IV 新たな人事評価システムの設計


1 人事評価システムの基本要件を実現するための仕組みの整備
       
  (1)  新たな人事評価システムの透明性・納得性を向上させるための仕組みの検討
       
    1.  仕組みの要件
       
       新たな人事評価システムにおいては、その公平性、客観性、透明性を確保するとともに、その納得性を高めることのできるような仕組みを整備することによって、システムに対する信頼感の向上を図ることが必要である。
       
    2.  仕組みを作る方法
       
       新たな人事評価システムの透明性・納得性の向上を図るため、人事評価の前段階として、被評価者による自己評価・自己申告を行うこととし、これを参考としつつ、評価者が人事評価を行う仕組みを導入することが適当である。この場合、現在のポストやこれまでのキャリアパスへの適性、他の業務や上位の官職への適性等について、被評価者自らが評価を行い、これを踏まえて評価者がコメントを付すこととすることが望ましい。
 なお、特に管理職等については、後述の多面評価について、評価者である上司による人事評価を補完する評価として、これと並行して実施するのではなく、評価者である上司による人事評価の前段階の評価として実施し、その結果を参考としつつ評価者が人事評価を行うこととすることも可能である。
 また、職員の業務遂行に当たって求められる業績等の基準である役割期待を認識させるとともに、人事評価システムに対する納得性を高め、さらに評価を職員の自己啓発等に役立てるとの観点から、評価項目・評価基準の職員への公開や、評価結果の被評価者への伝達についても検討すべきである。
       
    3.  仕組みの整備・運用上のポイント
       
       新たな人事評価システムの透明性・納得性の向上を図るための仕組みについては、各省庁等の組織や業務の特性等を踏まえ、必要に応じ、個別の仕組みを弾力的・段階的に導入していくことを可能とすべきである。
 また、評価項目・評価基準の公開や評価結果の被評価者への伝達のための仕組みの整備に関する検討を行う際には、各省庁等の組織や業務の特性等を踏まえるとともに、多数の被評価者を抱えている評価者にとって評価面接は相当程度の事務的負担となること、必要な評価結果を被評価者に伝達する場合には評価者による人事評価そのものが甘くなる可能性があること等の実情を考慮に入れて慎重に検討すべきである。
       
  (2)  新たな人事評価システムの統一的運用を図るための評価者訓練の実施・充実
       
    1.  評価者訓練の必要性
       
       新たな人事評価システムにおいて、評価者によって人事評価の視点等が異なり、評価結果に不均衡が生じることのないよう、評価者による人事評価の統一的な運用や評価手法の適切な理解を確保することが必要である。
 このための方策としては、従来、評価手法や評価基準に関する簡単なリーフレット等を評価者に対して配付することが中心であり、評価者に対する指導としては必ずしも十分なものとは言えなかったのが実情である。このため、新たな人事評価システムを導入する際には、評価者訓練を本格的に実施することとすべきである。
       
    2.  評価者訓練の方法
       
       新たな人事評価システムの導入に当たっては、その統一的かつ公正な運用を確保するとの観点から、原則全評価者を対象として、組織における人事管理の基本的考え方、人事評価を実施する意味、人事評価システムとその手続及び人事評価システムを運用する際における評価誤差を防止するための手法等を教育する評価者訓練を実施することとすべきである。
 なお、制度所管官庁及び各省庁等における評価者訓練に関する検討に資するため、別途、評価者訓練の標準的な方法を例示しているので活用されたい(資料2 42ページ参照)。
       
    3.  評価者訓練の整備・運用上のポイント
       
     評価者訓練では、外部の専門家を講師として招いたり、評価者訓練の設計や教材の作成に当たって外部の専門家と十分話し合うことによって、各省庁等の組織や業務の特性等に応じた評価者訓練を整備することが望ましい。
       
  (3)  人事評価に対する不満、不服、疑問等による苦情に対応するための仕組みの充実
       
    1.  仕組みの必要性
       
       国家公務員については、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき義務を負うという特性から、労働基本権が制約されていることを踏まえ、人事評価に対する不満、不服、疑問等による苦情に対応するための具体的な仕組み・制度は、このような事情を考慮に入れて総合的に検討されるべきである。
 現行制度上では、降給、降任その他の不利益処分について不服がある場合には、人事院に対して職員が不服申立を行い、これを受理した人事院が公平委員会を設置して対応することとされている。このため、職員について、不当な人事評価に基づいて不当な不利益処分がなされた場合には、当該制度によって保護されることとなる。しかし、新たな人事評価システムを円滑に運用していくためには、上記の制度のみでは必ずしも十分であるとは言えず、さらに、人事評価に対する被評価者の不満、不服、疑問等による苦情に対して弾力的に対応することのできる仕組み・制度の整備が必要である。
       
