【基本的考え方】
公務員については、組織的な職務遂行が求められること、収益等による明確な評価ができないこと等、民間企業と比べ、業務の性格上人事評価が困難な面があるが、能力・実績主義を徹底した人事を支えるため、各職員の能力・実績を的確に把握しうる客観性・公正性の高い人事評価システムを整備することが必要である。
現行の人事評価の中心である勤務評定制度については、現に就いている官職における短期的な勤務実績の評価の観点から設計されているものであり、昇進管理・人材配置に用いるべき中長期的視点をも踏まえた能力評価のためには、必ずしも十分なものとは言えない。
今後は、(1)執務の結果である短期的な勤務実績等の的確な評価、(2)職員がある役職段階や官職に昇任・異動するために必要な能力の基準を満たしているかどうかの中長期的観点を含めた的確な能力評価の双方を一層公正かつ客観的に行うことができるよう、人事評価制度を整備すべきである。
また、職員の能力を十分に発揮させ、その能力・実績を的確に評価できるよう、個々の職員の職務範囲を明確にするとともに、職員が創意工夫をもって仕事に取り組めるような職務編成としていくことも重要である。
同時に、能力評価の結果を昇進管理のみならず能力開発にも十分活用すべきである。
また、職員の職務に対する意欲を高めるためには、職員個人の自主性に配慮していくことが重要であり、職員の自主性、志向を取り入れる評価制度の構築という観点も重要である。
なお、具体的な改革方策を検討していくに当たっては、専門的な検討の場を設けることが必要である。
【具体的改革方策】
(人事評価システムの整備)
客観性・公正性の高い人事評価システムを整備するため、現行の勤務評定制度については、以下のような全般的な見直しについて専門的に検討すべきである。
○ | 職種の特性や個々の職員の職務・職責に応じた実績等評価を的確に行うことができるよう、各部局・役職等に応じた実績評定要素等の多様化を図る。 |
○ | 職員の執務に関連して見られる性格(パーソナリティ)に関する項目の在り方については、その必要性も含めて見直しを行う。 |
○ | 能力評価に用いるため、各役職段階等ごとに求められる能力基準を設定し、個々の職員がその基準に到達しているかどうかについて評価し、評価結果を研修、異動、昇進等に活用するような仕組みを設ける。 |
○ | 公正な能力評価の仕組みを整備するため、(1)職員の能力を集団の中の相対的な位置によって評価するのではなく、一定の基準に照らして価値付ける「絶対評価」、(2)所属するプロジェクトチームの長や職場における部下等の見方を参考とすることができる「多面的評価」、(3)単にミスをしなかった者が評価されるのではなく、実績を積極的に評価する「加点主義的評価」といった評価技法を導入する。 |
○ | 評価結果を単に昇進等に反映するのではなく、職員の能力向上のための資料として研修対象者の選定等に活用する。 |
(幹部職員登用時の特別評定等)
幹部職員への登用等の際、より厳格な昇進管理を行うため、特別評定を行って能力・実績・適性を厳格に評価することとし、その具体的な方法について専門的に検討すべきである。
また、幹部職員への登用等に当たっては、各省庁において行政改革の推進等政府全体の方針・課題についての実績を的確に評価して、反映すべきである。
(評価者訓練の実施)
人事評価を一層的確なものとするためには、人事評価を行う職員が高い当事者意識を有するとともに、その評価技術が一定の水準にあることが必要であることから、各省庁において、人事評価に当たっての心構えを徹底するとともに、勤務評定に当たって陥りやすいエラーを防止するための評価技術の向上等を図る観点から、管理者としての訓練の一環として、評価者訓練を実施すべきである。また、これに資するための各省庁に対する必要な情報提供の充実にも努めるべきである。
(評価体制の整備)
各省庁において、職員の過去の経歴、人事評価等の情報について、プライバシーの保護に留意しつつ、データベース化等により継続的に管理し、長期的視点に立った公正な人事評価の実施・活用を図るべきである。その際、単年度の評価が過去の評価結果に影響されないような配慮が必要である。
(自己評価制度等の整備)
個々の職員が自己の実績等について自ら評価を行い、それが面接等を通じて人事評価に反映されるような自己評価制度の整備について専門的に検討すべきである。
また、職務に応じて、上司との面接を通じて、職員個人の目標を設定し、実績及び達成度を通知して確認を行い勤務意欲の向上に結び付けるという目標管理的手法の導入についても専門的に検討すべきである。