2015年4月から、葛尾村の仮設役場に派遣され働いています。葛尾村は、原発事故の影響で全村避難の指示が出ている地域です。およそ1,500人の村民のうち、半数ほどが仮設住宅に住まわれています。2016年の帰村を目指す村をサポートし、皆さんが安心して戻れる環境を整えることが、私たち復興庁の使命。たとえば、現在は仮設住宅等から村へ一時帰宅するためのバスを運行していますが、4年近く放置されていた道路は、そのままでは安全に使用することができません。日常的に使われている道路であれば通行の邪魔になるほど草は生えませんが、年単位で使われていなければ雑草も伸び放題、道路に飛び出すほど大きくなっている木もあります。

住民の方が出入りするのに支障となる木は切断し、見通しが悪くなる草は除草しなければなりません。このような生活に密着した事業以外にも、村が計画している事業について、国や県の復興支援事業を最大限に活用できるよう検討しながら、実際に村の復興を進めていくことが、私の主な仕事です。まったく初めての業務なので戸惑うことも多いですが、少しでも村の皆さんの役に立てるよう、日々勉強しています。

この仕事でいちばん大切だと思っているのは、村の方々にとって『本当に必要な』支援を行うこと。望まれていない事業に予算を費やしても意味がないですから。私は2015年の4月に着任したばかりなので、今は主に役場の方から、やりたいこと・必要なことをお聞きしている段階です。今後はもっと多くの村民の方とコミュニケーションをとり、本音を話してもらえる関係性を築いていきたいですね。大変なことや課題も山積みですが、感謝の気持ちを言葉にしてくださる方が多いので、やりがいも大きいです。

時には言葉だけでなく、野菜の苗をいただいたりもするんですよ。皆さんはもともと農家の方が多いので、プランターの土の盛り方や肥料のやり方をご指導いただいたりして。久しぶりで忘れちゃったよなんて言いながらも、楽しそうに教えてくださるので私も嬉しいです。やっぱり村に戻って土いじりしたいんだろうなと思うと、復興に向けた仕事への意欲もますます湧いてきますね。

私はもともと農林水産省の出身で、復興庁には出向という形で来ています。復興庁にはいろんな省庁から多くの方がいらっしゃっているので、非常に勉強になります。今までとは違う仕事のやり方も身に付きますし、単純に刺激も多いです。そういうやり方があるのかと、驚くことも少なくありません。また、復興にはスピードも求められるので、その点においても多くの省庁から人が集まっていることは効果が高いと感じています。

あの領域はこの人に聞けば詳しい、この事業はあの省出身の方からお願いしてもらおう、と、即時実行につなげられる体制を築けていると思います。葛尾村は2016年の帰村目標を掲げていますし、全員の力を結集してなんとか実現したいですね。

大学で地域経済学を学んでいて、中山間地域の経済性では測れないような内面的な豊かさをテーマに研究していました。そういった魅力をもっとみんなに知ってもらえたらと思って農林水産省に入ったんですが、ここに来るまでは総務的な仕事がほとんどで、まさかこういう形で中山間地域の方々と関わる現場に携われるとは思ってなかったですね。ただやはりマイナスからのスタートであることは事実なので、本当に難しいなとも感じています。渓流釣りや山菜採りといった地域の魅力も、現在は失われています。

少しでも元通りの生活に戻すためには、やらなきゃいけないことは数限りなくあります。それでも、宅地除染や道路除染も進んでいますし、昨日より今日、今日より明日が良くなっていることは間違いありません。乗り越えるべき壁はまだまだ多いですが、村の皆さんが震災前のように安心して暮らし、元気に農作業に打ち込んでいただけるよう、復興に向けて全力で取り組みたいと思います。

福島県出身。大学では経済学を専攻し、地方における『経済性では測れない豊かさ』についての考察を深める。1999年に農林水産省に入省、山形での備蓄米の管理や東北農政局での総務関係事務・契約事務に従事したのち、2015年4月より現職。慣れない環境ながら1日も早い復興を実現するためにまい進する日々を送る。避難されている村民の方々をサポートする立場ではあるが、「ありがとう」の言葉で逆に元気をもらうことも多い、と語る。