    2.  仕組みを作る方法
       
       新たな人事評価システムの導入に当たっては、基本的には、各職場内において、人事評価に対する不満、不服、疑問等による苦情に対応する仕組み・制度を整備することが適当である。
 例えば、各省庁等に苦情処理担当者、苦情対応委員会等を設置し、不満・不服・疑問等による苦情の相談を受け、処理をするような仕組み・制度を整備することが考えられる。また、評価者に対して人事評価に対する不満、不服、疑問等による苦情についての相談をすることができることとするとともに、それでもなお苦情が十分に解消されない場合には、当該評価者の上司等の当該評価者が行う評価について調整を行う調整者に対して相談をすることができるような仕組み・制度を整備することも適当である。
       
    3.  仕組みの整備・運用上のポイント
       
       相談をした職員が、相談をしたことによって不利に取り扱われるようなことは、国家公務員法に定める平等取扱いの原則等に反し、認められない。
 また、相談した者のプライバシーに配慮するとの観点から、書面、電子メール等による相談も可能な仕組み・制度とすることが適当である。
       
2 評価対象者区分
       
   新たな人事評価システムにおいては、人事評価システムの多様性を確保するとともに、公平かつ適切な人事評価を実現するため、職員の能力・職責、業務等に応じて適切な評価対象者区分を設けることが必要である。
       
  (1)  職員の能力・職責の特性に応じた区分
       
     新たな人事評価システムにおいて、評価結果をその育成に活用するためには、職員の能力・職責の特性に応じた区分による人事評価を行うこととする必要がある。
 例えば、国家公務員は、役職段階等に応じて求められる能力、職責が異なり、幹部公務員であれば、重い職責を有する管理業務を担当するため、一般職員に比して能力・業績を一層重視した人事管理の徹底が求められる。
 したがって、役職段階等による能力・職責別区分による人事評価を行うこととする必要がある。また、その際、一般的な考え方としては、能力・職責別区分の低い段階にある職員については、後述の業績評価に比して能力評価を重視し、能力・職責別区分の高い段階にある職員については、能力評価に比して業績評価を重視することとすべきである。
       
      (例)  役職段階を踏まえて、能力・職責別区分として能力養成期、能力拡充期、能力発揮期等の段階が考えられ、能力養成期(係員級)では能力評価の結果を重視し、能力発揮期(本省庁課長級)では業績評価の結果を重視することとする。
       
  (2)  職員の業務の特性に応じた区分
       
     各省庁等の所掌事務は多種多様であることから、個々の国家公務員の担当する業務は多岐にわたっている。このため、国家公務員について適切な人事管理を行うためには、その担当する業務の特性に応じた人事評価を行うことが必要である。
 例えば、行政組織の機能は、概念上、大きく分けると「企画立案機能」と「実施機能」に区分することができる。主として企画立案機能を担う部門では、多様で視野の広い柔軟な発想を有する人材や高度な専門性を有する人材等が特に求められ、また、主として実施機能を担う部門では、正確かつ迅速に業務を処理する緻密な人材や当該部門の業務に関する深い知識と技術を有する人材等が特に求められている。
 このため、新たな人事評価システムでは、職員の所属する部門の特性にふさわしい国家公務員を育成し、評価することを可能とするとの観点から、当該部門の担う業務の特性を踏まえた人事評価を行うこととする必要がある。
       
  (3)  特別の配慮が必要な区分
       
     評価期間中に公務災害等により休職した者、産前・産後休暇、育児休業、介護休暇を取得した者等については、不適正な人事評価となることのないよう配慮を行うべきである。
       
3 具体的な評価手法
       
  (1)  業績評価のための仕組み
       
    1.  業績評価のための仕組みの必要性
       
       職員について、働いた結果に対する適切な処遇等を行い、その勤務意欲の向上を図るためには、当該職員の業績を的確に把握する業績評価が必要である。
 現行の勤務評定制度では、業績の評価として、被評価者個人の仕事の量や正確性、迅速性等について、一般的・抽象的な評価を行うこととしているのが通常である。
 しかし、新たな人事評価システムにおいては、評価者の主観にとらわれない評価を徹底するとともに、職員の自主性・自発性を促進するとの観点から、具体的な個別業務の遂行に着眼して、その業績を評価することができるような仕組みが重要となる。また、職員の業績評価を行うに当たって、その革新的、積極的な取組みを促進し、減点主義的な評価とはならないような工夫が求められる。
       
