おわりに


 国家公務員の新たな人事評価システムについての一般的・総合的な検討は、本報告書をもって終了し、今後の個別的検討は、制度所管官庁が、実際の人事管理を担う各省庁等と協力して、本報告書における提言を個々の職場に適用することに関する具体的な検証を行う等、政府全体として行われることとなる。
 本研究会における検討はこれで終了するが、最後に、政府全体としての検討に向けて、何点かお願いをしたい。


 まず、国家公務員の人事評価は、単に各省庁等においてその職員を評価するというものにとどまらず、国民の視点から評価を行うものであることに、改めて留意していただきたい。
 国家公務員は、国民の負託を受けて働くものであり、その人事評価に対して、国民が、「国益ではなく『省益』のために働いた国家公務員が評価されているのではないか」、「国家公務員については、人事評価が行われておらず、『休まず、遅れず、働かず』で足りるのではないか」、「国家公務員は、働いても働かなくても、その人事評価は結局同期横並びなのではないか」等の疑念を抱くようなことはあってはならない。
 国民の疑念の中には、国家公務員の実情に関する政府の説明が不足していることに起因するものも少なくない。新たな人事評価システムの整備に当たっては、国民に対して分かりやすく説明を行い、その理解を得つつ進めることが不可欠である。


 次に、人事評価は、それ自体が目的となるものではなく、公務能率の増進のための手段の1つであるということを忘れないでいただきたい。
 人事評価は、実施すれば足りるというものではなく、各職場や職員の理解を得て、公務能率の向上につながるものとなっていることが必要である。したがって、新たな人事評価システムを導入するに当たっては、各職場や職員の間に、「人事評価は手間だけかかって意味がないので、適当にやっておけばよいのではないか」、「人事評価を行っても人事当局、評価者及び被評価者にはメリットはないのではないか」といった誤解や疑問が生じないよう、各職場や職員の理解を十分に得ることが不可欠である。
 その際、特に、新たな人事評価システムは、種々の議論のあった従来の勤務評定制度を抜本的に見直した新たなシステムであることについて、理解を得ることが必要である。このため、本研究会における討議では、従来の勤務評定のイメージにとらわれないよう、こ
の名称を用いずに、基本的には、人事評価という名称と広い枠組みの中で検討を行ったが、同様に、新たな人事評価システムの導入の際において、現行の法令等における勤務評定の名称を見直すこととすることも検討に値するものと考える。


 最後に、人事評価システムの運用・活用については、その精度や弱点を踏まえた上で、これを運用・活用するという姿勢に立っていただきたい。
 人事評価システムを過信することも問題ではあるが、評価結果に対する被評価者の同意・納得を文書等により個別に得ることとしていない等の人事評価システムの論点ばかりに注目して、これを運用・活用することなく、日常の心証による評価のような主観的な評価に頼ることや、年次を過度に重視した人事運用を行うことは、更に問題である。人事評価システムを導入し、その精度や弱点を踏まえた上で運用・活用し、実施状況をフォローアップしつつ、随時修正を施していくという積極的姿勢に立っていただきたい。


 新たな人事評価システムに関する今後の政府における検討とその円滑な導入に期待する。
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