3 公務員制度改革の課題


 以上のような改革の必要性を踏まえれば、今後、公務員制度とその運用についての改革を進めていくに当たって取り組むべき課題については、以下のように整理できる。

(1) 行政課題の複雑高度化に対応した能力向上 
 国際化を始めとする内外環境の変化の中で、行政が取り組むべき課題が急速に複雑高度化していることに対応して、行政の政策企画立案能力の一層の向上を図っていくことが不可欠である。その際、政治との関係においては、今後とも行政は、政策の執行からもたらされる社会経済の実態等についての知見をも踏まえた専門的かつ総合的な企画立案能力によって、政治による政策決定を適切に支えていくことが期待される。
 また、現在進められている規制緩和と市場の自律性を重視した事後監視型の行政システムへの転換は、技術革新等の急速な進展に対応できる高度な専門的監視能力の充実を必要とすることとなる。
 公務部門の能力向上を達成するためには、進取の気性・高い能力を有する人材を公務部門に確保しうる仕組みを整備するとともに、効果的かつ計画的な人材育成・能力開発、能力・実績に基づく適切な昇進管理・処遇を進めていくことが必要である。

(2) 簡素・効率的で機動的な行政の実現と総合性の確保
 今日、行政システム全般の見直しの中で、時々刻々変化する内外環境に対応しうる行政の機動性を重視するとともに、簡素性、効率性を追求する取組みが行われている。
 行政運営を支える公務員制度とその運用についても、このような行政の実現に資するため、その時々の課題に即応しうる機動的・弾力的なものとしていくことが求められている。同時に、複雑高度化した行政の進展の下、行政の総合性の確保が一層重要となっており、行政を支える公務員についても、人事管理面における対応が必要となっている。

(3) 国民の信頼の再構築
 行政及び公務員がその役割を十全に果たしていくためには、その前提として、国民の信頼が成立していることが不可欠であるが、今日、公務員と民間のかかわり方の不透明性や一部における不祥事の続発により、その信頼が損なわれているのは極めて憂慮すべき事態である。
 現在、行政システムの面においては、事後監視型システムへの転換等により官と民の関係も、極力裁量性を排し、透明性の高いものとしていく取組みが行われており、また、情報公開への取組みも進められている。
 このような官と民の関係の明確化は、公務員に対する信頼の再構築にも有益であるが、公務員制度とその運用についても、国民に対する透明性を高めるとともに、公務員の意識改革を進め、高い倫理意識を持った清廉な公務員を育成して、行政及び公務員に対する国民の信頼を再構築することが不可欠である。

(4) 雇用環境の変化に対応した雇用システムの実現
 (1)から(3)の課題に対応するためには、公務員制度とその運用が、今後とも公務部門に有為な人材を誘引し、公務員が使命感と働きがいをもって職務に当たることができるようなものでなければならない。このため、公務員制度とその運用について、公務の特性を踏まえつつ、我が国全体の雇用市場、雇用システムや就労者の意識の変化に適切に対応したものとしていくことが必要である。
 また、業務の効率的遂行という観点からは、民間企業における機動的、弾力的運営等を参考とすべき点も多いと考えられる。
 さらに、少子・高齢化社会への対応や男女共同参画社会の実現等我が国全体の雇用システムが対応すべき重要な課題については、公務部門が先導的役割を果たすことも検討していくべきである。


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