    2.  業績評価の方法
       
       国家公務員の業績評価は、被評価者について、その役割期待を踏まえ、その成果達成度を測るという形を基本的な枠組みとすべきである。
 被評価者の役割期待は、その職務特性と期待成果から構成されるものであり、同一の部局に勤務する職員であっても、業務の内容や役職段階が異なる場合には、役割期待は異なることとなる。
 また、役割期待に基づく業績評価を的確に実施するためには、各省庁等の組織や業務プロセスの特性とその改革・改善状況に留意しつつ、個々の職員の役割期待を明確なものとしていくことが重要である。
 各官職ごとの役割期待を明確にする方法として、あらかじめ詳細な職務明細書を作成しておくという手法も考えられるが、作成に相当の労力を必要とするとともに、集団的かつ弾力的に行われる業務遂行に柔軟に対応することが困難であるため、適当な方法とは言えない。
 したがって、新たな人事評価システムにおいては、評価者である上司が被評価者である部下に対して割り当てた業務の目標を明らかにし、その達成度を測るという手法を、業務と職責の特性に配慮しつつ、例えば、自主的・自発的な業務遂行の促進が求められる幹部職員等を中心として、可能な限り導入することとすべきである。
 なお、制度所管官庁及び各省庁等における業績評価に関する検討に資するため、別途、業績評価の標準的な方法を例示しているので活用されたい(資料2 42ページ参照)。
       
    3.  業績評価の整備・運用上のポイント
       
       業績評価を適切に運用するためには、上司が可能な限り計画的な業務管理を行うこととするとともに、これに基づく適切な業務目標を設定する必要がある。また、自主的・自発的な業務遂行を促進するためには、評価者である上司が、面接の充実等により、被評価者である部下との間で業務目標の設定等について相談するとともに相互理解を図り、さらにその目標の達成度によって業績を評価する目標管理的手法を、弾力的に活用していくことが望ましい。その際には、業務目標がノルマ化する等により、職員の自主性が阻害されないようにすることが求められる。
 また、業績評価の運用に当たっては、採用試験区分やその専門区分等を問わず、同様の官職にある職員については、統一的な評価が行われるようにすることが必要である。
 さらに、この目標管理的手法の運用に当たっては、評価者は、組織目標と被評価者の個人目標の適切な連関性の確保、数値化が困難な目標の設定の適正さの確保、個人の業績の部局への貢献度の的確な把握、業務を取り巻く環境や事情の変化に応じた目標の適切な見直し、人事異動の際の目標の引継ぎ等について、常に配意することが必要である。
 なお、業績評価のための仕組みを整備するに当たっては、その効率的な運用を図るため、これをできる限り簡便な仕組みとすることが必要である。
       
  (2)  能力評価のための仕組み
       
    1.  能力評価の必要性
       
       各省庁等において適切な昇進管理や人材配置を実現するためには、その職員に関し、中長期的視点をも踏まえた能力及び行動特性について、『能力評価』を行うこととし、この結果を、人材育成、昇進管理はもとより人事管理全般に活用していくことが必要である。
 特に、今後、年次の逆転を含め、採用試験の種類、事務系・技術系の別、性別等にとらわれない弾力的な人事管理を推進していく上で、能力評価を活用した人材の育成・選抜等を行っていくことが重要となっている。
       
    2.  能力評価の方法
       
       国家公務員の能力評価の基本的な枠組みは、被評価者について、期待される能力や求められる行動特性をベースとして、評価時における実際の能力及び行動特性を把握し、評価期間中における能力等の伸長度を、その開発達成度として測るという形とすべきである。
 また、この期待される能力・行動特性は、例えば、能力基準書等の形で、各役職段階別、個別の評価項目別に定めることとし、能力評価は、これを基礎として行うべきである。
 さらに、特に能力養成期、能力拡充期にある職員等については、その自主的な能力開発を促進するため、あらかじめ、評価者と被評価者が面接等で相談の上、能力開発目標を定め、その達成度を評価する目標管理的手法を導入することも効果的であると考える。
 なお、制度所管官庁及び各省庁等における能力評価に関する検討に資するため、別途、能力評価の標準的な方法を例示しているので活用されたい(資料2 44ページ参照)。
       
