II 人事評価システムの見直しの基本的視点
1 能力・業績の一層の重視による職員個人の業務遂行意欲の向上
         
   先進国へのキャッチアップということが我が国の行政の主要な命題であった時代においては、各省庁等における組織的な業務遂行を適切に進めていくための人材を育成・確保し、その能力の発揮を図っていくことが、人事管理の中心的課題であった。
  しかし、国民の価値観が多様化するとともに、我が国が国際社会のキープレイヤーとして新たな価値を発信することが求められている現在、行政がこれに的確に対応していくためには、これに従事する国家公務員の自主性を高め、個々の多様な能力を適切に発揮していくことのできる人事管理の実現が重要となっている。
  このため、国家公務員の人事管理においては、過度の画一性、均質性等を排し、個別国家公務員の能力、適性、志向、業績等を重視し、これを配置、処遇等の人事管理に適切に反映することによって、国家公務員の業務遂行意欲を高めていくことが不可欠なものとなっている。
  したがって、新たな人事評価システムは、能力、業績等を重視した人事管理の必要性が高まっていることを踏まえたシステムとして構想される必要がある。
         
2 国家公務員として求められる役割と人材像
         
   国家公務員については、公務に従事する者であるということ自体から、以下のような基本的責務と行動規範が生じる。このため、新たな人事評価システムについて検討を行う場合には、これらを前提とする必要がある。
         
  (1)  国家公務員の基本的責務
     
     国家公務員は、国民の負託を受けて公務に従事する「国民全体の奉仕者」であり、高い使命感と倫理観及び職務にふさわしい優れた能力をもって、国民全体のために職務に当たるべき基本的責務を有する。
  このため、新たな人事評価システムについては、「国民全体の奉仕者」としての能力、適性、業績等を有する人材を育成し、評価するシステムであることが求められることとなる。
         
  (2)  国家公務員に求められる行動規範
     
     国家公務員は、前述の基本的責務の下で公務に従事することから、以下のような行動規範が課せられることとなる。このため、新たな人事評価システムの仕組みや個々の評価項目・評価基準の検討に当たっては、これらの行動規範を反映するという視点が必要となる。
     国民の一部ではなく全体のために職務に当たるべきことを常に自覚し、公共の利益の増進を目指すという使命感の保持
     公権力の行使に携わる上で求められる国民の人権に対する配慮と公務の公正性・信頼性を支える廉潔性の確保
     職務遂行時における法令に基づく執行義務の完遂と適正手続の重視
     行政に対する国民のニーズと行政課題の動向に対応し、広い視野をもって中長期的観点から継続的に行う職務遂行
         
3 行政及び国家公務員をめぐる諸環境の変化
         
   新たな人事評価システムの検討を行う場合、先に述べたような国家公務員の基本的責務及び行動規範のほか、以下のような行政及び国家公務員をめぐる近年の環境の変化を、検討の前提として考慮に入れることが必要である。
         
  (1)  新しい行政体制への移行
         
     中央省庁の再編成に伴って大括り化される行政機関においては、その組織の規模や職員数が増大することとなることから、適材適所の人材配置、職員の意欲の向上等の面で、能力、適性、志向、業績等を把握した適切な人事管理が、これまで以上に求められることとなる。
         
  (2)  規制緩和、情報公開、地方分権等の推進に伴う行政の役割の変化
         
     規制緩和、情報公開、地方分権等の推進に伴う行政の役割の変化を受け、国家公務員には、従来の考え方、手法、行動様式等にとらわれない弾力的かつ柔軟な発想、行動基準、価値観、業務改善等が求められることとなる。
         
  (3)  行政組織間の水平的連関と行政組織内の分権化の進展
         
     今日、社会の複雑多様化により、複数の行政分野にまたがる行政課題が増加したため、省庁や部局を超えた総合的な政策展開の必要性が高まっており、コンピュータネットワークを活用した省庁連携タスクフォースのような試みも行われている。
 また、組織の簡素合理化の観点から、中央省庁等改革の一環として、府省の長の権限を地方支分部局の長に委任し、手続が地方支分部局において完結するようにするなど、組織内の分権化も進められている。
 このような行政組織間の水平的連関と行政組織内の分権化の進展により、国家公務員については、従来の働き方を弾力的に変えていくことが求められることとなる。
         
  (4)  行政及び国家公務員に対する国民の信頼の確保
         
     昨今の国家公務員の不祥事を厳しく受け止め、国家公務員の服務規律の確保に万全を期すとともに、職員の国家公務員としての自覚を高めることによって不祥事の根絶を図り、国家公務員に対する国民の信頼の再構築に努める必要がある。
 また、行政及びその運営に対する国民の要請が多様化するとともに、質を厳しく問うものとなってきていることから、このような要請に対して適切かつ的確に応えるような働き方のできる国家公務員の育成が求められる。
         
  (5)  男女共同参画の推進
         
     政策・方針決定過程への女性の参画は、民主主義の要請であるとともに、女性の能力の発揮の観点から重要な課題であることから、女性職員の登用等の一層の促進を図る必要がある。