄り添う活動も大切だということ。どんな人だって被災した人々の心の支えになってほしいと結びました。
 学校の教員、介護施設の職員、土木技術者、学生など様々なジャンルの参加者各自にとって、近藤氏のお話しはそれぞれの立場や活動する地域での防災活動のきっかけや貢献の機会を見いだすひとときとなりました。

参加者対話: 防災活動に活きる私のちから、強みって何かを考えてみよう!

近藤氏からの話題提供を受けて、参加者は防災活動で自身がどのように活躍できるかを考える土台として、まず話題提供を聞いて感じたことをグループごとで対話しました。
 「災害ボランティアにそのような活動があるとは知らなかった」、「人々に物資を配布するためには、一度貯め込む場所がそれほど必要とは知らなかった」、「ボランティアに頼むことは恥ずかしいという考え方は知らなかった」、「災害時に支援したいと思う人は多そうだが、日本全体では実際にどうなのか」、など、参加者それぞれが気づきを話しました。 また、話し合いを通じて、災害時の様々な実態や側面があるということだけでなく「人それぞれのちから」への着眼に参加者皆が気づいていました。

グループワーク~強み発見ワーク~:私のちから、強みは防災にどう活かせるのかみんなで見つけよう!

続いて、参加者一人ひとりはどのような活躍ができるか、何を活かして、どのような得意を活かして活動できるか。それらを考えていく「グループワーク」が始まりました。
 とはいえ、参加者一人ひとりが「自分の得意」にはなかなか気づかないものです。そこで、まずは参加者少人数どうしでインタビューしあいながら、ひとりひとりの個性や環境を聞き出すことから始まりました。「あなたが住んでいる地域のいいところを3つ教えてください。」、「最近楽しかったことは何ですか?」、「自分が落ち込んだとき前向きになるために何をしますか?」といった具合で、自分や生活環境の自慢から日々自分が行っている工夫を話してもらい、最後に自分の特技を見いだす流れで互いに質問しあいました。

少人数でのインタビュー結果は、グループ内の全員の間で「他己紹介」の要領で共有しました。「神楽の舞が好き」、「仲間と一緒に食べる昼食時間が日々の楽しみ」、「こどもとゲームをして勝った瞬間がたまらない」…。個々のインタビューをビジュアルファシリテーターがグループごとに模造紙に「見える化」し、その人の「ひとことキャッチコピー」も加えられていきます。「誰にでも好かれる人」、「何でも教えてくれる」など、参加者の多くは、模造紙の「見える化された自分」を見て、ほほえみながら、納得していました。

次に、インタビューをもとに、参加者それぞれの個性や特技は、防災・減災のどこで貢献できるかを考えていきました。近藤氏のお話にもあった「本当は困っているのだが、『困った』とは自分からなかなか言い出せない人に何ができるか?」、「その人に何ができるか」ということを具体的に考えるために、いくつかの「場面」を想定して話し合いました。

  • ・炊き出しの人数が足りません、料理も何をしたら良いのかわかりません。
  • ・海外の方と話ができず情報が伝えられません。
  • ・仕事に行かないといけません、でも子どもがいます。
  • ・気力がありません。
 仮にこのような人が自分の前にいたら自分は何ができるか?自分ひとりでなくても、本日のワークショップの参加者5人一緒であれば、このような人に寄り添えるのではないか?各グループでは、「この場面なら、●●さんの●●の経験を活かして支援できる!」、「●●さんと●●さんが一緒であればできる!」といった発見が相次ぎました。

発表~PRポスターづくり~:私はいざというときにこう活きる!PRポスターをみんなでつくろう!

これまでの「強み発見ワーク」での話し合いの中で、参加者それぞれの個性や特技、互いの紹介を通じて新たに見いだされた特徴を「キャッチコピー」として、ビジュアルファシリテーターが似顔絵とともにまとめていきました。さらに、「困った人に何ができるか」も書き加え、参加者各自の「ポスター」が仕上がりました。

  • ・「あなたのまちのアンパンマン」:自身の元気さが皆さんにパワーを与えるということで、周りの参加者につけてもらったとのことです。
  • ・「届けます女性の声、つながりますおじさまたちと」:仕事で情報の整理や取りまとめを多く手がける特技を活かしていくとのことです。
  • ・「やるぞ、防災教育。つながる子どもたち」:学校教諭の参加者の強い宣言がまとめられました。
  • ・「どんどん飛び回る」:自身は若くて体を動かすのが好きなので、どこにでも行って活動していく気持ちを言葉にしたとのことです。

ワークショップの最後に、近藤氏から感想をいただきました。
 災害で実際に被災した方は、「まさか自分がこんな目に遭うなんて。こんな目に遭うならもっと備えておけば良かった。」と、皆さん口をそろえて言います。だから、普段の生活の中で、「まさかに備えた普段」が必要です。一方、安全と安心を求めた活動には終わりがありません。終わりがないからこそ息切れしない工夫が必要で、「普段これをやっているから、いざというときはこのように活躍できる」ということは大きな発見だったとお話しいただきました。
 参加者ひとりひとりが、「ポスター」を手に、自分のちからと防災・減災への手がかりを確かめ合いました。

#つながり #コミュニティ

< special.17 国土強靱化ワークショップ(第6回) index special.19 国土強靱化ワークショップ(第7回)
ページのトップへ戻る