    3.  能力評価の整備・運用上のポイント
       
       能力評価の評価対象は、業務遂行と関連する能力及び行動特性とし、業務遂行と関連しない性格等が評価の対象となることのないように運用しなければならない。
 また、評価項目については、効率的に評価を行うことができるような分量及び内容とすべきである。
 さらに、能力評価については、被評価者の育成に適切に活用することが重要である。特に、従来、弾力的な人事運用が進んでおらず、また、職域拡大が必ずしも十分ではなかったII・III種試験採用職員、女性職員等の職員については、仕事の機会や経験の不足から一部の分野の能力開発達成度が不十分であるという評価結果となり得る。このため、これらの職員については、その結果を適切な能力開発に反映するような配慮をすることが求められる。
 なお、組織・定員上の制約から、絶対評価によって上位の評価を受けた場合であっても昇進することができないという問題が生じ得ることから、管理職に昇進するにふさわしい能力を備えた人材については、その能力を表示することのできる資格(呼称)を、役職名等とは別個に付与することについても、職員に対するインセンティブ効果や実際の人事運用に与える影響、公務員制度改革全般の動向や現行の予算・組織・定員・級別定数制度等との関係を踏まえつつ、慎重に検討すべきである。
また、このような資格(呼称)を得た者の中から管理職に登用していくこととするのであれば、I種試験採用職員のスクリーニングやII・III種試験採用職員の登用促進にもつながるものと考える。
       
  (3)  業績評価・能力評価を補完するための仕組み
       
     直属の上司が職員の業務遂行の観察を通じて行う業績評価・能力評価では十分に把握することのできないような評価データを得るためには、これらの評価と併せて、外部の専門のアセッサーが演習等を通じて被評価者の態度や行動の評価を行うアセスメントや、被評価者の同僚、部下、関連部門の上司等が評価を行う多面評価を活用することが有効である。
       
    1.  アセスメント
       
       アセスメントの必要性
       
         個々の評価者である上司のみによる人事評価は、現職における実務能力等を評価するものであるため、一面的になるおそれがあり、職員の潜在能力や他の職務の適性等を専門的な見地から把握することは困難である。
 このため、職員の潜在能力や適性等を評価する方法として、評価者である上司による人事評価と併せて、民間の専門機関等を活用したアセスメントを活用することとすることも適当である。
       
       アセスメントの方法
         
         アセスメントは、通常の職場から離れた環境の下で、特定の場面を設定した上で評価する手法であり、具体的には、合宿研修等の形式で、個人課題、グループ討議、演習等における作業結果の評価と行動観察を行うことを通じて、専門のアセッサーが、様々な観点から被評価者の業務遂行能力や適性等を評価診断するという方法をとる。
         
       アセスメントの整備・運用上のポイント
         
         上述した評価手法としての特質を考慮すると、アセスメントの活用・運用に当たっては、以下の点に配慮する必要がある。
         (ア)  職員を管理職に登用する場合や、II・III種試験採用職員を幹部候補職員として登用する場合等職員の潜在能力や適性の把握が求められる際における人事評価の一環として、それまでの能力評価で十分把握しきれなかった幹部職員としての適性等を把握するとの観点から、必要性に応じて実施することが効果的である。
         (イ)  上司による能力評価では得られないような多面的な評価データを得ることが可能となる一方、限定された場面における評価であること及び上司による能力評価と比べると相当の費用を要することから、上司による能力評価を補完する手法として活用するとともに、その結果も、そのような特性に配慮して行う必要があり、例えば、職員の昇進等の節目における評価の一環として実施することが適当である。
         また、アセスメントの結果は、各省庁等の組織や業務の特性等に応じて、育成、配置、登用等に活用していくことが可能であるが、特に育成に活用することが効果的であることに留意すべきである。
 さらに、アセスメントの精度を高めるためには、実施に先立って、評価項目等について、アセスメントを実施する専門機関と各省庁等の間で十分に話し合うことが不可欠であり、さらに、その際、実施するアセスメントのうち、どの程度まで当該専門機関に委ねることとするかどうかについても検討することが必要である。
         
    2.  多面評価
         
       多面評価の必要性
         
         現行の勤務評定制度では、職員についての評価は、その直属の上司が行うこととされており、各省庁等は、制度上、多面評価を実施することとはされていない(ただし、一部の省庁では、人材育成等の観点から、一定の職員を対象として、独自に多面評価を実施している。)。
 しかし、近年、以下に挙げる二つの理由から多面評価の必要性が高まっている。
         (ア)  省庁間、部局間等において業務を連携して行うケースが増加しており、直属の上司のみによる評価では、被評価者の担当する業務全体についての能力、業績等の評価を行うことが困難となっているため、関連部門の上司等による多面評価を活用する必要性が高まっている。
         (イ)  新たな人事評価システムでは、その客観性、透明性及び納得性の向上が特に求められているため、業績評価及び能力評価を補完する評価として、同僚、部下等による多面評価を活用することも有用である。特に、近々管理職となる可能性のある職員については、管理職としての適性を評価し、その育成を図るとの観点から、直属の上司による評価以外に、同僚、部下等からの多面評価の結果を活用することが適当である。
         なお、多面評価を行う際には、以上のねらいのいずれを重視するかを明らかにし、それに合った方法を採ることが必要である。
         
