3 能力・実績に応じた昇進・給与


【基本的考え方】

(能力・実績に応じた昇進・給与)
 行政課題の複雑高度化に対応するためには、能力・実績を有する者を適材適所で配置し、その職に見合った適正な給与上の処遇を行っていく必要がある。
 また、社会の少子・高齢化に対応した雇用期間の長期化を財政的な制約の下で実現していくに当たっても、公務員制度とその運用において、これまでのような年功を重視した処遇を続けることはできず、全体的な給与水準における官民均衡を維持しつつ、各職員の能力・実績に応じた処遇を推進していく必要がある。
 能力・実績主義を徹底することは、各職員の勤務に対する意欲を高めることを通じて、行政の活性化にも資するものである。

(厳格な昇進管理)
 現在、各省庁においては、採用年次に配慮した昇進管理が行われているが、今後は、行政課題の複雑高度化と組織のスリム化等に対応するため、年次横並び的な運用を見直し、成績主義の基本原則にのっとった、より厳格な昇進管理を推進すべきである。その際、中長期的な能力評価により、職員個人の能力・適性等の把握を適切に行うことが重要である。

(人事運用の弾力化)
 現在、各省庁における職員の昇進管理については、採用試験の種類別(I・II・III種など)や専門区分別(事務系、技術系)といった採用段階の区分に直結したグループ別に行われているのが一般的である。
 職員の意欲・能力・適性に応じた人事管理を進めていくためには、一定の人事グループを設定していくことは有益であるが、それが、採用試験区分等との関係で過度に固定化することのないよう、弾力的かつ開放的な運用を行っていくことが必要である。

(給与体系の見直し)
 特別昇給、勤勉手当等の勤務成績等に応じて支給される給与上の仕組みについては、その制度本来の趣旨に沿って、より能力・実績を反映した運用とすべく改善することが必要である。
 能力・実績の反映を給与面でより一層徹底するという観点からは、勤続年功的要素を縮小する方向での給与体系の見直しを引き続き進めることとする。

(職務・職責に応じた給与制度)
 行政課題の複雑高度化に対応するために国家公務員の職務・職責が多様化し、個々の職員に求められる資質も多様になっている中、職務・職責をより的確に反映する多様な給与制度の在り方を検討し、それぞれの職員の人事管理上の特性を踏まえた処遇を確保することが必要である。

【具体的改革方策】

(1) 昇進管理

(年次にとらわれない昇進管理)
 従来、I種試験採用職員を中心に一定期間採用年次に基づく昇進管理がなされているが、今後、昇進と採用年次との結び付きを緩和し、特に幹部職員等を中心に、年次の逆転を含めた能力・実績・適性に基づく厳格かつ的確な運用を進めるべきである。

(幹部職員の厳格な選抜)
 幹部候補に位置付けられた職員については、能力・実績・適性に基づく厳格な昇進を実施することとし、ある程度の段階までは必要な経験を積ませるために採用年次を考慮した昇進管理を行うとしても、特に本省庁課長等に登用する段階等においては、能力等により、客観的かつ多面的なスクリーニングを行うこととし、そのための評価の仕組みを検討すべきである。(「4 能力・実績に応じた昇進・給与を支える人事評価」参照)

(幹部候補の計画的選抜・育成)
 幹部候補に位置付けられる職員の確保は、採用試験の段階においてのみ行うのではなく、複数の段階において行うべきである。そのため、I種試験採用職員を幹部候補として計画的に育成するのみならず、II・III種試験等採用職員の中から、意欲と能力のある優秀な職員を昇進の節目等において弾力的に幹部候補として選抜・確保し、計画的に育成すべきである。
 そのための方策として、試験、研修等各省庁の実情に合った多様な選抜方法を整備するとともに、選抜状況について随時フォローアップを行いつつ推進すべきである。
 幹部職員には、幅広い視野、高い管理能力が必要であることから、幹部候補に対して、他省庁、地方公共団体、国際機関等における勤務や、研修、官民交流等を計画的に経験させるべきである。なお、比較的若年の間に地方支分部局における勤務経験を付与させることについては、国民生活の実態に触れる等のメリットが大きいものと考えられるが、これが特権意識の醸成につながることのないようその職務内容等に十分配慮することが必要である。

(技官のキャリア・パスの柔軟化)
 人事グループの細分化による弊害の指摘もある技官の人事管理については、試験区分の見直しを踏まえつつ、そのキャリアパスの柔軟化を検討するとともに、政策の企画立案機能を担う部門等における事務官と技官の別によるポストの固定化をできるだけ排し、適材適所の昇進等を推進すべきである。

(自己申告、部内公募等)
 各昇進段階において、意欲・能力・適性等に配慮し、任命権者が職員の人事グループを弾力的に変更することに資するため、適性や異動希望に関する自己申告・調査、部内公募等の仕組みを整備すべきである。

(2) 給与

(特別昇給・勤勉手当への能力・実績の一層の反映等)
 特別昇給・勤勉手当について、各省庁を通じて能力・実績に応じた運用の一層の推進を図るため、各省庁の運用を的確に把握した上で、各省庁の実態にも配慮して何らかの適切な目標を設定することを専門的に検討すべきである。  また、現行の仕組みでは十分に反映しえないほどの実績を挙げうる職務(例えば一部の研究職)について、適宜機動的に一定額を報奨として支給できる給付の創設等の職員のインセンティブ向上のための措置についても専門的に研究すべきである。

(勤続年功的要素の縮小方策)
 公務部門に優秀な人材を確保するという要請にも配慮しつつ、給与カーブの在り方について「早期立ち上がり型」となるよう、引き続き俸給表構造の修正を進め、採用後一定期間の給与上昇を経て、基本的に給与カーブを昇給停止年齢(原則55歳)に向けてなだらかにフラット化させる方向で、専門的に検討すべきである。
 普通昇給の在り方についても、同様の制度である今後の民間企業における定期昇給制度の動向をも踏まえ、専門的に検討すべきである。

(職務・職責に応じた給与制度)
 現在広範な職務を包含している行政職俸給表(一)適用職員のうち、採用方法が一般の職員とは異なるなど専門職種としての位置付けがある程度明確になっている職種について、現在福祉関係職員について検討されているような新たな俸給表の設定を含め人事管理上の特性を踏まえた処遇を確保すべきである。(「5 行政の専門性の向上と個人の適性・志向に配慮した多様なキャリア・パス」参照)
 幹部職員については、一般職員に比べ職務内容及び責任をより明確化することが可能であると考えられることから、職務給の原則を一層徹底し、勤続年功的要素をより縮小させるなど、一般職員との職務・職責の違いを一層適切に給与制度に反映すべきである。また、年俸制について、民間企業における運用状況や公務における職務の特性等を踏まえつつ、公務への導入について専門的に研究すべきである。


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