4 改革の検討に当たっての視点


 以上のような公務員制度改革の課題に取り組むに当たっては、以下の5つのキーワードに整理される視点に沿って公務員制度とその運用全般を見直していかなければならない。
 その際、公務員制度は、将来にわたる行政運営の基盤として極めて重要な意味を持つことから、行政改革等の諸改革との連携を図るとともに、厳格な規律と適切な処遇の両立等、全体として整合性を保つよう総合的に改革を推進していくことが必要である。また、公務員の人事管理には、年次横並び的昇進管理等運用面で慣行的に定着しているものも多いことから、公務員制度の改革に当たっては、運用面での改善も併せて推進していくことが必要である。
 なお、中央省庁等改革における行政組織のスリム化目標や、厳しい財政下での人件費の抑制の必要性についても常に留意する必要がある。

(1) 開放化
 急速に変化する複雑高度な行政課題への行政及び公務員の対応能力を向上させていくためには、従来のような行政部内での人材育成・能力開発のみでは不十分な面も出てきており、外部からの人材流入に対して閉鎖的な面のある現行システムの見直しが必要となっている。
 このため、行政部外から高い専門性を有する人材を導入するための任期付任用の活用等を含めた中途採用の拡大、広い視野を持った人材育成等のための官民交流の推進、退職パターンの多様化等を通じて公務の外部に対する開放性を高める必要がある。
 同時に行政内部においても、採用試験の種類や区分などの仕切りにとらわれない人事運用の弾力化を進め、II・III種試験採用職員の登用や男女共同参画の推進等を通じて内部における開放性も高めていく必要がある。

(2) 多様・柔軟化
 行政の機動性、簡素・効率性を確保していくためには、行政の組織・運営面での弾力化のほか、適時に適材適所の人材配置等を行うことが重要であるが、画一的・硬直的な面がある現行の公務員制度とその運用や各省庁の人事管理に対する過度の統制がそれを困難にしている面がある。
 複線型の人事管理等職務・職責に応じた多様な人事管理、人事行政事務の簡素化、人事管理上の規制緩和や権限委任等の促進を通じて、公務員制度とその運用を多様かつ柔軟なものとしていく必要がある。

(3) 透明化
 行政及び公務員に対する国民の不信感の背景には、行政自体の在り方に関する問題のみならず、公務員と民間とのかかわり方等の不透明性の問題もあると考えられる。
 国民の信頼の再構築を図るため、公務員制度とその運用についても、行政における情報公開等の流れを踏まえ、再就職の透明化、各種運用基準の明確化、公務員倫理法の制定等を通じて国民に対する透明性を高めていく必要がある。

(4) 能力・実績の重視
 複雑高度な行政課題に迅速・的確に対応しうる能力を確保していくためには、適材適所の人事を一層進めるとともに、個々の職員の業務遂行意欲を高めていくことが重要であるが、これまでの年功的な要素を重視する任用や処遇では、この要請に十分こたえられなくなってきている。
 また、社会の少子・高齢化への対応等の観点からは、今後、65歳までの雇用に積極的に取り組むなど雇用期間の長期化を図っていくことが必要であるが、これを職員の勤務意欲と組織活力を維持向上させつつ、財政的な制約がある中で実現していくためには、任用面や給与面での年功的な仕組みを抜本的に見直さなければならない。
 年次等にとらわれない、能力・実績による厳格かつ弾力的な昇進管理(幹部・登用におけるI種試験採用職員の厳格な選抜とII・III種試験採用職員の登用等)、給与体系の見直し、評価システムの見直し、専門職制度の確立等を通じて公務員制度とその運用をより能力・実績を重視したものとしていく必要がある。

(5) 自主性の重視 
 行政が、複雑高度な行政課題に的確に対応していくためには、個々の職員が働きがいを持って、自ら意欲的にその能力を高め、職務に当たることが重要である。
 我が国の公務員の人事管理は、組織的な業務遂行を前提として行われており、その人材育成・能力開発等においては、効率性の観点から人材の均質性が過度に重視される傾向があり、個々の職員の志向や適性に十分配慮したものとなっていない面があると考えられる。
 行政課題の複雑高度化に対応した能力の向上を図り、また、職務へのモラールを向上させるため、複線化されたキャリア・パス、自己申告、自己啓発の支援策等を通じて、公務員の人材育成・能力開発等において個々の職員の自主性をより重視したものとしていく必要がある。
 公務員制度における個々の職員の自主性の重視は、雇用環境の変化に対応し、就労者の職業意識の変化等に適合的なものにしていくという観点からも重要である。


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