       多面評価の方法
         
         多面評価の結果は、業績評価及び能力評価のための資料として用いることを原則とすべきであり、また、その円滑な導入を図るため、当面、被評価者の能力開発に活用することが適当である。
 また、管理職又は管理職に準じる者を被評価者とすることを基本とするとともに、被評価者の同僚や部下が評価者となることから、その評価能力に配慮して、理解しやすく、評価対象となる事実を客観的に把握できる評価項目に限定すべきである。
 さらに、多面評価の評価結果については、評価された者の能力開発に資するとの観点から、評価者の匿名性を確保した上で本人に伝達し、自己評価と他者評価の比較ができるようにすることが適当である。
 なお、制度所管官庁及び各省庁等における多面評価に関する検討に資するため、別途、多面評価の標準的な方法を例示しているので活用されたい(資料2 45ページ参照)。
         
       多面評価の整備・運用上のポイント
         
         多面評価は、公務部門においてこれまでほとんど行われていない手法であることから、その円滑な導入を図るとともに、恣意的な評価や人気投票的な評価となることを防止して評価の正確性を確保するためには、職員に対して趣旨・目的の周知徹底を十分に図るとともに、評価者となる部下を、被評価者となる上司と接触の多い直属の部下等に限定すること等の配慮が必要である。
         
  (4)  性格評価の抜本的見直し
         
    1.  現行の性格評価の抜本的見直しの必要性
         
       現行の勤務評定制度においては、その根本基準を定めた人事院規則10−2(勤務評定の根本基準)において、その具備すべき必要条件として「執務に関連して見られた職員の性格」を「公正に示すものでなければならない」ことが掲げられている。これを受けて、各省庁等においては、執務に関連して見られた性格として、「素直」、「わがまま」、「献身的」、「打算的」、「陰日向がない」、「表裏がある」等の十〜数十項目の中から、執務に関連して見られたものにチェックを付したり、「誠実さ」、「慎重さ」、「几帳面さ」等の十数項目について各々3〜6段階で評価を行う等の方法で、性格評価を実施している。
 しかし、執務に関連して見られた性格であっても、陽気さ、陰気さ、人柄等を評価の対象としたり、数十もの対立的な性格概念を並べてチェックを付すような性格評価では、ややもすると職務遂行とは関係のない職員個人の性格一般の評価となりかねず、また、評価結果の使用目的が不明確でもあることから、このような現行の性格評価について、抜本的な見直しを行うべきであると考える。
         
    2.  現行の性格評価の抜本的見直しの方法
         
       新たな人事評価システムにおいては、現行のような性格評価を廃止し、「執務に関連して見られた職員の性格」については、能力評価のための仕組みにおける行動特性の評価を通じてのみ把握することとすべきである。
         
4 新たな人事評価システムを有効に活用するための電子情報化・データベース化等
         
  (1)  電子情報化・データベース化等の必要性
         
     人事評価の対象となる職員数が多数にわたる、頻繁に人事異動が行われる等の場合、人事評価の結果を配置、育成等に活用していくことは、相当の労力を要することとなるため、人事評価の結果の電子情報化・データベース化等を行うことが必要である。
         
  (2)  電子情報化・データベース化等の方法及び整備・運用上のポイント
         
     人事評価の結果の電子情報化・データベース化等は、個々の職員の人事評価の結果を電子情報により蓄積し、その結果を、人事当局、評価者等が、その必要性の範囲内において、即時的かつ適切に活用することができるシステムとして構築されるべきである。
 ただし、その運用に当たっては、人事評価の結果という個人情報の電子情報化・データベース化等を行うものであることから、そのセキュリティの確保に万全を期すことが不可欠である。
 また、新たな評価結果が過去の評価結果に過度に影響されたものとならないよう、評価者が被評価者の過去の人事評価の結果を踏まえつつ人事評価を行うこととする場合でも、評価者が活用することのできる被評価者の過去の人事評価の結果を、一定の期間に限定することとすべきである。
 さらに、人事評価の結果の電子情報化・データベース化等を行う場合、個々の人事評価記録書の記入等についても、評価者、被評価者及び人事当局の負担軽減の観点から、セキュリティを確保した上で、電子メール等によって行うことを可能とすべきである。
         


 
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