V  新たな人事評価システムの導入に向けて


 これまで、新たな人事評価システムの在り方に関する提言を行ってきた。しかし、新たな人事評価システムが、組織のパフォーマンスの向上を生み出すためには、評価者、被評価者及び人事当局が、新たな人事評価システムについて、一定の信頼感を有していることが不可欠である。
 したがって、新たな人事評価システムは、これを単に機械的に導入・運用すれば足りるというものではなく、組織としての信頼感を確保しつつ、弾力的に導入・運用することが適当である。このため、各省庁等においては、次に示す指針に沿って、これを適切に導入・運用していくことが必要である。
 もちろん、新たな人事評価システムの導入を進めていくに当たっては、これと併せて、国民の理解を確保することが重要であることは、言うまでもない。

1 新たな人事評価システムの導入目標
   
   新たな人事評価システムを導入する際、当該システムに対し、評価者及び被評価者が不安を抱くことのないよう、その導入の目標をできる限り明らかにすることが必要であり、例えば、後述するような新たな人事評価システムの担うこととなる役割、当該システムの概要等について、職員に対して明示すべきである。
   
2 導入に当たっての当面の指針
   
   新たな人事評価システムは、「適材適所の人材配置」、「的確な昇進管理」、「適切な処遇」、「職員の育成・自己啓発促進」、「職員の勤務意欲の向上」を基本的役割としている。
 しかし、新たな人事評価システムについて組織としての信頼感を確保する上で必要な場合には、各省庁等の組織や業務の特性等を踏まえつつ、当面、「適材適所の人材配置」、「職員の育成・自己啓発促進」及び「職員の勤務意欲の向上」を新たな人事評価システムの役割とし、以後、その実施状況や定着度等を踏まえつつ、適宜役割を拡大していくこととすることも適当である。
 また、組織としての信頼感を確保するとの観点から必要な場合には、各省庁等の組織や業務の特性等を踏まえつつ、当面、新たな人事評価システムの対象を管理職のみとしたり、一部の職員には当該システムの一部のみを適用したりすることとし、以後、その実施状況を踏まえつつ、適宜対象を拡大していくこととすることも適当である。
 なお、これらの場合、導入した新たな人事評価システムの運用状況を、一定期間ごとに把握し、拡大の必要性・妥当性等を定期的に検討することとすべきである。  
   
3 新たな人事評価システムの導入の進め方
   
   新たな人事評価システムを導入する場合、各省庁等の組織や業務の特性等に合わせて、前述のように人事評価システムの役割や対象を定めるとともに、評価項目、評価基準等の新たな人事評価システムの細部を決定することが必要である。
 また、導入に際しては、労働基本権が制約されているという国家公務員の事情の下、民間部門で行われている労使協議の事例も参考に、『公務員制度調査会』の『労使関係の在り方に関する検討グループ』における労使関係の在り方に関する検討状況等をも踏まえつつ、労使で十分な意思疎通(コミュニケーション・ディスカッション)を図り、相互信頼関係の維持を図っていくことが必要である。
   

 
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